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Baseball5「Spirit Bonds」競技や地域を超え描かれる絆は“競技への情熱”が起点に

現在、世界的に普及が進んでいるベースボール型アーバンスポーツ「Baseball5」。

世界80ヵ国以上で行われており、日本でも授業や体験イベントなどを通じて認知度が上がっている。

競技の普及活動を精力的に行っているチームが「Spirit Bonds」。2011年に日大三高が全国優勝した時の副主将・寮長でBCリーグ・埼玉武蔵ヒートベアーズなどでも活躍した宮之原健選手が立ち上げた。

選手たちの強化のみならず競技普及にも独自の工夫を凝らしており、競技への情熱を起点にその輪を広げている。今回はSpirit Bondsが行ってきた数々の普及活動に迫った。

(取材 / 文:白石怜平、表紙写真:チーム提供)

情熱と結束でBaseball5に打ち込む

「Spirit Bonds」は昨年4月に発足したチームで、現在代表を務める宮之原健が中心になって創設した。

宮之原は野球選手として活躍し、Baseball5では22年に日本代表として日の丸も背負うなど、ベースボール型スポーツを現在も極めているアスリートである。

熱い気持ち・強い魂を込めて全てに臨む”Spirit“、”結束”・絆”を表すBondsを合わせたチーム名の通り、オレンジに輝くユニフォームはまさに宮之原の情熱を象徴している。

情熱と結束などが結集した「Spirit Bonds」のメンバー

この情熱を形にしていきチームは瞬く間に拡大。

昨年は15歳以上のオープンの部に加えて、9月下旬にはユースチーム(15歳から18歳までが対象)の「Spirit Bonds YAMASAKI」も立ち上げた。

両チームともに今年1月の「侍ジャパンチャレンジカップ 第2回 Baseball5 日本選手権」でベスト4入りする快挙を成し遂げた。

現在も宮之原は22年以来の日本代表入りを本気で目指しているとともに、チームも個々が日本代表入りを目指して日々鍛錬を重ねている。

宮之原の情熱がチームを牽引している(本人提供)

都内を拠点に練習を続ける傍ら、宮之原はじめチーム全体が注力しているのが普及活動である。23年の後半からは授業としてBaseball5を展開し、小中学校や保育園を回っている。

「自分たちで考える力も養えるので、Baseball5は教育にとってもすごくいい教材なんです」

教えた子どもたちが将来Baseball5を始めると共に、学校教育の現場でも普及できるよう現在もメンバーと活動を続けている。

チームの冠大会を発足、地方展開も

加えて今年から、普及活動の一環で新たな取り組みがスタートした。それが「スピボン杯」である。チーム名を冠した大会は、宮之原のある想いが込められている。

「Baseball5の魅力を様々な世代の方々に実際にプレーすることで感じていただく。また、この競技のファンを増やしたい。そんな想いから大会を企画しました」

各回ごとにテーマをそして地域を変えて、大会が行われてきた。

3月に行われた第1回は「老若男女 / 初心者の方でも楽しめる」「参加者全員が輝ける日」とし、10代から70代の100名以上が参加。

日本選手権さながらのBGMと選手コールを背に全員が試合に出場し、その言葉通り全員がスポットライトを浴びた。

チームの名前を冠にした「スピボン杯」が3月からスタートしている

5月の2回目は、「教員」にテーマを設定。宮之原が現在小学校の教職員を務めている縁から、教員の方々同士で競技を体験する機会が実現した。教員がBaseball5を行う意義をこのように述べている。

「Baseball5が発展していくには、学校教育での理解&導入が不可欠と考えました。そのためにまずは、現役の教員のみなさんにプレーしていただき、『このスポーツの魅力を肌で感じていただきたい!』そんな想いで企画しました」

そして、スピボン杯は首都圏を越え全国へと展開を図り始めた。8月には富山・愛知の2県で開催。Baseball5を各地域に根付かせたいという想いなどから働きかけ、開催に至った。

両地域で開催した際の大きな特徴は、ソフトボールチームが多く参加したこと。JDリーグなど現役選手も加わり、もうひとつのベースボール型スポーツを体験した。

8月末に行った愛知の安城市では、全日本大学女子ソフトボール選手権大会も同時期に行われていた。

Spirit BondsをきっかけにBaseball5が加わることで、地域スポーツの活性化をさらに促進する機会となった。

富山県(写真上)そして愛知県(同下)にも進出した(チーム提供)

準硬式野球界に“二刀流”の可能性を照らす

この普及活動はスピボン杯にとどまらず、団体との結びつきも強めている。

6月にはある団体と手を組んで競技の浸透を図った。それは、「東都大学準硬式野球連盟」と協力してのイベント開催である。

日々真剣に野球へと取り組む学生たちの可能性をさらに広げるべく、大学3年生250名の準硬式野球部員が参加し行われた。

「準硬式野球部の大学生は、ここまで野球を続けているという高い技術を持ち合わせています。そんな大学生だからこそBaseball5に取り組んでほしいと考えました。

また、準硬式野球部のみなさんは日頃から大学卒業後のキャリアなど将来を見据えた活動をしているので、その力にBaseball5がなれたらと思いました」

準硬式野球部によるBaseball5の体験機会を設けた

このタッグが実現したのも宮之原の情熱と築いた縁からだった。東都大学準硬式野球連盟の杉山智広理事長は宮之原にとって日大三高の大先輩。

宮之原は2011年、杉山理事長は01年に甲子園全国制覇を果たした時のメンバーという大きな共通点があった。

宮之原は杉山理事長を始めとした連盟と協力しながら推進していく中でBaseball5の魅力や可能性など強い想いを伝えた。

杉山理事長も「Baseball5を盛り上げたい」と快諾し、準硬式野球との“二刀流”での活動が晴れて実現した。

「準硬式で野球をやっている人たちもこの競技の楽しさを感じてもらい、Baseball5をスタートするきっかけになってくれたらという想いです。

それが二刀流でもいいですし、自分たちでチームを結成しても面白いと思います。

また、選手だけではなくマネージャーの方たちにも体験してもらって、『もう一度フィールドに立ちたい』と思ってもらえる可能性も秘めた日にしたいと考えていました」

野球とBaseball5の二刀流の可能性が広がった

体験交流イベントが行われたこの日は、約250人の部員が参加。同じベースボールをやっているからか、軽快なボールさばきを見せるなど初めてとは思えないプレーが続出した。

宮之原も選手たちの動きを見て、あるテーマを持って視察していたことを明かしてくれた。

「もう一つのテーマとして、準硬式野球でプレーしている選手からBaseball5との二刀流を発掘することにありました。そのため、Baseball5に意欲がある選手や、いい動きをしている選手をよく観察していましたね。

スピボンメンバーも、準硬式の選手に向けてこれまでみんなが培ったBaseball5の技術を伝えたり、試合では審判をしたりして活躍してくれました」

現在も準硬式野球部との関わりを続けており、支援を行っている。競技拡大を視野に入れた取り組みを行なっていることと、宮之原は述べた。

「来年1月の日本選手権に出場していただき、共に高め合えるBaseball5選手をこの東都大学準硬式野球連盟から輩出することです。チーム作りのサポートをして、合同練習や試合を今後もやっていく予定です」

地域そしてカテゴリ単位で普及を進めているSpirit Bonds。Baseball5を通じた絆はより速さを増して強固になっている。

(おわり)

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