ポニーリーグは通過点、選手達はここから先の人生が大切

中学硬式野球・ポニーリーグ(以下ポニー)の『マルハングループインビテーションHESTA大倉カップ・第52回全日本選手権大会』 は、SKポニーの初優勝で幕を閉じた。酷暑のオーエンススタジアム江戸川で行われた決勝戦、一進一退の攻防の末に「10-5」で東京日本橋ポニーを下して頂点に立った。

ポニーリーグ・全日本選手権は、今年も最終日まで最高の盛り上がりをみせた。

~決勝進出を目指していたチームが頂点に上り詰めた

7月17日の開会式から5日間に渡って行われたポニーリーグ・全日本選手権大会、参加64チームの頂点に立ったのはSKポニーだった。「ちょっと感動だよね」と開口一番語ったのは、同チームを率いる横井人輝監督だ。

「全日本選手権に向けてチームを作っているわけではありません。中学生のこの時期は、将来を考えた時に最も大事です。本当の意味での“育成”を考えて活動しています。少人数制なのも、各自にしっかり向き合いたいからです。その中で結果も伴ったことに、喜びと驚きの両方があります」

今チームには年代別日本代表の常連でもある捕手・神山大地らがおり、頂点を狙える戦力が揃っていたように思えた。しかし、「“優勝”は頭にありませんでした」と胸の内を語ってくれた。

「今やっている少数制での活動で日本一を目指すのは、チームにとってストレスでしかない。“勝つ”ことを求めるのなら、実力のある選手を集めて25名程度のベンチ入りメンバーで戦います(今大会は16名)。『勝ちたい』思いはありますが、現実的ではありません」

「3年生にとっては最後の大会なので、『目標はどうする?』と選手達に聞きました。『(満員の中で行われる)決勝には出たいです』という返事でした。『足らないことは多いので、少し厳しくなるぞ』と伝え、決勝まで進出できるチームを目指して指導しました」

東海大菅生(東京)、東海大、そして侍ジャパン・大学日本代表と各カテゴリーで指揮を執ってきた。今までの経験を最大限に活かし、「決勝戦に出られるチーム」を作り上げた。

「“決勝進出”という目標を達成できたので、『最後は全員で夢の舞台を楽しみたい』と思っていた。それが“優勝”という結果まで出してくれた。まとまりのなかったチームが少しずつ繋がるようになり、大舞台で大きな輝きを放ってくれました」

「感動だよね」とSKポニー・横井人輝監督は喜びを隠さなかった。

~負けた後の振る舞いで成長は決まる

「楽しく、良い夏でした」と語るのは、惜しくも準優勝に終わった東京日本橋ポニー・緒方将介監督。同チームは今年からポニーリーグへ参加、今大会では中学3年生世代(ポニー)と中学1年生世代(ブロンコ)の両方が決勝進出を果たすなど大きなインパクトを残した。

「満員に埋まった環境の中で試合ができたことが、本当に良かったです。高校へ行って野球を続ける選手も多いでしょうが、大観衆に対する免疫も少しはできたと思います。甲子園出場などしたら、こんなもんじゃないですからね(笑)。こういった経験を積める部分がポニーの良さだと思います」

「打って勝つ」が持ち味のチーム。打席に入ったどの選手も、ファーストストライクからスイングしていく姿勢が印象に残った。

「決勝戦は負けてしまいましたが、最後まで東日本ポニーらしい野球が貫けたとは思います。“攻撃野球”が持ち味で、それしかやって来なかったチームですから(笑)。夏の大会は各チームが攻撃力を高めてくるので、もっと打たないと勝てないということです」

ポニーリーグ1年目から存在感を示すことはできた。しかし、「チームスポーツは勝たないと面白くないと思います」と、悔しさを滲ませながら今後への思いを語ってくれた。

「育成は最も重要ですが、大会出場するなら“勝利”という結果も出さないといけない。試合で複数安打を放っても、チームが負ければ心から喜ぶことはできません。各選手がしっかりレベルアップすることで、“勝利”という最大目標が近づくと思います」

「社会に出れば全てが勝負なので、人間的成長を考えても勝敗にこだわりたい。でも負けたからダメではなく、『(負けた時に)次はどうすれば良いのか?』を追求することが重要。それができていれば、必ず成長していけると思います」

「楽しく、良い夏でした」と東京日本橋ポニー・緒方将介監督は清々しい表情だった。

~大会中に大きく成長する選手も多い

初優勝を果たしたSKポニー、加入初年度から暴れた東京日本橋ポニー。ポニーリーグに新しい風が吹いた今大会、選手を最も近くで見守り続けた本部審判部長・手塚均氏にも大会を振り返ってもらった。

「ポニーリーグに審判として関わって20年近くになりますが、時代の変化は感じます。やはり最近の選手達は少し大人しくなっている部分はあると思う。だから監督・コーチは、選手達との接し方に非常に気を配っているように見えます」

かつては自我が強く、ヤンチャな雰囲気の選手もいたという。しかしそういった選手達が激減、「監督・コーチが率先して声を出して動いたりしている場面が多い」という。

「選手自身が自分で考えて、全ての言動に責任を持ってプレーできるのが理想だと思います。しかし、そういうことが難しくなっているのが現実。もちろん中学生年代はまだ子供ですから、監督・コーチという大人の言動を見て気づくことも多いと思います」

「監督・コーチは普段から選手達と接しているので、よくわかっているのでしょう。本当に大変だと思いますね」と笑顔を見せる。そして、「大会中に信じられないほど成長するチーム・選手もあるので、そういうのを見れるのは嬉しいですね」と審判としての喜びも語ってくれた。

「選手達の成長が見られる」と本部審判部長・手塚均氏は優しい眼差しで語る。

~この先の人生に繋げるためにもポニーリーグは進化を続ける

「ポニーリーグが常に進化を続けているのがよくわかる」と満足そうな表情を見せてくれたのは、日本ポニーベースボール協会理事長・広澤克実氏だ。開会式から決勝まで、連日、会場へ足を運んで選手達の必死な姿を目に焼き付けていた。

「伝統ある“古豪”チーム、そして新しくポニーリーグに加入した新しいチーム。それぞれ異なったバックグラウンドを持ったチームが頂点を目指して必死に戦う姿は、観ていて胸が熱くなりました。全ての試合が新鮮に感じましたし、最後まで諦めない姿勢や気持ちが伝わってきました」

「ここ数年で最高の入場行進だと感じました」と開会式の挨拶で語った。新旧様々なチームが堂々と行進する姿を見て「頼もしく感じた」と振り返る。

「ポニーリーグには各種大会がありますが、メインイベントは全日本選手権だと思います。3年生から1年生まで全ての選手が春から経験を積み、万全な状態で挑む大会です。入場行進で選手達の自信に溢れた表情が非常に印象に残りました」

「全日本選手権は重要な大会だが、大事なのはこの先の人生だ」と付け加えることも忘れない。

「中学年代で伸びる選手、伸びない選手は必ず存在します。でも高校へ行けば伸びるかもしれない。だからこそ次のカテゴリーへ健全な身体、精神で送り出してあげたい。それこそがポニーリーグの存在価値だと思っています」

「次のカテゴリーにしっかり送り出したい」と日本ポニーベースボール協会理事長・広澤克実氏。

「ポニーリーグが終着点ではない」という思いを、関係者の誰もが抱いているのが伝わってきた。監督・コーチは選手達に寄り添った指導・育成を行い、その結果として成長速度が早まるという好循環に繋がっている。

ポニーリーグ・全日本選手権が盛り上がる理由は、選手達の成長が大会中においても手に取るようにわかるからかもしれない。来年はどのような好勝負、そして成長物語を目にすることができるのか、今から楽しみで仕方がない。

(取材/文/写真・山岡則夫、取材協力/写真・日本ポニーベースボール協会、岸本純)

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