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プロ入り狙う東北の大学生捕手 “熱”を伝える仙台大新主将・井尻琉斗が臨む勝負の1年

昨年の大学日本代表に選ばれた渡部海(青山学院大)、前嶋藍(亜細亜大)ら大学生捕手が今秋ドラフト候補に挙がる中、東北にもプロ入りを狙う捕手がいる。仙台大の井尻琉斗(3年=北海)だ。巧みなリードと強肩が持ち味で、パンチ力を秘めた打撃も併せ持つ。ラストイヤーは主将としてチームを引っ張りつつ、井尻にしか出せない魅力をアピールする。

北海高3年時からNPBを意識、夢叶えるべく仙台大へ

札幌市出身の井尻は、小学3年生の頃に野球を始めて以来、捕手一筋。地元の強豪・北海高では2年夏の甲子園でベンチ入りし、最上級生になってからは主将を務めた。

仙台大の主将に就任した井尻

NPBを強く意識するようになったのは高校3年生の頃。1学年上の木村大成(現・福岡ソフトバンクホークス)と大津綾也(元・読売ジャイアンツ)がドラフトで指名を受け、より身近な目標になった。

高校卒業後は大学経由でのプロ入りを目指し仙台大へ。2年春から正捕手の座を奪うと、昨年も熾烈なレギュラー争いを制してほとんどの試合でスタメンマスクをかぶった。

打撃向上のきっかけは広島ドラ1・平川蓮の助言

昨年は課題の打撃力が向上した。2年時は春.200(20打数4安打)、秋.103(29打数3安打)だった打率が、3年時は春.300(30打数9安打)、秋.265(34打数9安打)と上昇。秋の最終戦ではリーグ戦初本塁打もマークした。

「大学2年の頃までは色々なアドバイスをもらって色々なことを試していたので、『自分』がなかった。『自分がどういうバッターか』を考えながらタイミングの取り方や腹圧のかけ方を見直した時に、安定して打てるようになってきました」

打撃を模索する中、昨秋のドラフトで広島東洋カープから1位指名を受けた平川蓮(4年=札幌国際情報)の「練習の時に100の力で振っても試合では80しか出ない」という言葉が胸に残った。「下位打線でもパンチがあれば相手を嫌がらせられるかもしれない」。試合でパワーを発揮するため「練習から100〜120で強く振ろう」と心がけた結果、徐々に長打が増えていった。

大学3年目の昨年は打撃の進化を見せた

打撃面で手応えを得た一方、チームは春2位、秋3位と2季連続でリーグ優勝を逃したとあって、捕手としては悔いも残った。井尻は「2年生の頃はもともとの感性のままリードしてうまくいって、でもそれでは全国で勝てなかったので試行錯誤するようになった。経験を積むうちに『こういうこともできる』という選択肢が増えて、その分、選択が難しくなる部分もありました」と振り返る。

以前から一か八かの配球はしない、「最善を尽くす」リードをモットーとしてきた。その根本は変わらないものの、昨年は経験の豊富さゆえに迷いが生じる場面があった。ただ、「一周回ってまとまってきました」と答えが見つかりつつあるのも確か。今年は大学4年間の集大成を披露するつもりだ。

森本吉謙監督の指名で主将就任、“カラー”を模索中

新チームでは森本吉謙監督から指名を受けて主将に就任した。井尻は「自分は練習から手を抜かず、誰よりもがむしゃらに野球に取り組む自負がある。口はうまくないけど、『熱』を伝えるのは得意です。自分の『熱』についてきてもらえるよう、周りを巻き込んで引き上げたいと思っています」と意気込みを語る。

仙台大は昨春、5人が日替わりで主将を務める新たな試みを取り入れた。井尻はそのうちの一人だった。高校3年時と昨春は「やるべきことをやろうと言い続けていたけど、言いっ放しになってしまってチームがまとまらなかった」と反省。今年は「この人がなぜ言っているのかを理解させなければならない」と肝に銘じる。

昨秋のリーグ最終戦では本塁打を放った

そのためには言葉に説得力を持たせる必要がある。「プレーと結果で引っ張る」辻本倫太郎(現・中日ドラゴンズ)、「たまに発する一言で空気が締まる」小田倉啓介(現・日本製紙石巻)、「周りが見えて細かいことに気づける」平川。大学で出会った3人の主将はそれぞれタイプこそ違えど、いずれも説得力があった。

「3人の良いところを吸収しつつ、自分なりのカラーを出したい」と井尻。「『熱』を伝える」ことのできる強みを生かし、チームメイトからの信頼を手に入れる。

いざドラフトイヤーへ、磨きたい「守備の精度」

チームをまとめながらプロを目指すのは簡単なことではないが、井尻は「自分ではなくチームのためにやり続けていたら必然的に結果はついてくる。結果が出れば自分も注目されるはず」とベクトルをチームに向ける。

その上で、「昨年はバッティングの比率が大きかったのですが、プロに行くためにはまずは守備が大事になると思う。盗塁阻止やブロッキング、キャッチング…そしてシンプルにチームを勝たせられるか。もう一度守備を見直して精度を上げていきたいです」と力を込める。

多種多様な投手陣をリードする

仙台大はブルペンを支えた樫本旺亮(4年=淡路三原)やオリックス・バファローズから育成4位指名を受けた渡邉一生(4年=日本航空/BBCスカイホークス)らが抜け、最速159キロ右腕・佐藤幻瑛(3年=柏木農)もペンシルベニア州立大に編入する。それでも、「キャッチャーは全員のピッチャーを同じタイプにするのではなく、色々なピッチャーそれぞれの良さを引き出さないといけない」と考える井尻がいる限り、心配は無用だ。

「今年は悔いなく、やるべきことをやって、日本一を獲りたい。そしてプロに行きたいです」。理想を現実にすべく、今日も最善を尽くす。

(取材・文・写真 川浪康太郎)

読売新聞記者を経て2022年春からフリーに転身。東北のアマチュア野球を中心に取材している。福岡出身仙台在住。

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