2年目のジャパンサマーリーグ、今年は菊池雄星投手の「K.O.H」からコーチを派遣
広尾晃のBaseball Diversity
2022年から沖縄県で始まった「ジャパンウィンターリーグ(JWL)」は、「陽の目を見ない場所に光を」をスローガンに世界中から集まったプロ、アマの野球選手に約1か月にわたり、実戦の機会=リーグ戦を提供している。

飛躍の場としてのジャパンウィンターリーグ
NPB球団が春季キャンプで使用する一級の球場を舞台として、集まった選手はチームに分けられて連日リーグ戦を展開する。参加費は個人負担。主催者はホテルと食事、球場までの移動手段を提供する。NPBやMLBをはじめとするプロ野球との契約を目指す選手、自らの力試しとしてリーグ戦に参加する選手。また社会人野球チームは、若手選手の実戦の場を求めて選手を派遣してきた。
2年目の2023年からは、NPBやKBO(韓国プロ野球)、CPBL(台湾プロ野球)が、実践の場を求めたり、調整を目的として選手を派遣している。16か国から選手が集まっている。NPB、MLBなどのスカウトも集まり、これまで21人の選手が独立リーグ、MLBをはじめとする海外プロ野球と契約している。
リーグ戦では「トラックマン」をはじめとする先進の計測機器で、選手の投球、打撃データを計測。そのデータは契約するプロ野球チームに提供される。いわゆる「リモートスカウティング」だ。さらに、一流のトレーナーが選手のケアを行う。また試合後は「レベルアッププログラム」として、データアナリスト、トレーナーなどによる「座学」も行われる。

高校3年生のためのジャパンサマーリーグ
JWLは、社会人、プロ野球選手などが対象だが、この「高校野球バージョン」として昨年から「ジャパンサマーリーグ(JSL)」が沖縄県で始まった。
高校3年の夏に、甲子園に出場できなかった選手を対象に、さらなるステップアップのため、また「最後の夏を完全燃焼するため」に、リーグ戦をする機会を提供するというものだ。昨年の第1回JSLは、8月2日~6日まで5日間で行われ、全国から37名(県内24名、県外13名)の選手が参加し、3チームに分かれてリーグ戦を行った。
今年は8月17日から21日までの5日間。同じくチームに分かれてリーグ戦を行う。会場は沖縄県のコザしんきんスタジアム。広島東洋カープが春季二次キャンプで使用する一流のスタジアムだ。参加費は、77,000円(税込・昼食付)、宿泊費、交通費は含まない。
JSLは単に「試合をする」だけではなく、以下の3つの先進的なサポートを行っている。
1)ハイレベルなコーチ陣による指導
ジャパンウィンターリーグでも活躍するコーディネーター陣が、選手一人ひとりの挑戦をサポート
2)データ分析サポート
全打席・全投球をトラッキング。数値で自分の強み・弱みを可視化し、短期間で課題を克服
3)レベルアッププログラム
スキルアップ・体づくり・自己分析・スポーツ×キャリア講演などこれからについて考える機会を提供

ジャパンリーグの記者会見
主催者の株式会社ジャパンリーグは、7月27日に記者会見を行った。
鷲崎一誠代表は昨年のJSLの成果として、
「幅広いキャリアのフォローができたというところ、そしてスキルアップの場所として利用していただいたこと。さらに三つ目に(野球を)諦める場所に使っていただいたことの3つが成果だ。
もともと試合に出てなかった選手や、出場したけども初戦で負けた選手などが参加して、十分な出場機会がある中で、野球や野球進路以外のキャリアサポートもできた。野球での進路が決まっている選手たちも一流のトレーナーやコーチの指導を受けながら、次のキャリアのスキルアップの場所として使っていただいた」 と語った。

菊池雄星投手のK.O.Hが参画
今季は、昨年の体制に加え、強力なエキスパートとの業務提携が決まった。
メジャーリーガーの菊池雄星投手が故郷、岩手県花巻市に設立した「K.O.H(King of the Hill)」は、「Physical」「Social」「Mind」「Cultural」という 4つの柱を元に設計された、子どもからお年寄りまで、みんなが集うトレーニング施設。トレーニングのための最新機器や設備だけでなく、メジャーリーグを体感できる展示エリアやカフェエリア、地域交流の場となるコミュニティスペースを備えている。全て屋内のため、天候を気にせず利用可能だ。また投手コーチやトレーナーなどが常駐し、選手を指導している。
鷲崎代表は 「岩手の現地を視察したが、スタッフの皆さんが非常に優秀だった。菊池雄星選手がオフに帰ってきた時にスタッフがしっかりサポートをして自主トレを一緒に行っているというところからもレベルの高さがわかる。今回は『K.O.H』のトレーナーに来ていただいて選手を指導していただく」と話す。
K.O.Hの取り組み

合同会社K.O.Hの共同創業者で代表社員の久野和禎氏は、
「K.O.Hのコーチを派遣する機会をいただきましたことを大変嬉しく思っている。菊池雄星が地元岩手に手がけた当施設は、小中学生の野球スクールの実施、最新の計測機器を用いた元プロ野球選手によるパーソナル指導を展開している。本協定の締結を契機に、今後とも双方の強みを活かしながら取り組みを形にしていく」とコメントを寄せた。
今回、JSLに派遣されるK.O.Hのピッチングコーチ赤上優人氏は、東北公益文科大から2020年育成ドラフト1位で西武へ。2022年に支配下登録され24年に引退。引退後はトレーナーの資格も取得し、K.O.Hでピッチングコーチを務めている。
「私は本格的に投手を始めたのは大学生からで、これから投手に挑戦する選手や投手として成長したい選手の気持ちも理解しながらサポートできるかと思っている。一人一人の課題とか体の作り方に合わせたトレーニングを提案したい。また家や学校に戻ってできる継続できる内容にしたい。このサマーキャンプが高校生にとって成長のきっかけになるように、全力でサポートしていく」と語った。

菊池雄星投手のメッセージ
最後に、菊池雄星投手のメッセージも読み上げられた。
「私たち K.O.Hは、ジャパンリーグが掲げる大きなビジョンと理念に深く共感し、この度パートナーとして歩ませていただく運びとなりました。K.O.Hの根幹には環境が人を育てるという信念があります。選手が夢の実現に向かって本気で挑戦できる環境を作り、その挑戦を支え続けることが未来の野球の発展につながると信じています。
ジャパンリーグ様のプラットフォームは、選手たちが自分の可能性を信じ、未来を切り開くための大切な舞台です。この場所で本気で挑戦した経験は、野球人生において必ず大きな財産になるはずです。私自身もこれまで数多くの挑戦を自ら選び、成功と失敗を繰り返してきました。その一つ一つの経験が今の自分を作っています。
このリーグから一人でも多くの選手が夢をつかみ、いつの日かプロの舞台で共にプレーできることを私自身も心から楽しみにしています。ジャパンリーグが日本野球の未来を支えるリーグとしてますます発展されることを祈念するとともに、K.O.Hもその歩みに微力ながら全力で貢献してまいります」
ジャパンサマーリーグは、高校3年生の「最後の夏」、野球を思い切り「やりきる」とともに、次の展望が開ける絶好のチャンスになるだろう。
