目指すは「アメフト界の浦和レッズ」。Club TRIAX調布、地域を巻き込む戦略
Club TRIAX調布は、2000年に発足した社会人アメリカンフットボールクラブだ。
昨年、医療・介護・福祉を手がける医療グループ「研精会グループ」とスポンサー契約を結んだことをきっかけに、チーム名に「調布」を加え、調布市がホームになった。
長年ホームタウンがなかったクラブが、研精会グループとの縁で地域に根を張り始めたのだ。
今回は、Club TRIAX調布のGM 信太 隆(しだ・りゅう)氏、研精会グループの理事長 石坂 真一郎(いしざか・しんいちろう)氏、執行役員の諏訪 智(すわ・さとし)氏に話を聞いた。

地域を巻き込む「おもろい」チーム、Club TRIAX調布の現在地
Club TRIAX調布は2000年、3つのチームが合流して創設された。その後さらに3つのチームが加わり、現在選手の平均年齢は28歳、選手とスタッフで総勢90名を越えるメンバーが所属している。
設立当初はXリーグ3部相当の「X3」からスタート。2回の昇格を経て、現在は「Xリーグ1」で活動している。
Club TRIAX調布は「おもろいこと」に積極的に挑戦する。今年4月にはメキシコのチームと対戦し、来年4月にはカナダのチームを迎える計画だ。
アメフトの国際親善試合はとても珍しい。勝敗だけでなく、常に新しい挑戦を仕掛け続けるのがこのチームの気質なのだ。
もちろん課題もある。今でこそ調布をホームタウンとしているが、長年ホームタウンがなかった。
資金面でも余裕があるとは言えない状態だ。「まだまだスポンサーのご支援を必要としている状況」と信太氏は率直に語る。
「我々は本当に今までホームタウンがない状態で、設立時の河川敷で活動していたノリの延長でやってきたところがあった」と信太氏は語る。
選手たちの多くは目の前の競技に集中するあまり、チーム運営やスポンサーとの関係にまで意識が向きにくかったという。
「自分たちはスポーツをするんだ。スポンサー集めやチームの認知度を上げる活動は、僕らの仕事ではない、と選手が思っていても不思議はない」と、スポンサーの立場から諏訪氏は語る。
そんな状況に転機をもたらしたのが、研精会グループとの出会いだった。

支援の背景と狙い——研精会グループの視点
研精会グループは、2025年からClub TRIAX調布を支える。東京・神奈川で医療・介護・福祉の3分野を展開し、調布と稲城で精神科病院を2つ運営する医療法人だ。
理事長の石坂氏と執行役員の諏訪氏は中高からのアメフト部仲間で、石坂氏がクォーターバック、諏訪氏がセンターを務めていた間柄だという。
その後、公認会計士になった石坂氏は、経営に課題を抱えていた研精会に移り改革に携わった。
精神障害者福祉には既存の枠にとらわれない発想が必要と考え、独自のキャリアを歩む諏訪氏を誘い入れた。
2人の共通の大先輩がClub TRIAX調布に関わっていた縁で信太氏と出会い、スポンサーになったという。
もちろん、スポンサーシップ締結の理由は人的なつながりだけではない。
「同じチームを応援する、我々は味方だよね、という意識が高まれば自然と研精会と地域とのつながりも強くなるだろう、と考えたのです」と諏訪氏。
念頭にあったのは、「ハートフルクラブ」で地域と強く結びついてきた浦和レッズだ。浦和レッズのアメフト版をつくるという。
地域との連携は医療の観点からも重要だ。
「最近の精神科の患者さんの入院期間は短く、退院後は地域に戻る。街全体が患者さんの日常生活をありのままに受け入れてくれることが、病院としても患者さんとしても非常に重要」と諏訪氏は語る。
もっともスポンサーをしていく中で、違和感を覚えたこともあったという。
「試合後の挨拶やスポンサー感謝の会で、なんで俺はこの人と話さなあかんねんという表情をされる選手も中にはいた」と諏訪氏は振り返る。
選手はスポンサーが自分たちのチームにとってどれだけプラスになっているかに関心が向きにくい。それでも「これからだと思っている。伸びしろがあるから」と諏訪氏は前を向く。

盆踊り会場のステージに立った選手たち
選手たちは当初、地域活動に消極的だった。「土曜日の半日以上を練習に費やし、さらに別の機会でスポンサーのイベントに出かけていくことに、足が重くなっていた」と、信太氏は分析する。
「同じチームを応援している」という一体感が広がってこそ、地域とのつながりも強くなる。しかし、Club TRIAX調布を知る人はまだ少なく、その状態には程遠い。
そこで諏訪氏は、認知度向上と選手の意識改革を狙い、今年8月のつつじヶ丘商店街の夏祭りにClub TRIAX調布を誘った。
まずは選手の参加人数が読めなくても対応しやすい福引きブースの手伝いを商店街に相談。快諾を得ると「せっかく選手を呼ぶなら」とステージでのアピール時間も交渉し、5分程度の出番を確保した。
演出は「本当は口を出したかった(笑)」というが、あえて選手たちに委ね、黙って見守ったという。
当日、選手11名がステージに立ち、盆踊りやアメフトのタックルを模したコントを披露した。
観客からは「試合見に行ったんですよ」といった声がかかり、選手たちは確かな手応えを得た。
一方で、自分たちのネタがアメフトを知っていることが前提となっており、反応が返ってこなかった場面もあったという。
「まだまだアメフトを知らない方が多い」——その気づきから、選手からは「芸を磨いて再チャレンジしたい」との前向きな言葉が出た。
今年はさらに、9月27日の研精会グループの創造農園祭りにブースを出展して盛り上げ、10月の金子厳島神社例大祭で神輿を担ぐ予定だ。

変わり始める選手たちの意識
信太氏は、選手への伝え方の難しさをこう語る。選手の半数近くが毎年入れ替わり、平均年齢も下がる中、スポンサーに支えられているからこそチーム運営が成り立つことを理解させる必要がある。
「僕らのような、おじさんが上から言っても令和の若者には響かない」と信太氏は笑う。
そこで、チーム加入2、3年目以降の中堅選手にまず自覚を持ってもらい、周囲へ広げてもらうことを重視しているという。
その効果は少しずつ表れている。あるスポンサー企業が運営する障がい者施設の入居者がグラウンドを訪れた際、選手たちは最初こそぎこちなかったものの、次第に歩み寄り、サイン会や記念撮影を楽しみ始めた。
「思った以上にしっかりその場を楽しもう、盛り上げようというところができていた」と信太氏は目を細める。
諏訪氏は、スポンサーやファンとの向き合い方についてこう語る。「大事なのは、選手が楽しむことだと思う。楽しい活動を体験して、それを後輩に伝えていければ、いい循環になっていく」。
石坂氏も大きくうなずく。「調布は明確にスポーツを応援する街だというスタンスを持っている。調布市というところと掛け算をして、ただのアメフトチームが調布にあるのではなく、なんか変わったおもろいチームが調布にあるんだぞというところを、口コミで広げていきたい」と続けた。

次のホームゲームへ——地域とともに歩む
研精会グループとの新しい取り組みは、既に企画されている。
今年11月と12月、ホームタウン調布にあるアミノバイタルフィールドで試合が開催される際、観客をもてなすイベントを開催する計画だ。
会場に隣接する特設スペースでファンイベントを行う予定で、「調布のアメリカンフットボール祭り」のような一日になりそうだ。
Club TRIAX調布は、心強い伴走者 研精会グループとともに、調布の街を巻き込みながら、これからも「おもろい」を巻き起こしていく。

(取材・文/土屋明子 写真提供/Club TRIAX調布)
