九州アジアリーグ・宮崎サンシャインズ「野球どころ・宮崎の球団が本気の改革を始めた」
九州アジアリーグ(KAL)・宮崎サンシャインズが、チーム改革に本腰を入れ始めた。3年連続リーグ最下位に沈んだ今オフは、NPBでの実績豊富な同県OBをフロントと現場へ招聘。中長期的スパンに立って、「勝てる」チームを目指している。

~“負け慣れ”を払拭するために必要だった人選
宮崎サンシャインズ(以下サンシャインズ)が積極的に動き始めた。 まずは串間市出身の西村徳文氏をGMに迎え、フロント面の強化から着手。現役時代はロッテで16年間プレー、監督として2010年に同球団を日本一に導いた名将だ。そして日南市出身の井上祐二氏を投手コーチに迎え、投手陣の抜本的な立て直しを図る。
「経験と実績がある2人に、お力をお借りしたかったです」と、昨年までGMを務めた球団代表代行兼GM補佐・深江義和氏は経緯を語ってくれた。
「西村GMは、独立の他リーグに関わっていらっしゃいましたが、そちらがひと段落ついてタイミングが合いました。井上コーチと西村GMとの関係は長く、適任者ということで声をかけていただきました」
「KALはNPBへの登竜門としての実績では、他リーグと比較されることも多いと感じています。その中で最下位が続いていることで、チーム内には“負け慣れ”のような空気が生まれつつあったのも事実です。そのようなチーム状況の中で、西村GMと井上コーチの存在は、大きな刺激になると信じています」
深江氏は昨年までの3年間、GMとしてチーム編成を担いつつ、コーチとしてグラウンドにも立ってきた時期もある。チームの雰囲気を誰よりも理解しており、「今回の人事は、改革の一歩目です」と付け加えてくれた。

~NPBへ1人でも入れば、サンシャインズの環境は激変する
2月3日から小林市での春季キャンプが始まった。オフ期間に球団事務所を都城市へ移転、同市でNPB・ロッテがキャンプを張っている関係もあって隣接市でのスタートとなった。
「『地元の球団を何とかしたい』という気持ちは日に日に高まっています」と語るのは井上投手コーチ。「宮崎の球団に関わるとは想像していなかった」と苦笑いしながらも、精力的に動き回っていた。
「昨年で四国アイランドリーグ(IL)・高知ファイティングドッグスのコーチが終わりました。その後、サンシャインズ投手コーチのポストが空いたので、西村GMに『どうだ?』と誘っていただきました。『チームを作り直そう』という球団の思いを感じています」
1980年ドラフト2位でホークス入団(当時南海、その後ダイエー)。広島、ロッテと移りながら、プロ通算17年間で54勝77セーブを挙げた。現役引退後はNPB、社会人の強豪チームや四国IL・高知でコーチを続けてきた、“名伯楽”と言える人物だ。
「選手をしっかり見定めたいです。『野球を続けたい』という情熱はあるので、それをぶつけてレベルアップして欲しい。若い選手も多く、伸びしろと可能性にも期待しています」
「実戦を通じ、『何が足りないか?』を把握してもらいたい。そこから情報等を有効活用して、技術力を高めていく。自分の現在地を知らず、頭でっかちになるのが最も怖いこと。上達への順序を常に考えて欲しい。」
昨今はユーチューブ動画等で野球技術が数多く上がっている。「間違った情報を得る危険性もある」と、指導のプロは警鐘を鳴らす。
「育成契約でも良いので、NPB選手が1人出れば環境も変わる。好素材の選手も集まるようになる。チームの勝利が第一ですが、そういう選手を育て上げることでも貢献したいです」

~“コア 3”として期待する菊田翔友、二井谷賢人、岡田子騰
「チームを牽引してもらいたい」と深江氏が期待を寄せるのが、投手の菊田翔友(キクタトワ)と二井谷賢人(ニイタニケント)、外野手で主将の岡田子騰(オカダシトウ)の3人だ。
菊田は、四国IL・愛媛から2023年の育成ドラフト2位で中日入団。支配下登録と1軍登板こそ叶わなかったが、昨年はウエスタン・リーグで6試合登板、1勝0敗、防御率4.05の成績も残した。元NPB右腕には、投手陣の柱として活躍が求められる。
「12球団合同トライアウトに参加しましたが、声がかかりませんでした。サンシャインズには感謝しかないです。NPBはもちろん、韓国や台湾でもチャンスがあれば挑戦したい。そのためにも宮崎で必死にプレーしたいと思います」
「プロに入ってからはブルペンを任されることが多かった。今年は心機一転、高校時代までのように先発にこだわりたいと思っています。まずは100球前後をしっかり投げられるようにしたいです」

二井谷は、亜細亜大の準硬式野球部からクラブチーム等を経て、四国IL・高知へ入団した異色の左腕。189cmの長身を活かした角度ある球が持ち味で、高知でも指導した井上コーチが期待する投手だ。
「野球を続けているからには、NPBという目標は持ち続けています。25歳のシーズンで年齢的にはギリギリだと思いますが、左投手というアドバンテージを活かして、まずはチームに貢献し続けたいです」
「技術、精神面の両方で成長したい。技術面は井上コーチがしっかり指導してくれることを積み重ねたい。精神面で弱気になる部分があるので、結果を積み重ねて自信を付けていければと思っています」

岡田は、愛知大学野球連盟2部の日本福祉大から入団して3年目を迎える。実直に野球に取り組む姿勢が評価され主将を任された。独特の打撃フォームが話題になるなど、チーム屈指の人気者でもある。
「満足な成績を残していないので、『自分が主将で良いのか?』いう迷いはありました。でも、『負け続けているチームを何とかしたい』という思いは持っていた。『チームのために何でもしたい』という気持ちから引き受けました」
「『何のために勝つのか?』を大事にしたいです。地元の人々やバイトさせてもらっている職場の人達に、少しでも喜んでもらいたい。そこの大義をチーム全体に浸透させるのも主将の仕事だと思っています」

~“負け癖”を払拭して新しいチームを作り上げる
「チーム全体が変わろうとする姿勢が、明確になっています」と語るのは、指揮官2年目を迎えた本村信吾監督だ。
「監督1年目の昨季は、正直、しんどかった。『5割は行けるかな…』というなかでスタートしたが、そんなに甘いものではなかった。前年までの惨状を引きずっている感じで、チーム全体にネガティブな空気感がありました」
2024年オフにヘッドコーチから昇格する形で大役を引き受けた。2年連続リーグ最下位と苦しい状況下での監督就任。チーム改革に全力を尽くしたが、「想像以上に難しかった」と振り返る。
「チーム全体に“負け癖”が付き始めていたのも否定しません。勝てないことに関して周囲から意見されることもあり、雰囲気も良くなかった。『過去のことは変えようがないので、まずは意識を変えよう』と伝え続けましたが…」

本村監督は、1986年ドラフト6位で中日入団。89年に広島へ移籍、90年途中からダイエーでプレーした経験を持つ。「独立もプロとはいえ、サンシャインズは大きく異なる組織に感じたこともあった」という。
オフに入るとチームは大きく動き始めた。西村GMを招聘、本気の改革に取り組み始める。本村監督も、「進退をかけます。最低でも5割を目指します」と約束して契約延長をしたという。
「西村GMの元、『チームを変えよう』というのが理解できました。編成面では、欲しい選手を可能な限り獲得していただけました。もちろん獲得予算もしっかり割いてくれています」
「遠征時の待遇に関しても変化があります。昨年まではバスでの日帰りが基本。宮崎はKALの中でも遠隔地にあるので、大きな負担がありました。しかし今季からは状況に応じて宿泊できる機会が増えました」
フロントの積極的な動きに対して感謝の言葉が尽きない。「スポンサーが1社でも増えるよう、グラウンド内外で何でもやっていきます」と何度も口にする。
「今までと同じことをやっていては何も変わりません。『細かい部分まで徹底しよう』と選手には常に伝えています」と、チームを変えるために意識改革から進めている真っ最中だ。

「結果を残せるようになりたい。いきなり優勝は難しいでしょうし、勝負なので全敗することも考えられます。でも今までのような“負け癖”を引きずることはないし、絶対にあってはいけない。新生サンシャインズになります」
本村監督は最後に力強く締めてくれた。NPB球団が長年に渡ってキャンプを張る“野球どころ”の球団が、弱小のままでいるわけにはいかない。本気の覚悟で動き始めた宮崎サンシャインズ、この先の変化に大きな期待をしたい。
(取材/文/写真・山岡則夫、取材協力/写真・宮崎サンシャインズ)
