3人制バスケットで風穴を開ける新宿givers 目指すは日本一と代表選手の輩出!

2021年の東京五輪で正式種目となり、アーバンスポーツとして少しずつ国内に広まっている3×3(スリー エックス スリー)。いわゆる“通常のバスケットボール”である5人制に比べ、コートが狭く人数も少ないが、試合時間が10分かつノックアウト制(21点)のルールも相まってスピード感が魅力の競技だ。
「新宿から世界へ、バスケットボールの力で人々に愛を」をミッションに、2025年1月に3人制バスケットボールの女子チームとして立ち上がった新宿givers(以下givers)。5月から12月までの期間、9チームで優勝が争われる3XSに所属する。
球団代表の兼子勇太氏は「目標は優勝。日本一です」と宣言する。
giversはチームとして日本一、世界進出をミッションに掲げる一方、国内における3×3、中でも女子カテゴリーの環境改善も目指している。

様々な縁を結び整った環境で練習に励む

チームを束ねる兼子氏は、高校、大学とトップレベルでプレイし、そこから5人制と3人制共にプロ選手として活躍した。2014年には3×3のU24日本代表に選出された。
2018年に現役を引退後は東京八王子ビートレインズで育成世代の指導をしながら、3人制チームのマネジメントに従事している。2020年にSHIBUYA FUTURESを筆頭に、2022年には経営が難航していたSOLVIENTO KAMAKURA ZUSHIで球団代表を歴任。giversは3チーム目となる。
球団代表としてチームの編成はもちろん大会に向けた事務作業や戦術やスキルアップのための指導など、業務は多岐に渡る。
女子チームは初めてのマネジメントだが、これまでの経験を生かし「3×3は試合中にコーチから指示ができないので、練習中からいろんな課題を自分たちで解決できるようにしていきたい」と選手の自己解決能力を伸ばす指導を行っている。

兼子氏の“相棒”として、giversの中心になっているのが高桑由実。160cmと小柄ながら得点力が高く、大学生時から様々な舞台でプレーし「高桑選手を中心にチーム作りをしています」と兼子氏が全幅の信頼を寄せている。大学1年生で初めて3×3に触れて以来、競技の虜になった高桑は大学卒業後、バスケットスクールで指導に携わりながら3×3に専念できる環境を探していた。
その中でこころ整骨院・整体院を全国100箇所以上で展開する株式会社giversの支援が受けられることになり、チームが誕生した。
通常、3×3のチームは練習場所や備品の購入等の環境の整備が課題の一つではあるが、giversは東京五輪でも使用された有明アーバンスポーツパークのコートを定期的に利用できている。さらに選手の働き方についても株式会社giversが全面的にサポート。高桑を含む選手たちは関連会社で働きながら活動できており、競技に専念しやすい環境になっている。
「会社として私たちがやりやすいように動いてくれています」と高桑。理解ある企業のバックアップの下、競技に取り組めていることは大きなプラスだ。

選手たちを指導する兼子氏(写真右)

親会社や地域を巻き込み女子カテゴリーの環境改善を目指す


親会社のサポートを受け環境が整っているgiversだが、多くの3×3チームは決して良い環境とは言えず、短いスパンで新チームの誕生と解散を繰り返している。
最も歴史のある3×3.EXE PREMIERが誕生して約10年、今でこそ3×3で生計を立てられる選手は増えているが一般的には本業の傍ら夜や週末に競技に時間を割いている。
一方でチームの運営会社の収入源は協賛が大半を占めており、営業活動がうまくいかなければ活動資金が枯渇し、チームは解散に追い込まれる。練習場の確保や遠征の手配、選手のスケジュール調整等の事務作業も運営会社にとっては大きな負担になっている。

現に兼子氏が代表を務めていたSHIBUYA FUTURESとSOLVIENTO KAMAKURA ZUSHIは数年で活動を休止。3×3とは別に本業がある選手が多いことから練習に時間を割くのがやっとで、チームの人気や協賛獲得につながる地域貢献活動ができていないことも、活動休止に追い込まれる原因になっている。
だからこそ兼子氏は、地域への貢献も見据えながら「このチームでは発足時から所属してくれているメンバーを中心に戦い続けたい」と決意を固めている。高桑も「ショッピングモールでも試合ができるのは3×3の魅力。もっと多くの人に3×3を知ってもらいたい」と話し、加えて子どもたちへの指導にも意欲をのぞかせている。

大学在学中の2019年から様々なチーム、環境でプレーし、厳しい状況も把握している高桑がさらに声を上げるのが女子カテゴリーの地位の確立だ。
脚光を浴びているのは常に男子で、大会における賞金や試合数に差があり、そもそも男子しか開催されない大会もある。「男子と女子で条件面に違いがあり、女子は男子のおまけ感がある」と高桑が言うのも無理はない。
giversではそんな状況も変えるべく、精力的に活動していく。親会社が市民生活に寄り添うこころ整骨院・整体院を運営していることを強みに、「発信を積極的に行い、いろんな人に競技を知ってもらって3×3だけで生活できる世界にしていきたいです」と高桑は意気込んでいる。

giversの大黒柱の高桑

若い選手を育成し、ロス五輪出場を見据える

業界の環境改善を目指すgiversだが、2028年のロサンゼルス五輪で日本代表選手を輩出することも目標に掲げている。giversは成長段階の若い選手を多く獲得し、長期間で育成をしていく方針だ。

また3×3は団体競技ではあるものの、テニスや卓球のように個人ポイントがあり、大会への出場や結果に応じてポイントが与えられる。日本代表入りには技術はもちろん、個人ポイントも加味されるため、大会への出場と多くの試合数をこなしていくことが必須になる。
ポイント獲得と選手育成のためには必然的に高いレベルでの戦いが求められる。高桑は「ロサンゼルス五輪に出るためには、今から日本代表に入ることができるように頑張りたい」とgiversだけではなく、他のチームに単発で入り、国内外の大会に出場している。

兼子氏は5月から始まった3XSのシーズンで優勝を掲げる一方、「日本でも世界大会につながる大会は多い。出場権を勝ち取りアジアや世界でもポイントを稼いでもらいたいです」と話す。

3×3、そして女子カテゴリーの確立に向け動き出したgivers。世界を見据えながら戦う彼女たちの挑戦は始まったばかりだ。
(写真提供/新宿givers)

チームワークを強固にしてシーズン優勝、世界大会出場を目指す

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