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福岡ソフトバンクホークスジュニア2025年シーズンが始動 12球団初の取り組みを通じて目指す連覇とジュニア世代の改革へ

昨年末の「NPB12球団ジュニアトーナメント KONAMI CUP 2024 ~第20回記念大会~」で優勝を果たした福岡ソフトバンクホークスジュニア。

帆足和幸監督が退任し、新たに昨年まで現役だったOBの嘉弥真新也さんが新監督へと就任した。

加えてチーム改革も行われ、12球団初の試みとしてジュニアチーム選考会前の練習会を4月下旬から開催することも発表した。

アカデミーコーチとして指導を始めたと共に練習会の準備を行っている嘉弥真監督に、現在の心境や取り組みについて伺った。

(取材 / 文:白石怜平、写真:©SoftBank HAWKS)

「いろいろなことにチャレンジしたい」想いから就任

6年間チームを率いた帆足前監督の後任として新監督の座に就いた嘉弥真監督。

現役時代は貴重なリリーフ左腕として通算472試合に登板し、チームの日本一に何度も貢献した。昨季1年間はヤクルトでプレーし、13年間の選手生活に幕を下ろした。

そしてプロ入りから12年過ごしたホークスから引退後すぐにオファーを受けた。当時の心境を明かしてくれた。

「ホークスそして福岡に戻れて嬉しいという気持ちが一番でした。監督というポジションを聞いて『僕ですか?』って思ったのですが(笑)。

でも引退してからいろいろなことにチャレンジしたい想いがあったので、『ぜひお願いします!』とお伝えしました」

自身も父親という立場であり、現役時には野球教室を通じて子どもたちを教える機会もあったことから「子どもたちは元々大好きですし、成長も早いので、教えるのは楽しいなと思っていました」と語る。

復帰後はホークスジュニアの監督以外にも「ホークスジュニアアカデミー」のコーチとして、毎日子どもたちと向き合っている。

「本格的に指導者としてスタートしたので、今はとにかく勉強の日々です。どうやってボールをうまく捕る・投げるといった説明ができるかなどを動画で研究して、自分の子にも実践してみたりもしています。

あとは現役時代から読んでいた体の使い方の本をもう一度見直して、子どもたち向けにどう活かせるかも考えていますね」

なお、現役引退して間もないこともあって実演する機会も多いという。

「見せたほうが伝わりやすいと思うので、常に動ける体の準備をしておかなければいけない意識は持っています」

その言葉通り、3月23日に行われた「SoftBank HAWKS 20th ANNIVERSARY SPECIAL MATCH」にも登板し、130m/hの球で松田宣浩さんを打ち取るなど健在ぶりを見せていた。

3月のOB戦でも130m/hを超える投球を披露した ©SoftBank HAWKS

練習ドリルは自身の知見を交えて考案

早くも12月のトーナメントを見据え、チームとしても改革に着手。ジュニアチームの選考会開催前に、入団を目指す選手向けに練習会を開催する。

12球団初であるこの取り組みは4月下旬と5月下旬の全2回行われ、その間は嘉弥真監督やコーチ陣が作成した練習ドリルを自主練習として実施し、成長を促していく。

加えてホークスジュニアに求める選手像や選考ポイント、過去のジュニア選手との能力比較などの情報も提供され、連覇そして子どもたちの成長に向けた環境が整備されている。

思わず嘉弥真監督も「僕も少年時代にこういう環境でやりたかったので羨ましいです(笑)」とこぼすほどのプログラム。

練習ドリルも自身の知識と子どもたちの将来を考えたメニューになった。

「長く野球ができるようになってほしいので、怪我をしない体づくりと体力・筋力を強化させたいなと。

基本的な体の使い方ができないと、次のステップに進めないと考えています。なので、片足で立ったり踏み出したりする動作をマスターして、技術は次以降のステップにあると思います。トレーナーとも一緒に連携して構築しましたね」

今年から子どもたちへの指導をスタートした嘉弥真監督 ©SoftBank HAWKS

12球団初、データ計測を通じた可視化も

もうひとつ、12球団初の取り組みがある。

それは投球や打球のデータを測定するポータブルトラッキングシステム「Rapsodo」を用いた計測で、ジュニア世代からデータを取得することで成長を可視化していく。

データ集積や解析においては12球団でも最先端を走ると言っても過言ではないホークス。ジュニア世代に向けて実施する背景や意義について嘉弥真監督はこのように説明した。

「一軍のデータ班とも話していたのですが、この世代のデータがないのでチームとして蓄積させたい考えがあります。

ジュニア世代でもデータを通じて傾向が分かっていけば、子どもたちの成長過程も把握しやすくなりますし、『だからあの選手が選ばれたのか』といった基準も見えてきます。

プロではしっかりと計測をしていますが、子どもたちに向けてはゼロから溜めていくのでこれから楽しみです」

また、球団の人脈を活用して国際的な比較を行うことも視野に入れている。自身も現役時代、共に鷹の投手陣を支えた助っ人投手との連携についても明かしてくれた。

「実はバンデンハークがオランダで少年野球の指導者をやっていて、トラックマンとかラプソードのデータを持っていると聞いたので、それを共有してもらおうと思っています。

同年代の数値の参考にするのと同時に、日本の子たちが海外とどのくらい違いがあるのかも比較できますので」

工藤公康さんに教わったことを次の世代に

今年から小学生たちを指導する立場となった嘉弥真監督。指導者となり、参考にしている人物を一人挙げた。

「工藤(公康)さんですね。選手生活を長くできたのは間違いなく工藤さんのおかげです。特に下半身を強化することや体の使い方についてをたくさん教わることで、数を投げなくても球速やコントロールも向上しました。

子どもたちにもトレーニングは絶対大事というのを伝えていきたいですし、工藤さんには『練習に来て指導してもらえませんか』とお願いもしていて、『都合合えば行くよ』と言っていただけたので、ぜひグラウンドに来てほしいです」

今もマウンドで躍動する姿を見せる工藤公康さん(3月OB戦にて)©SoftBank HAWKS

自身は投手を担当することから、工藤さんに以前メニューの相談をしたことがあったという。自身が教わったことをまさに子どもたちへ展開しようと考えている。

「キャンプの時に工藤さんが僕たちに課してくれたメニューを負荷を落としてやってみようかなと。自転車のチューブを引っ張るメニューがあるんですけれども、それはどうですかという話を直接相談しました。

そしたら、『あれは負荷強すぎると思う。みんな野球選手だからやったけど、子どもたちには重すぎるからチューブの本数を減らしてやってみたらどうだろう』とアドバイスをいただきました」

自身の経験から自転車のチューブを使うことに意味があると述べ、他のメニューも応用できないか検討を重ねている。

「それだけでもすぐパフォーマンスは変わると思います。僕が工藤さんにやらせてもらったメニューを活かしたら相当体も強くなると思います。後は首脳陣とトレーナーで協力して量を調整していくのみです」

「もちろん連覇を狙います」就任一年目でのVへ

新年度開始からすぐに動き始めたホークスジュニアの2025年。嘉弥真監督は、現役時代も共に過ごし兄貴分だった帆足監督からそのポジションを受け継いだ。

「昨年のトーナメントも見ましたけれども、みんな上手いです。帆足さんが教えてるような子を探して育てるということにはプレッシャーもありますが、やってやるぞという気持ちです」

今年から新たな挑戦が始まった ©SoftBank HAWKS

コーチは昨年優勝の味を知る若林隆信コーチに加えて、・三代祥貴(よしき)コーチが新たに加わった。打撃や守備のメニューは2人に任せながら、この一年を共に戦い抜く。

新監督として今年のホークスジュニア、そして未来の野球界を築き上げる子どもたちへの想いとともに抱負を述べて締めた。

「もちろん連覇を狙います。子どもたちのレベルアップをサポートしながら、野球人としての成長を促したいです。挨拶からしっかりできるように教えながら、グラウンド内外で僕も選手たちと成長していきたいです」

ホークスが新たに切り開くジュニア世代の育成改革と共に、嘉弥真監督の第二の人生がスタートした。

チームそして監督としての成長過程を今後も追い続けていく。

(おわり)

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