高校生以下の野球人口はここ10年でどのように推移したのか?

広尾晃のBaseball Diversity

2025年が終わる。この時点で、野球人口に関する数字について見て行きたい。

■男子小学生の野球、サッカー人口の推移

スポーツ少年団 男子軟式野球、サッカー選手数の推移

「スポーツ少年団」は、地域の小学生のスポーツ活動を統括する団体。学校のクラブ活動ではないが、小学校単位でチームを作ることが多い。野球は軟式野球だけ。

長年、スポーツ少年団の男子競技では野球が1位、サッカーが2位だった。

2010年の段階では、野球は18.8万人、サッカーは14.8万人だった。

しかし以後、野球人口は急速に減少する。2012年にはサッカーに1位の座を奪われ、2013年には13.2万人と5万人も減少した。

その原因としては、地上波でのプロ野球のナイター中継が2005年に終了し、以後、野球を日常的に見る機会が失われたこと、公園などでの「ボール遊び」が禁止になる地域が増えたことなどがあげられる。

2025年には10万人にまで減っている。

サッカーは2010年、14年のワールドカップで日本代表が活躍。これに対し野球は2006年、2009年と日本はWBC(ワールドベースボールクラシック)で連覇したものの2013年は準決勝で敗退、こうした影響も大きいのではないか。

しかし2014年以降、サッカー人口も減少に転じる。少子化の影響もあるだろうが、小学生がスポーツをする環境が悪化しているという印象だ。

2020年の新型コロナ禍によって、サッカーの競技人口は10万人を割り込む。野球も2023年には10万人を割り込んだが、24年に9.9万人から10万人へとわずかに上昇した。

複数の関係者の話では、これは23年オフに当時エンゼルスの大谷翔平が「野球しようぜ!」と、全国の小学校にニューバランス製のグローブを寄贈したことが影響しているのではないか、とのことだ。

大谷翔平選手が寄贈したグローブ

一方で、女子で軟式野球を始める小学生は増えている。

スポーツ少年団 小学生女子軟式野球選手数の推移

2010年は6000人前後だったのがじわじわと増加し、2020年の新型コロナ禍でも減少せずに、2022年には9032人と最多を記録。近年は少し減少しているが、女子野球は社会の認知が進んで人口は増えている。

一方で女子ソフトボール人口は2010年には5673人だったが、2024年には2927人まで減っている。

女子野球選手に話を聞くと「本当は野球がしたかったが、ソフトボールしかなかったので」と言うことが多いが、ソフトボールから野球への移行が進んでいる印象だ。

■中学校の野球、サッカー人口の推移

日本中学校体育連盟が発表している中学校の男子軟式野球とサッカーの選手数の推移を見て行こう。

中学生 男子軟式野球 サッカー選手数の推移

日本では中学時代に野球を始めることが多い。

2010年の段階で野球人口は29.1万人もいた。これに対してサッカーは22.1万人。

この時期の中学生は380万人ほど、男子は190万人程度だから男子中学生の15%が野球部員だったことになる。

小学校同様、野球人口は急速に減少し、2013年にはサッカーに逆転される。

以後、多少の浮き沈みはあったが、中学男子野球人口は減少を続け、2025年の段階では13万人、2010年の44.8%と半減している。

サッカーも2013年をピークに減少傾向になり、2025年の段階では14.9万人になっている。

2024年の中学生人口は314万人、男子は206万人、野球部員数は6.3%と比率でも半減以下になっていることになる。

中学校の野球部は、2010年には8919校、2025年は3993校と44.7%にまで減っている。2025年の学校数は10146校だから39.3%の中学校にしか野球部がないことになる。

中学女子野球の選手人口の推移も見て行こう

中学生女子軟式野球

2010年には1505人だったが、中学女子野球も浮き沈みはあるものの、2025年は4000人と倍増以上になっている。

ただ、この間、ソフトボールは2010年には1.9万人だったが2025年には5.4万人と大きく増加している。中学段階では、ソフトボールと女子野球は「別の競技」として認識されているのかもしれない。

■小学校、中学校の硬式野球人口

小中学校の段階では、軟式野球のほかに、硬式野球の団体も存在する。各団体は、2024年にNPBが調査した加盟団体の競技数の推移を見て行こう。

なお硬式野球は、男子、女子が同じチームでプレーするのが一般的なので、男女別の区別はない。

硬式野球選手数の推移

中学生の硬式野球の選手数は、5万人前後で推移している。小学校、中学校の軟式野球のように減少傾向にはない。

こうしたクラブは、「将来プロ野球選手になりたい」など、選手や親が明確な「目的意識」をもって入部することが多い。

月謝はスポーツ少年団のチームや中学部活よりもはるかに高額だが、プロ野球やMLBが人気になる中、そういう志望者は一定数いるのだろう。ある意味で「野球塾」のような存在だといえる。

これに対して小学生は、2009年には1.6万人だったが2023年には8000人と半減している。軟式、硬式問わず小学生から野球を始める子供は、激減しているといえよう。

小中学校、硬式野球主要各団体の2009年と2023年の選手数の推移

硬式各団体の選手数の推移

中学では、九州地区を中心に展開するフレッシュリーグを除く団体が増加している。

とくにポニーリーグは2倍以上と大幅に増加している。

球数制限、選手の健康に配慮した指導、全員出場など他の団体にはない指導が、支持されていると考えられる。

リトルシニアやボーイズのチームの中にもポニーリーグ同様の指導方針を打ち出すチームが出ている。

小学生は軒並み選手数を激減させているが、2011年にスタートしたポニーリーグの小学生部門であるブロンコリーグが選手数を伸ばしている。

少年硬式野球は「選択の時代」に入ったといえるだろう。

■高校野球の競技人口

高校硬式、軟式野球とサッカーの選手数推移

最後に高校レベルの選手人口の推移について見て行こう。

硬式野球、軟式野球は日本高野連の発表によるもの。サッカーは高体連の発表によるもの。

硬式野球は2014年の17万人をピークとして減少をし続け、2025年には12.5万人まで減少している。23%の減少だ。小学校、中学校同様減少傾向にはあるが、小学校、中学校に比べて減少幅は小さい。これはやはり「甲子園」と言う人気の全国大会があることが大きいのではないか。

軟式野球は2010年には1.1万人だったが2025年には7600人と30%以上下落している。

これに対しサッカーは2016年の17万人弱がピークで、2025年には13.8万人まで下がっている。ただしサッカーはJリーグクラブの「ユースチーム」が存在し、Jリーグを目指す選手の多くが入団するので、状況は野球とは異なっている。

女子野球の高校レベルは、高体連には加盟していないが、全日本女子野球連盟のデータによると2015年に19チーム698人だったのが2024年には65チーム1864人と大幅に増加している。

女子野球の選手数は全世代で増加傾向にあるといえよう。

少子化の中で、各競技は選手数の減少に直面している。野球は特に下落幅が大きい。

指導や競技の環境を改善する努力が引き続き必要だろう。

スポーツ少年団の野球

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