「誰も置いていかないチーム」で、1部復帰を―京都大学女子ラクロス部―
大学スポーツの多くは、参加する学校の多さや地理的条件などから、2部制(あるいは3部制)に分かれてリーグを作り、年間の試合を行っていることが多い。そうした場合、シーズン終盤に上位リーグと下位リーグの入れ替え戦が行われる。降格を阻止したいチームと昇格したいチームの思いが、真正面からぶつかる入れ替え戦は、往々にしてそのシーズンで最もハードな試合になることも少なくない。
京都大学女子ラクロス部は過去3シーズン1部リーグで戦っていたが、今年は2部リーグでシーズンを迎えることになった。そんな同部の今年の目標は、「圧倒的な強さで2部リーグと入れ替え戦を勝ち上がること」である。
1部復帰への思いと女子ラクロス部の未来について、片桐花菜(かたぎりはな・4回生) 主将と宮本真鈴(みやもとまりん・3回生) さんの2人に話を聞いた。

京大体育会女子部で一番の大所帯
今年の新歓で、何人の新入生が入部しましたか。
宮本真鈴さん(以下、敬称略)「今年は21人の新入生が入部しました。新歓で私たちと話すまで、ラクロスという競技を知らなかった人ばかりです。2/3は高校でもなんらかの体育会の部活に入っていた人で、残りの1/3が高校では文化系部活だったり帰宅部だった人です。」
新入部員が21人とは、かなり多いと思うのですが。
宮本「実は、今年の2回生と3回生にあたる世代の部員の数が少ないんです。だから今年の新入生に大勢入部してもらわないと、4回生が引退した後に大変なことになるという危機感が部員みんなにありました。だから新入生に積極的に話しかけに行って、ラクロス部を知ってもらうことにエネルギーを注ぎました。」
そうなると、今年の学年別の人数構成はどのような感じなのでしょうか。
片桐花菜主将(以下、敬称略)「1回生が21人、2回生が10人、3回生が7人、4回生が11人の合計49人です。女子ラクロス部は京都大学体育会女子部活の中で、最も大所帯の部活なんです。」
ちなみに、お二人はどのような理由でラクロス部に入部されたのですか。
片桐「高校時代はバレーボールをしていました。新歓でラクロスというスポーツを知り、またその時にお話をしてくださったラクロス部の先輩方の人の良さと、本気で目標に向かって練習しているかっこよさに惹かれて、この部で4年間活動しよう、と決めました。」
宮本「受験時期に自分のモチベーションを保つために、京都大学にある部活やサークルのサイトやSNS等を見ていたんです。そうしたら、ラクロス部というものがあること、そしてこのスポーツは大学入学からプレーする人がほとんどということを知りました。入学後に女子ラクロス部の新歓に行くと、オンピッチでは一部校として全員が真剣に部活に取り組んでいる一方で、オフピッチでは学年関係なく部員みんな仲がいい雰囲気に惹かれて入部しました。」
夏休みが近いので、これから部で合宿などすると思います。今年の夏の合宿の目標は何ですか。
片桐「リーグ戦、そして一部奪還をかけた入れ替え戦に向けて戦術・組織の両面でチームの完成度を高めることが目標です。
具体的には、基礎技術の精度を高めることはもちろん、長い時間をともに過ごせる合宿だからこそ、普段の練習だけでは十分にできないコミュニケーションや認識のすり合わせも行い、組織としての一体感をさらに強めたいと思います。
これからの試合で、部員全員がどんな時でも同じ方向を見て、闘える状況を作るためというのも、もちろんあります。
今年1部チームとの入れ替え戦で圧倒的に勝利して1部に昇格し、その後ずっと1部で戦うことができる強さを身に着けるためには、この夏にしっかり鍛えていくことが重要だと考えています。」
2部の戦い方と1部での戦い方に、違いはありますか。あるとしたら、一番大きな違いは何でしょうか。
片桐「私たちとしては、大きな戦い方の変化というのはないだろうと思います。ただ、去年までと比べて今年の方が、1対1で相手と勝負することが多くなると思うので、それに対応した練習をしていますし、力もついてきたと思います。
でも、今年は2部で勝ち上がるためというより、1部の強豪校と肩を並べるくらいの実力をつけたいと思っているので、組織で守り組織で攻める意識を常に持っていたいと考えています。そして、シーズン最後の1部・2部入れ替え戦で圧勝したいですね。」
宮本「1対1の強化はやはり意識しています。ディフェンスでも受けのディフェンスではなく、攻めのディフェンスをするなど、どんな状況でも攻めの姿勢のプレーをしなくてはいけないので、そのことは強く意識しています。
実は昨年末の1部・2部入れ替え戦に出場したとき、第1クオーターから第3クオーターまでは私たちが勝っていたのですが、最後の第4クオーターで流れが変わり相手が同点に追いついて、そしてサドンデス(延長戦)で逆転されて負けてしまったんです。その結果、今年は2部で戦っているので、1部でずっと戦うためには、常に攻め続ける意識が重要だと痛感しました。」

キャプテンの覚悟と未来への思い
ストレートな質問になってしまいます。現状の2部から1部に上がるために、今の京都大学女子ラクロス部に必要なことは何だと思いますか。
宮本「自分たちが、常に1部で戦っているつもりの意識を持つことだと思います。2部で活動するようになると、練習試合も2部の学校が相手になることが多くなります。そのため、練習も2部で勝つための練習になったり、1部の時と比べると練習強度自体が下がる傾向があるんです。
でも、そのままでは2部で勝ったとしても、1部で戦うことはできないので、自分たちは1部で戦うんだ、1部で戦うために毎日練習しているんだという強い意識は必要だと思います。」
片桐「やはり自分たちの基準を1部のレベルに保つことが必要だろうと、私も思います。勝利を追求できる環境を作ることと言っても良いでしょうか。
実は昨年の京大女子ラクロス部は、一言で表現すると「やさしい」チームで、自分以外のプレーヤーにあまり干渉せず、一人一人が求める答えを出すようなチームだったんです。
ただ、同時に間違ったことや改善した方が良いことがあっても、それを指摘する人がチーム内にはいませんでした。だから当時はチーム内のコミュニケーションの問題はほとんどないように見えましたが、それはチームとして良い方向に向かっていたわけではなかったのだろうと、今は考えています。
だから、1部で勝つために、お互いに必要なことは言って、聴くことができるチームになることが、勝利を追求できる環境を作るというではないでしょうか。
キャプテンとして、基礎技術を一人一人が向上させて、チームのために必要なコミュニケーションを十分とることで、誰も置いていかないチームを作って1部に復帰したいと、考えています。」

片桐さんに質問です。今シーズンは、ラクロス部にとってとても重要かつ厳しいシーズンになるであろうことは、片桐さんも昨シーズンの終了時点ですでに気が付かれていたかと思います。それでも、あえて今シーズンのキャプテン就任を決断した原動力とは、何ですか。
片桐「自分が今までお世話になった女子ラクロス部のOGやコーチの皆さん、そして支えてくださった方に、恩返しをしたいと思いました。また、後輩たちに1部で戦える環境を整えて大学生活を終わりたいと考えました。」
宮本さん、そんな片桐キャプテンの背中を見ていて、どんな思いを持っていますか。
宮本「大学でラクロスを始めてからずっと1部で戦ってきたのに、最後の大学生活で2部で戦うことになってしまって、とても苦しい思いをしていることは、私も感じています。その一方で、私たち後輩のために、1部で戦えるチームと環境を整えようと日々努力していただいているので、とても感謝しています。」
お二人に最後の質問です。京都大学女子ラクロス部に入って、良かったことは何ですか。また、体育会の部活に入って、良かったことは何ですか。
宮本「自己成長できたことです。実は私はケガをしていた時期が長くて、他の人と比べると、プレーできた期間が短いんです。それでも、リハビリをしてプレーすることができるように努力していますし、それを支えてくれる仲間がいるのは、体育会系の部活に入ってよかったな、と思います。」
片桐「仲間に出会えたことでしょうか。ラクロス部は教えに来てくださるコーチも多く、中には東京からコーチに来てくださる方もいます。アドバイスくださる方も多いですし、京大の大学院に行っているラクロス部OGは、頻繁に練習を見てくださります。そうした方々のおかげで、4年間ラクロスに熱中できる環境があるのは幸せなことだと思います
ラクロス部は週5で練習のある本格的な体育会系なので、本気で目標達成に向けて努力する熱い人が集まるため、学年の垣根を越えて部員同士が仲が良いです。将来の後輩たちにも、私たちと同じような経験ができる環境を作ってあげたいと思います。」

1部で戦うという意識とそのための環境の重要さを熟知しているキャプテンの片桐さん、そして、今はケガから回復中で同じ状況の後輩とリハビリの日々を送っているという宮本さん。2人の絶対に1部で戦いたいという強い思いがよくわかるインタビューとなった。
多くの先輩たちからの声援に応え、後輩たちが活躍できる舞台を残すため、京都大学女子ラクロス部は勝負の秋シーズンを迎える。
(写真提供 京都大学女子ラクロス部)
(インタビュー・文 對馬由佳理)
