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「ボールパーク構想」の最先端を行く米サンディエゴ「ペトコパーク」


広尾晃のBaseball Diversity
「ボールパーク構想」という言葉をご存じだろうか?従来、野球の興行は当然のことながら「野球の試合を観る観客」によって成り立ってきた。しかし社会の変化とともに、それだけではビジネスが厳しくなってきているのだ。

人気に陰りがあるMLB

アメリカでは野球は「オールドボールゲーム」と言われる。1871年にはじまったメジャーリーグは長く「ナショナルパスタイム」として国民に親しまれてきたが、半世紀ほど前からNFL(アメリカンフットボール)、NBA(バスケットボール)、NHL(アイスホッケー)などのプロリーグが人気を集めるようになり、野球人気は陰りを見せている。
いろんな原因があるが、よく言われるのは「野球は試合時間が長い」「ルールが複雑」ということだ。とりわけ若い世代は、野球を敬遠して他のスポーツにはまりがちだ。

ボールパーク構想

そこでMLBは「試合時間の短縮」に乗り出した。またMLB球団は「野球に集中するお客」以外も取り込むことを目指して「ボールパーク構想」を打ち出すようになった。 「ボールパーク構想」とは、野球観戦するお客だけでなく、「野球場で楽しい時間を家族や仲間と過ごす」ことを目的とするお客も取り込むために、野球のスタジアムを「野球場を中心としたテーマパーク」へと変貌させることだ。
日本でも日本ハムの「エスコンフィールドHOKKAIDO」や西武の「ベルーナドーム」などがそういう構造になっているが、MLBでは、もっと本格的な「ボールパーク構想」が実現している。

エスコンフィールドHOKKAIDO

パドレスの本拠地「ペトコパーク」

カリフォルニア州サンディエゴにある、サンディエゴ・パドレスの本拠地「ペトコパーク」は、その代表的なスタジアムだ。
パドレスは1969年、エキスパンション(球団拡張)で生まれた球団だ。それまでアメリカンフットボールのチームと兼用の球場を使用してきたが、2004年に専用球場が完成した。
この球場はサンディエゴ市の港湾地区に近い繁華街にある。

食事とおしゃべりを楽しむ人たち

パーク・アット・ザ・パーク

球場のゲートをくぐると、最初に目に飛び込んでくるのが、スタジアムとは反対側にある広大な芝生の広場だ。
パーク・アット・ザ・パークというエリアだ。観客は、試合前にはこのパークを散策し、ゆったりした気分に浸ることができる。このエリアには、パドレスの大選手、トニー・グウィンの功績をたたえたゾーンがある。

ミスター・パドレス、トニー・グウィンの銅像

また、ホットドッグ、ビールなどを販売する店舗もある。
それだけではなく、エリアの奥には小さな「野球場」もある。
ここでは、子供たちが、野球遊びをしている。

ミニ球場

こうしたミニ野球場は、エスコンフィールドHOKKAIDOの外周にもあるが、ここではスタッフが子供たちの年齢に合わせて、ティーバッティングをさせたり、ボールを打たせたり、様々な遊びをさせてくれる。
大変人気がある施設で、入り口前には家族連れの行列もできていた。

スタッフが子供の相手をする

またボールやバット、グローブなどをモチーフとした遊戯施設があるプレイロットもあった。

プレイロット

このエリアのバックスクリーンの右側は「ビーチエリア」と称し、砂場が設けられている。港湾都市サンディエゴらしいが、子供たちはここで「砂遊び」をしていた。

ビーチエリア

子供たちも顧客

日本の球場でも休日になると子供連れが多くやってくるが、まだ小さな子供は野球のルールを理解できず、試合が始まると退屈して騒いで親を困らせることもある。
ペトコパークでは、こうした小さな子供もしっかり「顧客」と認識し、子供たちが喜ぶような施設を作っているのだ。
それだけでなく「野球」にかかわりのある遊びを様々に用意することで、子供たちを「野球好き」にし「次のファン」へと育てていこうとしている。
「オールドボールゲーム」野球にとって、非常に重要な取り組みだといえる。

一つの「街」

サッカーを見ながら食事

パーク・アット・ザ・パークの正面には、スタジアムと背中合わせに大きなステージが設けられている。このステージでは試合前にParty in the Park(Fiesta in the Park)と題してミュージシャンのライブや様々なショーが行われている。
観客たちは芝生に座って、こうしたイベントを楽しむことができるのだ。

スタジアムと背中合わせのステージ

試合を観ない人たち

球場の入場時間になって、多くのファンがスタジアムへと移動したが、中には球場に入らず、このエリアにとどまる人もたくさんいる。
家族と一緒に野球場に来たが、野球にはそれほど関心がない人、子供を遊ばせることをメインに考える人、などなど。
そういう人のために、試合が始まるとステージのスクリーンには「試合中継」が映される。
目の前で行われている試合を観るのではなく、それをスクリーンで見る。不思議な感じもするが、そういう観戦スタイルが、定着しているのだ。
日が暮れて、照明が煌煌と球場を照らすようになっても、パーク・アット・ザ・パークには多くの人々がいて、思い思いに楽しんでいた。
もちろん球場の中は大声援が起こり、大いに盛り上がっていたのだが、そういう盛り上がりとは別の「楽しさ」のために球場にやってくる人もたくさんいるのだ。

試合が始まっても球場に入らない人たちがたくさんいる

MLB2位の観客動員

2025年のペトコパークの観客動員は、343万7201人、1試合当たり4万2435人。キャパシティは4万2445人だから、ほぼ満員だ。観客動員は、ロサンゼルス・ドジャースの401万2470人、1試合当たり4万9537人についてMLB30球団で第2位だ。

パドレスはマニー・マチャド、タティスJrなどのスター選手もいる。日本人選手も救援投手の松井裕樹、今季は全休だがダルビッシュ有も所属している。
しかし同じナショナル・リーグ西地区のロサンゼルス・ドジャースに比べれば劣勢で、地区優勝は2006年以来遠ざかっているし、ワールドチャンピオンになったこともない。
それでも連日ほぼ満員という大人気なのは、この球場が「野球のガチのファン」だけでなく「子供と半日楽しく過ごしたい」家族連れや、「いい雰囲気の中で仲間とお酒を飲みたい」グループ、さらには「野球も食事も楽しみたい」ライトな野球ファンなど、様々なニーズの人たちに対してフレンドリーだからだろう。

「ボールパーク構想」とはまさに、こうした多様なファンを引き付ける魅力的な施設づくりだということができる。

日本より一歩先を行く

日本でも前述したエスコンフィールドHOKKAIDO、ベルーナドーム、さらには広島カープのマツダスタジアムなどが「ボールパーク構想」を意識した球場づくりをしているが、スケール感と旺盛なサービス精神では、まだまだMLBのほうが一歩先を行っている印象だ。

「野球離れ」が止まらない中、日本のスタジアムも、これから大きく変わっていかざるを得ないだろう。



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