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ここを見て!大学野球観戦のススメ②【首都大学野球・日体大 応援編】

“このコラムは、スポーツサイト「ゆるすぽ」で2017年5月2日に公開されたコラムからの転載です。”

三度の飯より野球が大好き!

山本祐香です。

まだ大学野球観戦をしたことのない方でも楽しめるポイントを紹介しよう、というこのシリーズ。第二弾は、「応援」にフォーカスしたいと思います。

野球が日本に伝わったのは1872(明治5)年と言われており、1903(明治36)年に早稲田大学対慶應大学の通称・早慶戦、1915(大正4)年には現在の全国高等学校野球選手権大会、通称・夏の甲子園が始まりました。そして、1925(大正12)年には東京六大学(早稲田・慶應義塾・明治・法政・東京・立教)リーグ戦、プロ野球のペナントレースが始まったのはそれからさらに11年後の1936(昭和11)年です。そんな歴史の中、団体応援の始まりは東京六大学という説があります。

プロ野球の応援もそうですが、大学野球の応援もリーグごと、大学ごとに色がありとても面白いんですよ!歴史のある東京六大学は全体的に伝統を感じる応援歌とOBも含めた大人数でも統率のとれた応援で、全力プレーの中にも礼儀と秩序がある大学野球のイメージそのものを表していると感じます。環太平洋大学の応援は、マーチングバンド部による壮大な演奏に圧倒されますし、200人近くが声を揃えて全力で応援する上武大学は、応援歌のレパートリーが多く歌詞もよくできており、島田海吏選手の応援歌などは私も普段、家事をしながら口ずさんでしまうほどです(笑)。このようにバラエティーに富んだ大学野球の応援は、大学野球観戦になじみがない方にもオススメしたい観戦ポイントのひとつ。そこで今回は、首都大学野球連盟に所属している日本体育大学の試合に密着してきました!

同校の「応援」について掘り下げていきたいと思います。

日体大の応援は応援団部(リーダー部)の指揮のもと、応援団ブラスバンド部、チアリーダー部、そして野球部のメンバーで行われます。大学野球の応援団について、みなさんはどんな印象を持っているでしょうか。応援している様子を見ていると、古風で上下関係が厳しそうでプライベートまでも常に硬派なイメージ。日体大は体育大学なので

“体育会系”の最高峰、特に規律が厳しそうに思えます。本当のところはどうなのか、団⻑の難波大二郎さんにたっぷりお話をお聴きしました。

指揮をとる難波団長

――いつから新団⻑となったのですか。
「1月です。箱根駅伝が終わると1月12日頃に幹部交代式があり、そこで正式に代が替わります」

――団員は何名いらっしゃるのでしょうか。それぞれ応援するときの役割が決まっているのですか。
「四年生が3名、二年生が1名、新一年生が1名おります。応援のときは自分たち四年生が、今日は太鼓をやってくれ、などと指示をして、その都度担当が変わります。校歌の指揮と、対戦校とのエール交換は必ず団⻑がやります。試合が始まる前と後にエール交換をするのですが、校歌については試合前は両校、試合後は勝った大学のみが歌えます」

――応援するにあたって心がけていることはありますか。
「第一に“選手のために”。自分のためにではなく、どうしたら選手、野球部の力になれるかといつも試行錯誤しています」

――“選手のために”ですね。守備中も一球一球、投げるたびに応援していますよね?
「はい。ストライクとったら拍手、というようにいろいろパターンはあるのですが、守備中も盛り上げるというのをモットーにしています」

この日先発し、完封勝利をあげた東妻勇輔投手(3年・智辯学園和歌山高)

――応援の練習はいつ、どのようにしているのでしょうか。毎日?
「いえ、月・水・金の週3回です。そこで上級生が下級生に教えて基礎を叩き込んでいます」

――野球部と一緒に応援を合わせる練習もするのですか。
「いえ、しないです。野球部も⻑い間やってきているので、一年生が入ってきたら教えるという形ですね」

――野球部の新入生は、本番で初めて指揮に合わせて応援するのですね。応援歌も伝統的に引き継がれているものばかりなのですか?今年から新しくこれをやろう!ということはないのでしょうか。
「ないですね。ずっと同じものです。伝統がありますので」

――やっぱり大学によって違うものですね。新しい応援歌をどんどん取り入れるスタイルのところもあれば、すっと同じ応援歌を守り続けているところもある。伝統と言えば、日体大は優勝した時にエッサッサをやりますよね!
「はい。昨年の春、優勝したのでこちらの球場(サーティーフォー相模原球場)でエッサッサをいたしました。野球部員に自分たちも加わって、男子学生のみでやります」

――そのとき女性陣はなにを?
「ただ見ているだけです(笑)」

エッサッサとは..大正時代から伝わる日体大伝統の応援スタイル。“エッサパン”と呼ばれる白い短パン姿で行う。東京農大の“大根踊り”のような独自の応援スタイルを作ろうということから、日体大の前身である体操学校の在校生であった平井一氏が考案。現在までアレンジを加えながら継承されている。

https://www.youtube.com/watch?v=LX0y3XrZeyk

――チアリーダーはチアリーダーで野球の応援以外にも活動があるのですよね?
「はい、応援の他に競技がありまして、チアリーダー部単体で大会に出たりもしています。昨年はインカレ(全日本学生チアリーディング選手権)で2位になったんです」

――えー、そうなんですか!すごい!では人数もたくさんいますよね。野球の応援に来るのは一部のメンバーなのですね。
「そうですね。チアリーダー部単体で他のイベントなどが入ることもありますので、その都度メンバーを分けてということになります」

――応援団は、野球以外で応援に行く機会があるのですか。
「相撲や駅伝があります」

――駅伝って、走っている選手についていって応援するわけではないですよね?どうやって応援するのですか。
「スタートが8時だとすると7時から号砲まで一時間スタート付近で応援して、選手が通り過ぎたら移動してゴール付近まで行きまして、また選手が通り過ぎるまで応援する、というのが駅伝の応援の仕方です」

――なるほど!相撲のときはどんな応援をするのでしょうか。
「相撲のときは学ランのリーダー部のみが行って、声と動きのみの応援をします」

――学ランが硬派に見えるというのもありますし、応援団は厳しいというイメージがありますが、その辺はどうなのでしょうか。後輩への接し方など…。
「自分たちのモットーが『オンとオフをはっきりする』でして、練習中や応援活動中はもちろん厳しくするのですが、オフのときはいい距離感で接しています(笑)」

――では、プライベートで後輩と会うこともあるんですか?
「ありますよ!」

――応援活動中に団⻑が後輩に指示しているところを見ましたが、団⻑が何か言うたびに後輩は「はい!」「はい!」と大きな声で返事をしていましたよね。プライベートではあんな感じではないと(笑)。
「それなりの先輩後輩の上下関係はありますが、応援活動中のような感じではなく柔らかくしています(笑)」

――応援団のイメージが変わりました。団⻑が応援団に入ったきっかけは?
「自分が一年生のときに歌唱指導という校歌を教わる時間がありまして、そのときに応援団のパフォーマンスがあったんです。それを見て感銘を受けて、『自分、入らせていただきます!』ということになりました」

――特に他の部活に入りたいとは思っていなかったのですか。
「日体大に入ったからには何かしらの部活に入ろうと思っていまして、何がいいかなと思っていた時にちょうど応援団のパフォーマンスを見たんです」

――いいタイミングでしたね。では一年生からずっと続けているということですよね。途中でやめたくなったことはないですか。
「キツくて行きたくないな、と思ったことはありますが、本格的にやめたいと思ったことはないです」

――キツいって、どんな練習をするんですか。
「いろいろ…基礎ですね。ランニングとかじゃなくて、精神的な…鍛えることです。あはは(詳しくは教えてくれない団⻑)」

――え、どんな内容か気になるんですけど(笑)。
「そういうのを経て、四年になってこうやって応援活動をやれているので。やっぱりそういうのも必要かなと、強くなれるので」

――なるほど。合宿もあるのですよね?
「8月にあります」

――では、そこで一番鍛えられるのですね。
「そうですね。合宿が終わったときには、何も怖いものはないなと思えます。やっている最中はやっぱりやめたいと思うんですけど、終わったあとは達成感が勝りますね」

――達成感、いいですね。日常生活や将来を考えたときに、応援団をやっていて良かったと思うことはありますか。
「まず、学校では先生方に良くしていただけるといいますか、応援団がいなきゃ大学が成り立たないと言ってくださったりもして重宝していただいています。すごく嬉しいなと思います。あとは、礼儀作法や言葉遣いは応援団で学べたと思います」

――同年代でダラダラしている人を見るとどう思いますか(笑)。
「正直、こいつには負ける気がしないな、と思います(笑)」

――でしょうね(笑)。応援団と学業との両立という部分ではどうでしょうか。
「先ほども申しましたように、練習が月・水・金でそれぞれ二時間くらいなので、火・木は完全オフですし、土・日も応援活動がない時期はオフなので、アルバイトも勉強もできます。1月の箱根駅伝が終わったあとは丸々休みになりますしね。野球部のように毎日練習がある部活よりは、時間に余裕があると思います」

――オフの日など、普段どんなことをして遊んでいるのですか。趣味などは?
「ご飯に行くくらいで、趣味はないですね(笑)」

――では、好きな芸能人はいますか(笑)。
「自分は昔から新垣結衣ちゃんが好きです(笑)」

――じゃあ、もちろんこの間のドラマも見ていましたよね?
「“逃げ恥”ですよね?あれ、良かったです(笑)」

――やっぱり団⻑も普通の大学生なんですね、安心しました(笑)。応援団は硬いイメージしかありませんでしたが、団⻑のお話を聴いてイメージが変わりました。今、日体大のリーダー部は全部で5名ということで、まだまだ募集中ですよね?
「はい、もう誰でも入って欲しいです!」

難波団⻑、応援のことからプライベートのことまで、いろいろ答えてくださりありがとうございました。「オンとオフをはっきりする」とおしゃっていた通り、応援活動中はキリッと格好良く、インタビューに答えてくださっている間は優しい笑顔でした。インタビューをした日、日体大は明星大と対戦。4-0で見事勝利し、難波団⻑の指揮で試合後の校歌は日体大が歌いました。そして、エール交換でお互いの健闘をたたえ合い、この日の応援活動は終了となりました。


明星大の応援団に向かってお辞儀をする難波団⻑

みなさんもぜひ、試合はもちろん、大学野球の応援を見に球場に足を運んでみてください。最後に動画で、試合と応援の様子をご紹介します。日体大の特色がよく出た応援を感じることができると思います。

https://www.youtube.com/watch?v=XjHkronxKZk

次回は、日体大の練習に密着。大学生はどのような環境でどのような練習をして、試合に臨んでいるのか。お楽しみに!
 

山本祐香
好きな時に好きなだけ神宮球場で野球観戦ができる環境に身を置きたいとふと思い、OLを辞め北海道から上京。「三度の飯より野球が大好き」というキャッチフレーズと共にタレント活動をしながら、プロ野球・アマチュア野球を年間200試合以上観戦。気になるリーグや選手を取材し独自の視点で伝えるライターとしても活動している。記者が少なく情報が届かない大会などに自ら赴き、情報を必要とする人に発信する役割も担う。趣味は大学野球、社会人野球で逸材を見つける“仮想スカウティング”、面白いのに日の当たりづらいリーグや選手を太陽の下に引っ張り出すことを目標とする。

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