NBAは誰に対してマーケティングをしているのか?

バスケットボールの世界最高峰リーグのNBA(National Basketball Association)。

もともと、日本でも熱狂的なファンが多いプロバスケットリーグですが、2019年に八村塁選手が日本人初のドラフト指名されたことが、若い世代を中心に、多くの人に知られるきっかけになりました。

その他にも、渡邊雄太選手、馬場雄大選手がNBAへ挑戦していること、「楽天」が「NBAと日本国内での独占放映権を獲得」したことや、「ゴールデンステート・ウォリアーズとスポンサー契約」をしたことが話題となりました。

NBAはアメリカ国内の人気はもちろんですが、世界各国で人気を誇る、プロスポーツリーグです。

今回は、「なぜNBAがここまで世界的に人気のリーグになったのか」をマーケティングの観点から、実際の事例を元に考えてみたいと思います。この記事で学べること

✔ NBAの「マーケティングの狙い」がわかる

✔ リーグとクラブのマーケティングの違いがわかる

✔ NBAが実際に行っているマーケティング事例がわかる


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もくじ 

1 NBAは「誰に・何を・売っている」のかをおさらい!
2 NBAの顧客はスポンサーとメディア(放映権)
 2.1 NBAにおける商品 = 試合・選手・チーム
3 NBAが実施しているマーケティング
 3.1 海外スポンサーを獲得するためのワールドツアー
 3.2 スポンサーのニーズを満たすマーケティング
 3.3 メディア業界へのマーケティング
4 まとめ

NBAは「誰に・何を・売っている」のかをおさらい!

まずは、NBAが「マーケティングの基本」となる「誰に・何を・売っているのか」を考えてみたいと思います。

「スポーツマーケティング」が分かりにくい理由で紹介したスポーツビジネスの分け方で考えると、NBAは「みる」スポーツビジネスに分類されます。つまり、試合をお客さんに見てもらうことでビジネスとして成り立っているわけです。

ということは、『NBAの顧客はファンである』と考えられますよね?

しかし、実際にはNBAがマーケティングを仕掛けている相手は、「ファン」ではありません。

もちろん、「ファン」の存在はリーグやNBAのチームにとって、とても大切な存在となります。しかし、厳密には、ファンを獲得するためのマーケティングは、各チームが行なっています

例えば、八村塁選手の所属するワシントン・ウィザーズは、八村選手を獲得したことで早速、日本ファン向けに日本語のTwitterアカウントを開設しました。

このように、ファンを獲得するためのマーケティングは各チームがいろいろ考えて行なっています。では、NBAというリーグのお客さんは誰なのでしょうか?

NBAの顧客はスポンサーとメディア(放映権)

結論からいえば、NBAがマーケティングを仕掛けている相手は、「スポンサーとメディア業界」になります。(ゲータレード、スポルディング、ナイキ、ステートファームなどがスポンサー)スポーツのスポンサーシップってなに? スポーツと企業の共存

ファンに対しては、NBAは全くマーケティングをしていないというわけではないのですが、ファンに対するマーケティングは各球団が中心となって行い、NBAとしては各チームをサポートするという立ち位置です。

一方で、オフィシャルスポンサー、さらにテレビ局やネットメディアといった放映権を支払ってくれるメディア業界は、NBAにとっての大切な顧客となります。

スポンサーやメディア業界が、NBAにとっての顧客であり、NBAが行うマーケティングは、このどちらか、もしくは両方に向けられたものなのです。

NBAにおける商品 = 試合・選手・チーム

では、NBAは顧客へ「何を売っているのか?」、ということですが、これも結論からいえば、NBAの商品は日々の試合であり、NBAでプレーしている選手であり、所属している各チーム、これらの全てが「商品」ということになります。「スポーツビジネス」って「何を」売ってるの?

つまりNBAは、スポンサーやメディア業界に対して、ゲーム・選手・チームを魅力的に写すことで、リーグの収益を上げるために、マーケティングを仕掛けている、ということになります。

NBAが実施しているマーケティング

それでは、具体的にNBAはどのようなマーケティングを実施しているのでしょうか?スポンサーとメディア業界、それぞれに対するマーケティングについて、事例と一緒にご紹介しましょう。

まずはNBAの「スポンサーに対するマーケティング」について見てみましょう。

まず、スポンサーに対するマーケティングで代表的なものは、グッズの「ライセンス契約」です。

【ライセンス契約って?】

ライセンス契約とは、自社が持つ「知的財産(特許や商標)」などの権利を、他社に対して使用させる権利を与える契約のこと。

例えば、スポーツメーカーのロゴマークが入った鉛筆などは、スポーツメーカーが鉛筆製造会社に対して「ロゴマーク使用許可」のライセンス契約を結び、鉛筆会社がスポーツメーカーのロゴを使用して鉛筆を製造・販売している。

NBAは、アパレルブランドなど、複数社とライセンス契約を締結しています。

ライセンス契約をしたブランドがNBAのロゴマークなどを使って商品を開発・販売を行い、売上の数%を「ライセンス使用料」としてNBAがもらう、という仕組みの契約です。

ここでのNBAが仕掛けているマーケティングは2つ。

1つは「ファッション性を高める」ということ、もう一つが「スポンサーと独占契約をしない」、ということです。

まず「ファッション性」の部分ですが、ヒップホップカルチャーの影響もあり、NBAのユニフォームはNBAの試合を観にいけない人でも、「普段着」として着ることができるようなオシャレなものとなっています。

これはスポーツビジネスの世界では画期的なことです。

例えばサッカーのユニフォームを持っている人は多くいますが、普段着として着ている人は少ないですよね。

もう一つは、「スポンサーと独占契約をしない」、ということです。

NBAは2006年〜2017年まで、「アディダス」と約488億円でオフィシャルサプライヤー契約(ユニフォーム契約)を結んでいました。

このような大型契約を結んでいると、普通は契約を更新しそうなものですが、契約が切れる前に、NBAはアディダスに対して契約更新については白紙にし、入札方式にすることを伝えたそうです。

この背景には、当時のアディダスの経営不振などを含めて、総合的に判断した結果、このような決定をしたそうで、現在は「ナイキ」がオフィシャルサプライヤー契約を8年契約で結びました。

このように、定期的にスポンサーを交代したり、独占ではなく複数社と契約することで企業間の競争を煽るなど、スポンサーに対してのアメとムチをうまく使い分けることで、利益を最大化するマーケティングを行なっているのです。

海外スポンサーを獲得するためのワールドツアー

NBAの海外戦略に目を向けると、オフシーズンに行われるNBA主催のワークアウトや、エキシビジョンマッチなどを行う「ワールドツアー」があります。

2019年には、約16年ぶりに日本でも「ジャパンゲーム」と題して「ヒューストン・ロケッツ vsトロント・ラプターズ」のゲームが開催されました。

これは、八村塁選手がドラフトされたこと楽天と日本独占放映権を結んだことで、日本のNBA人気が高まっていることによる、NBAが日本市場の開拓を狙ったマーケティングです。(楽天の三木谷社長が相当頑張ったということもありますが・・・)。

オーストラリアや中国、南アフリカなどでも開催されており、毎年NBAは世界的なファンを獲得するためのワールドツアーを組んでいます。

スポンサーのニーズを満たすマーケティング

2018-2019年シーズンにNBAとスポンサー契約を結んでいる企業は、全部で26社ありました。ゲーム会社やスポーツメーカーはもちろんですが、自動車メーカーやファーストフードチェーンなど、業種は様々です。

スポンサーとしては、テレビ放送の間にCMを流せるところもあれば、スポーツメーカーはオフィシャルのボールになったり、ジャージのメーカーになることで、売上増やイメージアップが見込めます。

ここで、NBAの前コミッショナーである故デビッド・スターン氏がスポンサーを増やすために行ったマーケティングが非常に秀逸だったので、ご紹介しましょう。

それは、「年間契約」です。当時のアメリカンスポーツのスポンサー契約といえば、ゲーム毎にスポンサー契約を結ぶというのが一般的でした。

NBAも例外ではなく、プレーオフやNBAファイナルではスポンサーを獲得することができるものの、レギュラーシーズンはスポンサーが集まりにくいという問題があったそうです。

そこでデビッド・スターン氏は、スポンサー契約をレギュラーシーズンからNBAファイナルまでのパッケージ商品として、年間契約の商品を開発し、単発で放送するよりもお得な価格設定にすることで、スポンサー契約を安定させることに成功できたのです。

さらにいえば、スポンサーのニーズに合わせて、CMを流すエリアによって価格を調整するなどして、これまでとは違ったスポンサーを獲得することにも成功しました。

メディア業界へのマーケティング

スポーツビジネスにとって、メディア業界からの「放映権収入」はとても大切な収入源になります。メディアがスポーツビジネスを盛り上げている理由

NBAが放映権を管理しているのは、「全米放送(日本で言うとキー局)」と「海外向け(インターネット配信)」となります。

ローカル局(日本で言うと地方局)」との契約は、各球団が放映権を契約するという流れになっています。

テレビ局にとっても、NBAは視聴率が期待できる「キラーコンテンツ」なので、基本的には放映権は毎回右肩上がりです。

現在、NBAが契約しているテレビ局は、ディズニー傘下の「ABC」と「ESPN」、タイムワーナー傘下の「TNT」であり、9年間で総額240億ドル(日本円で約2兆5000億円!)という大型契約を結んでいます。

さらに、日本では独占放映権を「楽天」と「5年総額254億円」の契約を結んでいます。その前は、中国のテンセントが同様の契約を結ぶ(現在は終了)など、世界中でNBAがリアルタイムで観戦できるようになってきています。

NBAは「スポンサー」と「メディア業界」からの収益を基盤としていることから、各方面へのマーケティングを仕掛けています。

この方法が成功したことでNBAはどんどん大きくなり、「選手の平均年俸が約8億円」(平均年俸が世界最高のリーグ)という、多くの人が憧れるプロスポーツリーグへと成長していったのです。

まとめ

今回は、\NBAは誰に対してマーケティングをしているのか?/、というテーマで、NBAというプロスポーツリーグが仕掛ける「マーケティング」についてご紹介しました。

NBAは「スポンサー」「メディア業界」に対して、巧みなマーケティングを仕掛けています。

NBAのすごいところは、これだけ確固たる人気を獲得しているのに、現状に満足せずに、いまだに進化の道を模索しているところです。

今シーズン行われたNBAオールスターゲームでは、昨年までのルールを変更し、よりファンがエキサイトできるような仕組みに変わったことで、好評でした。NBAが日本市場を開拓するワケ これまでの事例とこれからの戦略

NBAだけではなく、NFLやMLBといった他のアメリカプロスポーツリーグも同様ですが、「ファンのためになる」「そのほうが儲かる」ということが分かれば、競技のルール自体をあっさり変えてしまうことも、アメリカらしい合理的な考え方です。

今回はNBAが実際に行なってきた事例を中心にご紹介しましたが、「マーケティング視点」持ってスポーツを見てみると、これまでと違った楽しみ方ができると思います!!


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記事提供
ゼロからのスポーツビジネス入門 須賀 優樹

「世界で一番優しくスポーツビジネスを学べる場をつくる!」を目標に、スポーツ業界に入りたい人、活躍したい人をこれまで多数支援。学生時代の専門は「スポーツマーケティング」。現在は大手企業のデジタルマーケティングやビッグデータ分析のコンサルティング、スポーツ団体の新規事業支援などをやっています。

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