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野球をトータルコーディネートするBEAST LAB 「人の輪を活用して野球を楽しくしたい」

“BEAST LAB”の交流展示会に、野球に関わる多くの人々が集結した。

出展は野球ギアだけでなく、グラブの革職人やアーティスト(=芸術家)まで幅広い。主催者・濱谷裕平氏が映像業界で培った感性をもとに、「野球が楽しくなって欲しい」という思いから選び抜いたものばかりだった。

“BEAST LAB”が目指すのは、野球に関するトータルコーディネートだ。

~オン、オフの両ラインを有効活用する

「展示会というと、商品を見て商談に繋げる場所のイメージがあります。“BEAST LAB”は一味違うものにしたい。商品・サービスを見るのはもちろん、人が繋がる場所を目指します」

野球は国内スポーツで最大シェアを誇る競技。ギアメーカーをはじめ、携わる業者や人は想像以上に多い。「人が繋がれば、もっと面白いものが生まれると思う」と続ける。

「“BEAST LAB”に出展するのは、小規模でやっている業者さんばかり。各々で頑張っても、大手メーカーさんに太刀打ちするのは難しい。みんなが繋がって面白いものを作り出していけば、注目も浴びると思います」

「“BEAST LAB”から派生した輪が、どんどん広がって欲しい。出展者の方々は、それぞれがオリジナリティを持っています。その良いところを掛け合わせれば、さらに強力なものになる。小回りも効くので、多くのトライができるはずです」

野球グラブ作家・渡邉純也氏が製作する作品には、思いや主張が込められている。

展示会形式で開催したのは、「出展者や来店者が、面と向かって交流できる場所を作りたいから」と付け加える。

「多くのことでオンラインが主流の時代になっています。便利ですし、私も可能な限り活用しています。その中で敢えてオフラインで会話をして、交流する場所にしたかった。オン、オフ両ラインの良いところ取りをしたいです」

「スポーツは選手がオフラインでプレーするもの。そこに関わる人同士が良好な関係性を築くためにも、オフラインは必要不可欠。“BEAST LAB”が今後も大切にしたい、最も大事な部分です」

革のスペシャリスト・上田秀明氏は、グラブ用革について細部まで知り尽くしている。

~“楽しい野球環境”を作り出したい

濱谷氏の本職は映像ディレクター。地元・北海道で大学まで過ごし、卒業後に上京して映像制作の仕事に没頭した。スポーツのみに留まらない幅広いジャンルでの経験が、“BEAST LAB”を立ち上げるきっかけとなった。

「上京後の約1年は制作会社に勤務、そこからフリーランスで動いています。スポーツはもちろん、バラエティ、映画、ミュージックビデオまで、多くのジャンルに携わっている。各ジャンルで個性が違うので、本当に素晴らしい経験をさせていただいています」

現在は、お笑い芸人のYouTubeチャンネルやゲームアプリの販促動画制作にも関わっている。

「個人的には、立ち上げ段階から関わらせていただきたい。企画が動き始めている中に入るのではなく、『ゼロからイチ』にも参加したい。ディレクターという肩書きながら、プロデューサー的な仕事を大事にしています」

学生時代にトミー・ジョン手術の経験がある伊藤大征氏は、野球コンディショニングの専門家だ。

多ジャンルに関わる中でも、スポーツへの思いは強かった。自身は中学まで野球・シニアリーグでプレーして、北海道3位になった。高校ではバレーボールに打ち込んだ経験もあったからだ。

「『スポーツを仕事にしたい』という思いは、ずっと持っていました。縁があって、スポーツドキュメンタリー番組の仕事に関わりましたが、あまり良い思い出ではありません。選手と取材者の関係性を目の当たりにして、シンドクなりました」

スポーツ映像に関わったことで感じたことがあった。番組の先には視聴者がいる。「多くの人が期待する言葉や行動を導き出すような取材方法が多く、疑問を持った」と振り返る。

「制作側が求める言動を引き出すように追い込む。選手の気持ちを深く考慮することなく、取材を行うことが日常茶飯事でした。自分自身も同様な取材をやっていましたが、『これで良いのかな?』と思うようになりました」

“スポーツの楽しさ”を伝えたかったが、現場は少し違うものだった。その後、お笑い芸人の仕事に就いたことで、“楽しさ”を今まで以上に追求するようになった。

「お笑い芸人さんが日々を楽しむ姿勢は周囲に伝染する。演者自身もそうだし、制作を含めた現場が楽しさに溢れている。そういった空気感が映像を通じ、視聴者にも伝わると思います」

「どんなジャンルでも、選手や現場の楽しさを伝えることは可能だと思います。自分が大好きな野球においても、楽しめる環境をプロデュースしたい。“BEAST LAB”のビジョンは、そういう部分から出来上がりました」

大内真輔氏(写真左)は、目に見えない微細エネルギーに着目したエネルギーデバイスを開発。

~野球選手のトータルコーディネーターでありたい

“BEAST LAB”を展示会で完結させよう、とは考えていない。演出家として、選手の“トータルコーディネーター”であり、スポーツの“空間デザイナー”であることを目指す。

「展示会開催だけでなく、その後のプレー環境に至るまで演出したい。グラブ、バット等のギアだけでなく、シューズやアパレル、そしてグラウンド外のアート等を扱うのはそのためです。野球やスポーツに関するもの全てが対象です」

「野球に特化しているのでギアが多くなりますが、グラウンド内外の全てが対象だと考えています。野球やスポーツにおける楽しいことを伝えたい。だから、カラーリングも自由にド派手でカッコ良いものを扱いたいです」

「心がときめくものを数多く紹介、皆さんに自由に選んでもらいたい」と笑う。大手メーカー展示会では見られない、ビビッドな色のギアが目に付くのもそのためだ。

濱谷優希氏は、プロテインやユニホーム専門洗剤を持って北海道から駆けつけた。

濱谷氏自身が開発した『ストレッチ棒』も展示された。分解しバットケースに入れることで、どこにでも持ち運びできるのが“ウリ”だ。

「野球少年達に、さまざまなスポーツ障害が増えています。『映像制作する自分達にも原因がある』と思ったのが製作のきっかけです。技術、トレーニング等の動画が溢れていて、知識がなくても簡単に真似できる。間違った取り組みをすることが、故障や怪我に繋がっていると考えました」

「正しい方法や知識は専門家がたくさんいます。我々はその前の入り口部分、『ストレッチをしっかりやる』ことを伝えようと考えました。『準備をすることで少しでも故障・障害を防げるのなら…』ということです」

「野球選手だけでなく、どの競技の方々にも使ってもらいたい」とも付け加える。

“BEAST LAB”主催者・濱谷裕平氏は、野球界が楽しい場所になるために奮闘を続ける(手にするのは自身開発のストレッチ棒)

2日間に渡って行われた展示会には、200人近くが訪れた。元プロ野球選手や大手メーカー関係者もおり、注目度の高さを感じさせた。

「半年に1回で構わないので、継続することが大事。『野球は楽しい』ことを、多方面から提案できればと思っています」

野球人気、競技人口の低下が叫ばれる中、地道に行動を続ける人達がいる。彼らを突き動かしているものは、純粋な“野球への愛”だ。“BEAST LAB”の取り組みが、広く認知されて欲しいと感じさせた。

(取材/文:山岡則夫、取材協力/写真:BEAST LAB)

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