北海道と沖縄、甲子園に出場できなかった高校3年生のために行われた、2つのリーグ戦
広尾晃のBaseball Diversity
第108回全国高等学校野球選手権大会、つまり今夏の夏の甲子園に出場したのは49校、日本高野連加盟の硬式野球部は3746校だから、出場できたのは1.3%、残りの98.7%の高校の野球部員は、甲子園を見ることなく敗退した。
「甲子園に出たかった」「もっと野球がやりたかった」など、高校野球生活に後悔の念を持つ高校3年生は多い。そうした選手のために、北海道と沖縄で、2つのリーグ戦が行われた。
いずれも参加費は個人負担で、決して安価ではないが、高校の野球生活の最後の機会として、また、大学など次のステージに進むためのステップとして、多くの高校生が参加した。
LIGA Summer Camp 2026
8月2日~10日 リーグ戦会場:北海道新十津川町、栗山町、北広島市
参加者 56人
主催者 一般社団法人 Japan Baseball Innovation
今年で3回目になる。主催するJapan Baseball Innovation代表の阪長友仁氏は、このコラムでも何度か紹介してきたが、全国で高校野球のリーグ戦、Liga Agresivaを展開している。
このリーグ戦は、球数制限、原則として全員出場などユニークなルールで行われる。単に試合をするだけでなく、チームメイト、相手チームの選手、審判、競技そのものをリスペクトする「スポーツマンシップ」を学ぶことになっている。

スポーツマンシップの学び
今夏のLIGA Summer Campにも、Liga Agresiva参加校の選手も参加しているが、それ以外の選手も含め、リーグ戦の前に、日本スポーツマンシップ協会の中村聡宏代表理事(立教大学スポーツウエルネス学部 准教授)の講義を受けることになっている。
初めてスポーツマンシップの意味、意義を知る選手も多いが、この講義を受けることで、以後のリーグ戦での選手のプレーやふるまいが、大きく変わることになるのだ。
LIGA Summer Campでは、毎年、NPBで活躍した元プロ野球選手がアドバイザーとして参加しているが、今年は、元中日投手で現侍ジャパンコーチの吉見一起氏と、千葉ロッテマリーンズで投手として活躍した渡辺俊介氏が参加した。
試合後は、スポーツマンシップの考え方に基づき、両チームの選手が互いのプレーを評価し、讃えあう「アフターマッチファンクション」が行われた。

4チームでのリーグ戦
それぞれ14人の選手が、ESTRELLAS、TIGRES、AGUILAS、LEONESの4つにチームに振り分けられた。この4チームが連日リーグ戦を行った。
チームには、大学生の「コーディネーター」が1人就く。いわば「監督」の役割で、スタメンを決めたり、試合で采配を振るったりする。ノックを打つなど練習もサポートする。指導者と言うより選手の兄貴分と言う位置づけだ。コーディネーターの中には過去にLigaサマーキャンプでプレーし、その後大学に進学した「先輩」もいる。
また試合運営には、高校生、大学生のボランティアが多数参加している。

別天地の爽やかさ
試合は前半が新十津川町の新十津川町ピンネスタジアム、後半が栗山町の栗山町民球場。いずれも天然芝で手入れが行き届いた美しい球場だ。
この球場で4チームは午前1試合、午後1試合を行う。
北海道も温暖化の波が迫っているが、最高気温は高い日でも30度前後。朝方は15度近くまで下がり、日中でも25度前後の日が多い。猛暑日、酷暑日が続く本州以南と比べれば「別天地」の爽やかさだ。
エスコンフィールドでの最終日

最終日は、北広島市のエスコンフィールドHOKKAIDOで、ESTRELLAS対TIGRESのプレファイナル戦の後に、AGUILAS対LEONESのファイナルゲームが行われた。
選手たちは美しいグラウンドに降り立つと、上気した表情で体を動かす。
ファイターズの選手がプレーするダイヤモンドでノックを受ける。投手はブルペンで、投球練習をする。
この日は快晴で、巨大な屋根は開放され、まばゆい陽光がグラウンドに差し込んだ。
プロ野球の公式戦と同様、巨大なスコアボードには選手の名前が表示される。場内アナウンスは、新十津川、栗山のグラウンドと同様、ボランティアの女性スタッフが務めた。
球場には選手の家族も詰め掛け、選手のプレーを見守った。 ファイナルゲームは12対6でAGUILASが勝ったが、試合終了後は勝者だけでなく、4チームの選手がマウンドに集結して、互いの健闘を讃えあった。
期間中にすっかり仲良くなった選手たちは、口々に「最高の体験だった!」と言い合った。

Japan Summer League 2026
8/17~21
リーグ戦会場:沖縄県沖縄市
参加者 36人
主催者 株式会社ジャパンリーグ
今年で2回目。主催者のジャパンリーグは、2023年から毎年、11月、12月に「ジャパンウィンターリーグ」を行っている。代表取締役の鷲崎一誠氏は、慶應義塾大学野球部で内野手だったが、出場機会に恵まれず、卒業前にカリフォルニアのウィンターリーグに参加し、野球をやり切った。卒業後はファーストリテイリングに入社したが退社して、2023年に沖縄県で「ジャパンウィンターリーグ」を立ち上げた。「陽の目を見ない場所に光を」をスローガンに、日本、そして世界の野球選手に活躍の場を提供してきた。
1年目は高校生、大学生も参加していたが、2年目にNPB球団の選手派遣が決まり、プロアマ規定で学生選手の参加ができなくなった。
高校生にも、活躍の舞台を与えるべく、昨年から「ジャパンサマーリーグ」を立ち上げた。
こちらもスローガンは「陽の目を見ない場所に光を」。夏の甲子園で活躍できなかった高校3年生に、思い切り野球をする機会を与えよう、というコンセプトだ。

本格的な球場で
選手たちの活躍の舞台は、沖縄県沖縄市の「コザしんきんスタジアム」。
毎年、広島東洋カープの一軍が二次キャンプを行う球場だ。沖縄県では、那覇市の「沖縄セルラースタジアム那覇」につぐ規模の球場だ。 また、隣接して人工芝の室内ドーム「コザしんきんドーム」もあり、選手の練習環境としては理想的だ。
亜熱帯に属する沖縄県は、8月の最高気温が35度に上るが、朝夕は涼しい。またスコールのような通り雨があり、そのあとは涼しくなる。筆者は関西から訪れたが関西よりもはるかに過ごしやすいと感じた。

コーディネーターがサポート
参加選手した36人の選手は、Rocks、Strings、Eisaの3チームに分かれ、5日間のリーグ戦を戦った。
チーム全体を指導するのは、ヘッドコーディネーターの渡辺龍馬氏。社会人や海外での野球経験も長く、野球ポーランド代表の監督も務めた指導者だ。
また、各チームにはコーディネーターがつき、選手をきめ細かくサポートしている。

パーソナルデータの提供
ジャパンサマーリーグの最大の特色は、高校生の試合のパフォーマンスを弾道測定器「トラックマン」、バットスピードを計測する「ブラスト」で計測して、パーソナルデータとして選手個々に提供していることだ。

試合が終了すると午後は「レベルアッププログラム」と言う座学が予定されているが、この座学でパーソナルデータの理解の仕方、それに基づいたトレーニングの仕方などを、専門家が講義をする。
骨格改善トレーナーの鈴木善雅氏、元ロッテアナリストの星野健太郎氏や渡辺龍馬氏、さらに今回は菊池雄星投手がオーナーのトレーニング施設「K.O.H」のピッチングトレーナーの赤上優一氏が、高校3年生に専門的な講義を行った。
先進のデータ野球について知っている高校生は、ほとんどいない。彼らにとっては初めて聞く話ばかりのようだが、試合後の疲れも見せず熱心に講義を聞いていた。
講義が終わると選手は、星野氏や赤上氏のもとを次々と訪れ、自分のデータの味方を教わり、具体的な目標などのアドバイスを受けていた。試合だけでなく、こうした個別の丁寧なサポートこそが、ジャパンウィンターリーグの最大の持ち味だといえよう。

北海道と沖縄で行われた高校3年生の「最後のリーグ戦」は、特色は異なるが、ともに極めて印象的で、有意義だと感じられた。
