似ているようでも全然違う、NPBとMLBの「本拠地球場」

広尾晃のBaseball Dibersity
NPBとMLBは、同じプロ野球のトップリーグであり、観戦スタイルはほぼ同じではあるが、スタジアムへの入場の仕方や球場内での楽しみ方などに、結構大きな違いがある。

今回は、サンディエゴ・パドレスの本拠地の「ペトコパーク」、ロサンゼルス・ドジャースの本拠地の「ドジャースタジアム」を例にとって、日米の観戦スタイルの違いについて、紹介しよう。

形式的なNPBの「手荷物検査」

NPBの公式戦でも、球場に入場する際には「手荷物検査」がある。危険物や違法薬物を持ち込まないかをチェックするのだ。警備員やスタッフがバッグの中を覗き込んで確認する。「手を入れていいですか?」と聞いて中身を確認することもある。実は、NPBの場合、この「手荷物検査」には、食べ物や飲料などを外部から持ち込ませない目的が大きい。「食品衛生の観点から」ということになっているが、できるだけ球場内で「お金を使ってもらう」という目的もあるようだ。「1リットル以上のボトルは持ち込めません」とか「ペットボトルの飲料は持ち込まずにその場で飲んでください」などと言われることもある。

しかし実態としては、NPBの手荷物検査は、形式的でそこまで厳しくはない。球場内で持ち込んだビールや焼酎などを飲むお客を見かけることがある。

遥かに厳しいMLB

透明バッグ

これに対してMLBでの入場時の規制ははるかに厳しい。

まず、持ち込めるのは、規定サイズ(約30cm × 30cm × 15cm 以内)の透明なプラスチックやビニール製のバッグ。透明でない場合は(約12.7cm × 20cm × 5cm 以内)以下。

球団によって持ち込みが可能なバッグには微妙な違いがあるが、ほとんどの球場ではリュックサックなどバックパックは持ち込み不可になっている。

ペトコパークのスクリーンで紹介された持ち込みバッグ規制の説明

危険物、違法薬物の持ち込みはもちろん禁止だが、それに加え望遠レンズが付いたカメラや三脚なども持ち込むことができない。

カメラの規制はかなり厳しく、デジカメのレンズの「長さ」もチェックされることがある。小さく収まっていても「Extension(伸ばしてみて)!」と言われることもある。

またバッグに大きなエコバッグなどを折りたたんで入れているのも見とがめられることになる。

ドジャースタジアムの入場チェック
ペトコパークの入場チェック

常連客によると「自分から率先してかばんを開けて、中身を見せた方がスムーズに通ることができる」とのことだ。ただ中身のチェックは係員によって大きく異なるのも事実だ。

「持ち込みできない」と言われたバッグや中身は、球場外部にあるコインロッカーに預けるか、その場で廃棄することになる。

昨年、ドジャースタジアムでは、サッカーのユニフォームを着た日本人の親子連れを見た。この時期にやっていたサッカー大会を見たついでにMLB観戦を、という印象だったが、透明なバッグを持っていなかったので途方に暮れていた。すると透明バッグ売りの叔父さんが近づいてきてバッグを売った。こういう商売も成立するのだ。

観客は、飛行場にあるような金属探知機を通ってから、チケットを提示することになる。

チケットは電子チケットだけ

NPBでも最近は電子チケットが多くなったが、ほとんどの球団ではまだ紙チケットが主流だ。しかしMLBでは99%以上が電子チケットになっている。筆者は1度だけ、お年寄りの夫婦が紙のチケットを提示しているのを見たが、ほとんどがスマホをかざす電子チケットだ。

チケットは「MLB Ballpark」という公式サイトから購入する。球団や他のチケットサイトから購入しても、結局最後はこのサイトに行きつく。スマホに「Ball Park」のアプリをダウンロードするのは必須だ。

NPBの電子チケットの場合、スクリーンショットをとったりQRコードを紙に出力しても入場可能だが、MLBでは「Ball Park」のサイトに提示されたQRコード以外では、入場できない。

今春のWBCや、昨年の「MLB東京シリーズ」でも、東京ドームではMLBと全く同じチェックインシステムが導入されていた。

ペトコパークの飲食ブース

「回遊性」の違い

スタジアムに入場してからで言うと、日米の最大の違いは「回遊性」だ。

NPBの場合、広島、日本ハムなど一部を除き「チケットの券種によって入場できないエリアがある」のに対し、MLBでは、いったん入場すると「VIPルーム」などを除き、観客はどこへでも行くことができる。 スタジアムにはさまざまな店舗がある。ビールなどの飲料と食べ物を売る店が多いが、球団のキャラクターグッズの店も多い。これは日米共通だが、NPBでは、買った食べ物は客席で食べることが多いが、MLBの場合、購入した食品を食べるためのベンチやシートがたくさんある。またカフェのような店舗もある。
球場に入った観客は、チケットの種別に関わらず、こうした店舗でゆっくりと食事を楽しむことが出来る。

ドジャースタジアム名物のドジャードッグを売るブース


日本ハムの本拠地、エスコンフィールドにも寿司屋などの店舗があり、お客は客席を離れて食事を楽しむことができるが、こうした店は例外的だ。
しかしMLBでは「試合を観ずに食事を楽しむ」という「球場の愉しみ方」もあるのだ。
MLBの球場では、顧客にスタジアムの魅力を存分に味わってもらうために「回遊性」を高めているのだ。
MLBではいったん入場した観客が、自分の客席を離れて長く帰ってこないことがしばしばあるが、端的に言えば「観客席で試合を観るだけが、野球観戦ではない」ということだ。
なおアメリカにもスタンド内での売り子がいるが、NPBではビールのタンクを担いだ女性の売り子が「球場の華」のようになっているが、MLBでは男性の売り子がビールやポップコーン、綿あめなどを大声を張り上げて売っている。
なおほとんどのMLB球場ではカード決済しかできない。現金は使うことが出来ない。

ペトコパークの売り子

球場はミュージアム

さらに、MLBの球場は「博物館」でもある。各球団の歴史、レジェンド選手の業績などを紹介したコーナーが必ずある。ファンは草創期からの球団の歴史、様々な出来事などをゆっくりと見て回ることができる。
NPBでも、阪神タイガースの阪神甲子園球場には「甲子園歴史館」というミュージアムが併設されているが、他の球団には本格的な施設は球場内にはない。九州の西鉄ライオンズが、埼玉の西武ライオンズに、大阪の南海ホークスがダイエーホークス、さらにはソフトバンクホークスになるなど、NPB球団の多くは、長い歴史があっても親会社が代わるなどして本拠地やチーム名が代わることも多い。「球団の歴史」は、そこで中断してしまう。
しかしMLBでは、オーナーが代わってもチーム名や本拠地が変わらないケースが大部分だ。創設以来の球団の歴史は、そのまま一つの物語として続いている。各球団の本拠地は、そのまま球団の歴史を物語る「ミュージアム」だ。当然、その横には「ミュージアムグッズ」などのグッズを販売する店がある。

ペトコパークのミュージアム施設
ドジャースタジアムのミュージアム施設


よく似ているように見えてNPBとMLBの「球場」には、こうした違いがある。
そもそもの話として、NPB球団の本拠地球場の中には、球団や親会社の持ち物ではない施設もある。自由に球場を変えることが出来ない場合もある。MLBの球場との違いは大きい。
NPB球団は、MLB球団のマネジメントやマーケティングを取り入れているので、本拠地球場も少しずつMLBの球場に近づいてきている印象だ。
それでも日米の球場の差はまだ、かなり大きいといえる。

ペトコパーク





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