SC相模原が念願の天然芝グラウンドを確保 J2昇格へ向けて新たなスタート

現在J3に所属するSC相模原。相模原市で社会人クラブチームとして始まり、JFLへ、さらにJリーグへと昇格し、成長してきた。
この7月には神奈川県愛甲郡愛川町で天然芝の練習グラウンドを優先利用できることが決定。「強いチームを作るには不可欠」という環境を手に入れて、チームの新たな歴史が始まる。


複数のホームタウンを持つ神奈川のチーム


SC相模原は2008年に発足した。その年に神奈川社会人リーグ3部で優勝。その後も快進撃を続け、2013年にはJFLに昇格した。さらに創設からわずか6年後、2014年にJリーグ参入を果たした経歴を持つ。
2026年時点ではJ3だが、2021年にはJ2に所属していた。
現在は相模原市、海老名市、座間市、綾瀬市、愛川町という5市町をホームタウンに持つ。
今回天然芝のグラウンドに改修されたのは、愛川町が保有する三増(みませ)公園陸上競技場だ。

待望の天然芝グラウンドでトレーニングマッチ

クラブの立ち上げから関わり、運営会社の株式会社スポーツクラブ相模原に入社してチームを支えてきた前社長(現取締役)の小西展臣(こにしのぶおみ)さんに話を聞いた。


JFL参入、そしてJリーグへ


小西さんはSC相模原とともに歩んできた。チームの立ち上げから関わり、当初は別の仕事をしながら土日に活動していたが、2010年からはSC相模原一本に。2016年にはSC相模原を運営する株式会社スポーツクラブ相模原の代表取締役社長に就任した。2023年に現社長の西谷義久氏が就任してからは、取締役としてチームを支え続けている。
営業業務やスポンサー・自治体相手の仕事が多い小西さんだが、当時から選手たちとの距離は近かった。

「今はスタッフも多いですが、昔は遅刻した選手を起こしに行ったこともありました。ドアを叩いたら眠そうな顔で出てきて『すいません』と。先日その選手が対戦相手として来ていて『最近起こしに来てくれないじゃないですか』と冗談を言っていました」

移籍の多いサッカー界。18年のうちには選手もどんどん変わっていくが、別のチームで選手として、また指導者として頑張っている人も多いという。

「嬉しかったのは、地域リーグからJFLというアマチュアの全国リーグに上がったとき。なかなかハードな試合が3日間連続するような大会があったんですが、そこを勝ち上がってJFLに昇格したときは本当に嬉しかったですね。2年間達成できなくて、3年目にしてようやく達成できたんです。もちろん2014年にJ3に昇格したときも嬉しかった」

J2昇格を決めたときは、2020年の最終戦までもつれる展開だった。3チームの争いとなり、最終戦での条件は勝ち点3を取ることと、別会場の長野が負けるか引き分けること。長野戦の情報は完全にシャットアウトして目の前の一戦に挑んだ。
前半先制し、後半に追加点。1点を取られたが、1点差を守って薄氷の勝利。
そして長野敗戦の報を聞き、歓喜が爆発した。

「あのアウェイでの一戦は、一番思い出に残っています」

現在はJ3で過ごすも、チームやファンが一体となって掴んだ栄光を、みな忘れてはいない。

チームやファンが一丸となってJ2昇格を勝ち取った2020年


2021年にDeNAが経営参入

チームの経営が大きく変わったのは2021年だった。神奈川県内にプロ野球球団とプロバスケットボールチームを有するDeNAがSC相模原の経営に参画。2023年2月にはDeNAの連結子会社となった。
DeNAは東京に本社を持つ企業だが、神奈川県のスポーツに力を入れている。横浜DeNAベイスターズに加え、バスケチームを川崎に、サッカーチームを相模原に持つことで、神奈川県の政令指定都市三つに主要なスポーツチームを持つことになった。
SC相模原の経営は大きく変わり、資金面や広報面でも恩恵を受けることは多い。


クラブの経営理念は「地元の未来に必要なものをつくる」こと。
地域と一体となって成長し、地域を背負って活動するクラブチームとして、社会的にも経済的にも発展していく展望が示されている。
2023年からは、行政、企業、ファンや地域住民も巻き込みながらホームタウンの社会課題に向き合い、その解決を目指す取り組みとして「ジモトアイプロジェクト」を始動。<こども/教育>・<ウェルビーイング>・<環境保全>の3つを重点領域に掲げ、新たな社会連携活動を志向している。

「地域での知名度が上がってきたというのは一番感じるところです。市民や町民の方々もそうですが、企業の方々もたくさんの方が知ってくださっている。地域での活動が根付いてきていると思います」


これまでは複数の練習場所を借りて練習

「強いチームを作るには環境が必要。天然芝のグラウンドは必要不可欠」という小西さん。SC相模原はこれまで練習場所の確保に苦労してきた。

「創設当初の2008年は小学校の校庭を借りてナイター練習をしていました。2009年には綾瀬市に人工芝グラウンドができ、綾瀬市にお願いして使用を開始しました」

かつては校庭を借りて練習していたことも

これまでずっと優先的に使える決まった練習場所を持たず、複数の地域で練習場を借り、土や人工芝のグラウンドで練習を続けていた。


天然芝の利点と管理の負担


「天然芝の練習グラウンドを持っていないチームはJリーグ60チーム中5チームだけ」というほど、天然芝のグラウンドはプロサッカーチームにとって必要なものだ。
まず、試合を行うスタジアムが天然芝であるため、勝つため、レベルアップするためには慣れる必要がある。
それから、けがのリスク軽減だ。人工芝のグラウンドはどうしても固く、膝や足への負担が大きい。

「特にけがをしたことのある選手には、人工芝グラウンドが大きな負担になります。以前に人工芝を全く知らない外国人選手が入ってきて、練習初日にけがをしてしまったことがあり、本当に申し訳ないと思いました」

さらに暑さの問題もある。人工芝は夏場に直射日光が当たれば表面温度が60℃から70℃になることもあるという。
こうした理由から天然芝のグラウンドを持つことはチームの重要な課題だったが、整備するには自治体との提携が不可欠。また、専門性の高いプロ仕様の天然芝は、維持管理費用の捻出もクラブには大きな負担となる。

愛川町との協定締結により練習で優先的に使える天然芝グラウンドが誕生した

2026年、念願の天然芝の練習グラウンドは、愛川町との提携により生まれた。
愛川町の三増公園陸上競技場の天然芝グラウンドを、SC相模原の費用負担により、プロ仕様のティフトン芝に改修する。そして練習拠点として優先的に利用する協定を結んだのだ。

練習場所としての使用のほか、「ジモトアイプロジェクト」の一環として、公開練習や子どもたちを対象にしたスクールやスポーツイベント、町民の健康増進への寄与を可能にする。

「チーム数が増えるといい選手の獲得競争も激しくなるので、報酬だけではなく練習環境とかクラブハウスとか、そういうところがチームを選ぶ大きなポイントになってきましたね。そういう面でも天然芝の練習場は必須です。今はJ3ですが、J2になりJ1に上がる。そのための大きな土台が今回できたと思っています」


新たなスタートを切るSC相模原


三増のグラウンドには改修中も何度も足を運んでいた小西さん。
芝が敷かれていく様子も見守ってきた。

「張り替えは、最初に古い芝を剥がして土を捨てて、新たに砂や土を入れる。芝を作っているのは鳥取県なんですが、鳥取から来たときは大きなロール状に巻かれています。それを上に持ってくる。『貼る』というよりは『引いていく』感じなんですね」

鳥取から運ばれてきた芝が根付き、緑のグラウンドが選手たちを待つ

めったに見られない改修中だけの光景だ。
6月末には芝張りが終わった。日照時間が例年より短かったこともあり、根の張りは予想より遅れたというが、夏らしい日差しが戻り、良質なピッチが出来上がった。

天然芝のグラウンドが完成するのを、監督も選手たちも心待ちにしていた。
7月23日に新グラウンドでの練習開始。
7月26日にはこけら落としとしてアスルクラロ沼津との「リニューアル記念マッチ」を開催。町民が1000名規模で招待され、記念Tシャツの配布などもおこなわれた。

「愛川町の方々もご招待し、たくさんの方々に見ていただきました」

2026-2027のJリーグも開幕を迎え、チームも新たなスタートを切った。
今後の展開として考えているのは、 改修した天然芝グラウンドの更なる利活用による地域の活性化だ。

「愛川町を始め、応援していただいている方々には本当に感謝してもしきれません。J2昇格というのが今年掲げている一番の目標。もっともっと充実した環境を追い求めていきます」


(取材・文/井上尚子 画像提供/SC相模原)

関連記事