『パーフェクトゲーム』は、日本野球を次なるステージへ誘う

『パーフェクトゲーム』(以下PG)による、『Perfect Game 10U Pre tournament in Wakayama(パーフェクトゲーム・プレ・トーナメント・イン・和歌山』が開催された。

7月22-24日に和歌山県橋本市の“TSUTSUGO SPORTS ACADEMY“で行われたイベントには、日本39名、インドネシア12名、フィリピン14名の10U(アンダー10歳)世代の選手達が集まった。

国や地域を超えての交流は、今後の人生においても必ずプラスになるはずだ。

~自分自身で考え、アイディアを出すことの重要性

MLBドラフト指名選手の9割以上を輩出するPGは、世界最大かつ最高峰の青少年野球スカウティング組織だ。今回イベントに全面協力をしたポニーリーグの和歌山橋本Atta boys(アラボーイズ)代表・筒香裕史氏に話を伺った。

「選手達が自分自身で考え、アイディアを出しながらプレーすることが大事。大人になった時、野球をやったことがプラスに働いて欲しいからです。考えることを重視する我々が、PGの理念に賛同するのは必然でした」

ドミニカ共和国を訪れた際、選手達が年少時から自ら考えてプレーする姿を見て衝撃を受けた。「身体能力が飛び抜けた選手達が考えてプレーしているのに、今のままでは敵うわけがない」と思った。

「現地の子供達は、常に生き抜くために頭を使う。食べ物がなければ、木に登ったりしてでも探す。身の回りの物を使っての遊びも思い付く。常に考え続け、たくましく生きる姿を見て、我々も見習うべきだと感じました」

「匹敵する人材を育てたい」と思い、チームとアカデミーを立ち上げた。実弟・筒香嘉智(DeNA)も全面的に賛同、“TSUTSUGO SPORTS ACADEMY“建設にも尽力してくれた。そしてポニーリーグを通じて、PGとも強力タッグを組むこととなった。

“TSUTSUGO SPORTS ACADEMY“は、日本屈指の野球施設だ。

~能力の数値化によって現在位置をイメージできる

「PGでのデータ収集(“ショーケース”)で現在地を知り、上達への方法を考えることができます。また世界中の選手達のデータを知ることもできるので視野を広げられ、目標を大きく持てる。今回も初日に全選手のデータ収集を行いました」

PGは“ワールドシリーズ(野球大会)”、“ショーケース”、“ダイヤモンドキャスト(アプリ)”の3本柱から成る。中でも“ショーケース”は野球界へ大きな影響を与えている。2024年MLBドラフト指名選手中94%がPG出身。累計2,384名のMLB選手、15,804名のドラフト指名実績があるという。

「今回もデータを参考にさせていただいた。『米国のトップ選手はこういった記録を出している』ということが数値で理解できます。プレーは実際に見られなくてもイメージしやすくなる。選手達は大きな刺激を得て、明確な目標を持つことができます」

初日に行われた“ショーケース”では、60ヤード走、投手の球速、捕手の捕球から2塁までの送球タイム、内野手の送球速度(ショートから1塁)、外野手の送球速度(ライトから3塁)、そして打球速度を全選手で計測した。

「米国での“ショーケース”は13歳頃から本格化するので、10U世代に関しては15名分程度のデータしかなかった。しかしそれでも、日本の数値トップ選手が米国の15名には届いていません。現実を知らされたと共に、日本選手の伸び代や可能性も感じました」

ポニーリーグの和歌山橋本Atta boys(アラボーイズ)代表・筒香裕史氏は、日本野球の大きな可能性を語ってくれた。

日本における“ショーケース”は始まったばかりだが、今後へ向けての課題や改善策について具体的なアイディアも持っている。「個人のスキルを上げることに特化したい」と強調する。

「日本人は団体で競技したり生活するのは優れています。チームワークの良さや献身性は世界一だと思います。しかし個人のスキルを上げることに関しては、少し遅れていると感じる時もある。それが“ショーケース”の数値にも表れているのではないでしょうか」

「『個人の能力を高めてから、技術や戦術を習得するという順番が良いのでは』と思います。ドミニカ共和国や米国では普通に行われていることですが、日本は逆の傾向が多い気がする。能力を伸ばせて、野球選手としてもスケールアップできる方法だと感じています」

「『強く投げる、遠くへ飛ばす、速く走るといったことのスキルを上げるのが大事』と再確認できました」とも語る。現時点で数値が米国選手に劣るのは想定内、今後の可能性は大きいということだろう。

“ショーケース”において参加選手の詳細データを収集した。

~コミュニケーション能力は“生きる力”

2-3日目は各国選手をシャッフルしてのゲーム形式が行われた。“ショーケース”で収集した能力値によってチーム編成し、「実戦経験と共に、コミュニケーション能力向上を図る試み」だった。

「各チーム監督もインドネシア、フィリピン、日本の指導者に任せた。子供達はチームメート同士だけでなく、監督ともコミュニケーションを取る必要がある。言葉がわからなくてもジェスチャー等を駆使して、懸命に会話しようとしていた。『どうすれば考えが伝わるのか?』を各自がしっかり考えていました」

「思っていることを話せる、意見を言えるようにすることが大事です。絶対に必要となる資質で、受け身では身につかない。今回のイベントには多国籍の選手達が集まるので、最大のチャンスだと思って混成チームの形にしました」

知らない選手と同チームになった時に大事なのは、「お互いが何を考えているか?」を理解し合うこと。そのためには積極的に会話を図らなくてはならず、筒香氏が“生きる力”と呼ぶコミュニケーション能力が欠かせない。

「時間と共に、お互いがどんどんコミュニケーションを図るようになりました。野球のゲームとしても成り立っていましたし、見ていて面白かった。こういった試みは今後も継続していきたいと思います」

「言葉が通じなくても必死にコミュニケーションを取ろうとする姿が素晴らしかった」という。

「アジアの国々は日本野球を真似しようとしていて、教材になっている部分があります。手前味噌かもしれないですが、アジアにおいて日本は野球のリーダーだと思ったので、『責任がある』とも感じました。日本のみならずアジア全体の底上げができるように、責任を持って舵を切っていかないといけません」

3日間のイベントを通じ、日本野球界に課された責任も痛感したという。野球界におけるアジアの牽引役として今後のさらなる成長・発展を誓い、「PGを徹底活用して、選手の能力を高めたいです」と希望に満ちた言葉をくれた。

「米国の“ショーケース”に準じつつも、日本独自の指標を作り上げていくのも良い。例えば、立ち幅跳び、柔軟性など、日本人特有の動きも組み込めればと思います。米国から『日本での試みを参考にしたい』と言われるようになれれば良いですね」

「PGが野球界のスタンダードになれるよう、皆さんの力を借りながらやっていきたいです」と付け加えてくれた。

全ては選手達が成長して日本球界のレベルを高めるため。PGが日本の野球をまた1つ上のレベルに連れて行ってくれる気がする。

(取材/文・山岡則夫、取材協力/写真・パーフェクトゲーム、岸本純)

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