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首都大学野球秋季リーグ開幕! 再びの日本一を目指す日体大の戦力は!?

昨秋の明治神宮大会で、37年ぶりの日本一に輝いた日本体育大学。新チームとなって迎えた今春は全国大会の秋・春連覇を目標にかかげリーグ戦に挑みました。とはいえ、ハイレベルな首都リーグ、一筋縄ではいきません。最後まで優勝争いを繰り広げたものの3位という結果に終わり、全国大会へ進むことはできませんでした。

しかし、昨年も春はリーグ4位に甘んじたものの、秋には開幕から8連勝で早々にリーグ優勝を決めるという圧倒的な強さを見せ、その勢いのまま全国制覇を成し遂げました。この秋、再びの快進撃となるか、選手の言葉と共に戦力を見てみましょう。
 

 

最後のシーズンを迎える二枚看板と崩れることのない投手王国

 

オープン戦はあくまで公式戦に向けて調整する場に過ぎませんが、そこで活躍しレギュラーを勝ち取る選手もいます。この夏のオープン戦でも、安定の活躍が期待できる選手や新戦力となりそうな選手を観ることができました。

日体大の投手と言えば、明治神宮大会の活躍でその名を全国区とした二枚看板の松本航投手(明石商)と東妻勇輔投手(智辯和歌山)。ドラフト候補としてメディアでも多く取り上げられるようになったふたりも、いよいよ最後のシーズンを迎えます。

 

今春のリーグ戦の前に大幅に増量したものの、その体を使いきれていなかったという東妻投手は秋に向けて少し体を絞りました。しかし「ベストの体重に持っていくことも必要だけど以前の体に戻すというわけではなく、筋肉量が増えた今の体のまま以前のような瞬発力を出せるようにしたい」と、瞬発系の動きを強化するトレーニングに取り組んできたそうです。

 

オープン戦では、“これぞ東妻投手のピッチング”とまではいきませんでしたが、時々ズバッと決まっていた速球や鋭く曲がるスライダーを見る限りは、リーグ戦に向けて調子が上がってきたとみて良いでしょう。

東妻投手にリーグ戦への意気込みを聞くと、「“ノーヒットノーラン”“防御率0点台”“1シーズン5勝”を入学当初からの目標にしていたのですが、2つはもう達成しているので残りの“1シーズン5勝”を達成します」と力強く宣言。そして、「死ぬ気で頑張ります!」と言った後に「敵チームに勝つより自チームのアイツに勝ってやります!」と松本投手へのライバル心をあらわにしました(笑)。この素直さや人懐っこさが東妻投手の魅力のひとつ。今や大学日本代表として国際大会に出場し、最優秀投手にまでなった松本投手を超えたいという気持ちが、東妻投手の力を最大限に引き出します。

 

東妻投手からの度重なるライバル宣言にも「アイツ、負けず嫌いですよね。全部受け止めます」と、常に冷静でマウンド上でもほとんど感情の動きを感じない松本投手、今年は主将となりチームをまとめます。

 

大学日本代表としての戦いを終え、チームに戻ってきて最初に出場したオープン戦では、企業チーム相手に最終回の1回のみ投げました。結果は、三者連続三振。キャッチャーの後ろの位置から見ていた筆者は、松本投手特有のグイッと伸びてくる直球からさらにパワーアップした豪速球に、思わずのけぞってしまいました。それは、今までの伸びに加えてゴーッと唸るような凄みも加わった直球でした。

松本投手は春季リーグ戦中にもフォームの調整をしていましたが、リーグ戦後から大学日本代表の国際試合までわずか3週間でも試行錯誤を繰り返していました。投球時の下半身の移動の仕方を変えたことによって上半身と下半身の連動がスムーズにいかなくなったそうで、齋藤トレーナーにどのような状況かを確認してもらい辻投手コーチとも相談した結果、投球動作で左足を上げたときにタメを作ることで上半身と下半身の動きを整える時間を作ったそうです。最速150キロだった球速は154キロまで上がり、今までよりさらに凄みが増した松本投手のピッチングを相手チームはどう迎え撃つのでしょうか。

 

東妻投手は、他でもないチームメイトの松本投手に「勝ちたい!」という強いライバル心を持ち続けていながらも、「航は人としてできている。航が言うことにはこの野球部の誰もが反発することはない」と言い、松本投手は「自分以外で良いと思う投手は?」という質問に真っ先に「東妻とか。あんなスライダーは僕には投げられないんで」と答えます。お互いを認め合うふたりは、この秋もチームを勝利へと導く圧倒的な投球を見せることでしょう。

そして、日体大にはまだまだ魅力的な投手がたくさんいます。松本投手に次ぐ安定感のあるピッチングの吉田大喜投手(大冠・3年)、躍動感溢れるピッチングをする北山比呂投手(横浜・3年)、幼い見た目とは裏腹に勝気なピッチングをする森博人投手(豊川・2年)など、頼もしい後輩たちが二枚看板の脇を固めます。誰が登板しても大きく失点するとは考えられない投手陣、そのピッチングをぜひ直接観ていただきたいです。

吉田大喜投手 (大冠・3年)

北山比呂投手 (横浜・3年)

森博人投手 (豊川・2年)

 

個の力をつなげて打線にする

 

とにかくガンガンバットを振ってくるリーグが増えている昨今、少し打撃がおとなしく感じられる首都リーグ。ロースコアの試合が多いのが特徴です。日体大も例外なくその部類ですが、個の力は目を見張るものがあります。

上西嵐満外野手(宇部鴻城・3年)や高垣鋭次内野手(智辯和歌山・2年)など昨年からレギュラーの選手たちは、オープン戦でもコンスタントに成績を残しており今季も期待できそうです。

そして、春の時点で古城隆利監督の口からもバッティングのいい選手として名前の出ていた三野原愛望内野手(東福岡・1年)は、バットがよく振れており広角にも打てる魅力的な選手です。オープン戦では常に3番か4番に入り、サードを守っていました。リーグ戦でも中核を担うと思われますので、豪快なバッティングで打点を稼いで欲しいと思います。

 

三野原愛望内野手 (東福岡・1年)

リーグ戦中、ぜひどこかのタイミングで見てみたいのが荒祐広内野手(常総学院・2年)。1,2年生のみが出場する“新人戦”で初めて観たのですが、170センチと小柄なのに一瞬大きく見えるくらい勢いのあるバッティングをします。この秋出場はあるのか、そしていずれはレギュラーとして活躍することを期待しています。

日体大の主将は松本航投手ですが、副主将は船山貴大内野手(日大三・4年)、中村誠外野手(大阪桐蔭・4年)、馬場龍星捕手(八戸学院光星・3年)の野手3人です。

 

馬場龍星捕手(八戸学院光星・3年)

春季リーグではロースコアゲームが多く、なかなか得点を挙げられなかった打線について 「ずっと守備の人でバッティングは全然だったんですけど、高校(日大三)のときバッティングの感覚がわかるきっかけがあって、それから打てるようになったんです。バッティングって“きっかけ”が大事だと思うんですよね。今苦しんでいる人も、その“きっかけ”があればいいなと思います」と話す船山選手はオープン戦後半、なかなかヒットが出ず苦しんでいましたが、最後の試合で値千金の逆転ホームランを打ちました。次の打席もヒットを打ち、いい感覚が戻ってきたとのことです。


 

ショートの守備は大学ナンバーワンと言われるほどの実力で難しいハーフバウンドもなんなく捕球してしまいますが、「守備は誰にも教わったことがないんですよ」と衝撃発言。「小さな頃はオモチャで遊んだことがなくて、いつもボールを触っていました。守備については自分で動画を見たりして、こうやってみようとやってみたらできて、というのを繰り返してきました」と、完全に独学だったそうです。すごすぎます。

「(社会人野球の)練習参加のときや、國學院大學のコーチから『こうしたほうがいいよ』と教えてもらい、今まで誰かに教わったことがなかったのですごく嬉しかったです」と、初めて守備についてアドバイスをもらったのは、つい最近だとか。

もうひとりの4年生副主将である中村選手は、大阪桐蔭高校では主将で全国高校野球選手権大会で日本一になりました。オープン戦で誰よりも声を出して仲間を鼓舞していた中村選手について、船山選手は「高校でも大学でも日本一になっている人なんてそうそういませんよ。高校で活躍しちゃって大学来てやめていく人も多い中、ずっと頑張っていてすごいと思います。本当に野球好きなんだなと思います。あと、僕は結構落ち込むタイプなのでアイツは常に前を向いていて、すごいなと思います」と語ります。

そんな船山選手も松本投手からすれば頼れる存在です。「僕なんかただ立っているだけで、実質船山が主将みたいなもんですよ」と、松本投手。

主将の松本投手は野手と行動を共にできないこともあるので、船山選手が中村選手と力を合わせて野手をまとめることになりますが、上級生が率先してチームや寮の雑用を行い、後輩の面倒をみるという「体育会イノベーション」を実践していることで後輩と良い関係を築いている反面、距離感の近さから厳しく言わなければいけない場面で事の大切さが伝わらないこともあるそうで、その辺をしっかりすることでもっとまとまりのあるチームを作って秋季リーグ優勝、そして日本一を目指そうとしています。

船山選手自身も学生生活最後のシーズンとなりますが、個人の目標は常に「首位打者」。守備職人でありつつも、野手であるからには周りがどう思おうと首位打者を狙うのが当然だと言います。最後のオープン戦で取り戻せた打撃の感覚が、リーグ戦に生かされることを期待しています。


 

日体大は首都大学野球1部リーグで東海大・武蔵大・筑波大・帝京大・桜美林大と戦います。投手のレベルが高く、ロースコアゲームが多いところが特徴ですが、もちろんチームごとにカラーも違うためどの試合も楽しむことができます。

学業に支障が出ないよう基本は土日に試合を開催。同一カードで2勝したチームに勝ち点を与える勝ち点制ですが、3戦目にもつれた場合も土日に設けた予備日に試合を行います。全国でいち早く「投球数ガイドライン」を設けるなど、選手ファーストを心がけています。

日体大の古城監督にお話を訊くと、常に大学野球のより良いあり方を考えていることがよくわかり、今後首都リーグがどのように盛り上がっていくかが楽しみです。

9月1日(土)から、首都大学野球秋季リーグがいよいよ始まります! 詳しくは各サイトをチェックしてください。現地に行けない方は、カードによっては中継があるのでそちらをぜひご覧ください。

首都大学野球連盟サイト
http://tmubl.jp/

日本体育大学硬式野球部サイト
https://nittaibaseball.com/

ここで首都リーグの試合の中継が見られます!
有明放送局
https://ariake.tv/

山本祐香
好きな時に好きなだけ神宮球場で野球観戦ができる環境に身を置きたいとふと思い、OLを辞め北海道から上京。「三度の飯より野球が大好き」というキャッチフレーズと共にタレント活動をしながら、プロ野球・アマチュア野球を年間200試合以上観戦。気になるリーグや選手を取材し独自の視点で伝えるライターとしても活動している。記者が少なく情報が届かない大会などに自ら赴き、情報を必要とする人に発信する役割も担う。趣味は大学野球、社会人野球で逸材を見つける“仮想スカウティング”、面白いのに日の当たりづらいリーグや選手を太陽の下に引っ張り出すことを目標とする。


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