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リコーブラックラムズ東京が築く世田谷区との”共創” スポーツの枠を超えて地域のインフラに

現在プレーオフトーナメント進出に向け、熾烈な戦いを続けているリコーブラックラムズ東京(以下、ブラックラムズ)。

プレーオフトーナメント進出を目標に掲げており、5日現在で8位ながら6位の静岡ブルーレブズとは同率の3勝3敗・勝ち点差のみでの順位であり、進出を十分狙える位置にいる。

7日からは「駒沢ホスト3連戦3万人プロジェクト」と題し、駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場でホストゲーム3連戦(2月7日・21日・3月14日)が開催される。

後半戦が始まる大事な試合がホストエリアで行われるにあたり、約10年かけて築き上げてきた地域や行政とのストーリーを紹介する。

チーム広報を務める野田朝子さんに協力いただき、ブラックラムズと地域との深い関わりについて語ってもらった。

(取材 / 文:白石怜平、写真提供:リコーブラックラムズ東京)

ブラックラムズが約10年間継続している「ホームタウン活動」

ブラックラムズ東京が放つ魅力の一つは、社会貢献活動を通じて地域や行政そしてチームが相互に発展し合っていること。

「地域に根ざしたクラブ」を掲げるブラックラムズは、2022年に「NTT JAPAN RUGBY LEAGUE ONE(リーグワン)」参入に伴い、ホストエリアを世田谷区に制定。

世田谷区を中心とした地域との関わりを深めるため、「ホームタウン活動」を行っている。

同活動は教育機関や福祉施設・商店街などと連携した取り組みを多岐にわたり行うもので、2024年度では年間約250回を数えた。

活動の原点となっているのが2016年にスタートした「ゲストティーチャー」。本活動は区の教育委員会と手を組み、小中学校を対象としたタグラグビー教室を授業の一環として展開している。

チームスタッフのみならずオフには選手も講師役を務め、25年1月現在で参加児童・生徒数は2万人を超えた。

約10年活動を継続し、参加指導は2万人を超えた(©BlackRams Tokyo)

以降、ブラックラムズは世田谷区のカルチャーとして浸透していく。これは地域がチームを信頼し、チームが地域へ感謝する“共創”を長い時間かけて継続してきたからであった。

「ホームタウン活動などを重ねるごとに、『何かあればブラックラムズに声をかけたら一緒にやってくれる』という雰囲気が醸成されているのを感じています。

例えば、『イベントをしたいけどもコンテンツを何にしよう。じゃあブラックラムズに声をかけてラグビー体験会をやってもらおう』といった“困った時のブラックラムズ”という発想が広がっています。

我々も地域の皆さんに頼っていただけるなら、その一員として喜んで恩返ししたい。全員がその想いで関わってきました」

地域そして行政との絆も強固になっている(©BlackRams Tokyo)

まちの商店街にチームフラッグを掲出するなど、行政との関わりも深めていったブラックラムズ。地域×行政×ブラックラムズの3者の絆が深まっている中、昨年から新たな動きがスタートした。

それは、世田谷区に「ブラックラムズプロジェクトチーム(PT)」という部署横断プロジェクトが発足したことである。

スポーツの枠だけにとどまらず、“世田谷区のインフラ”としてチームが機能するために、区の課題解決に向けた意見交換を定期的に行っている。

その一例が、区の保育園を対象にしたリコー総合グラウンドの解放。猛暑や極寒の時期を避け、園児が遊べる場所として週一回ずつ各保育園に提供している。

これは世田谷区から課題があることを聞き、チームから提案をしていた。

「保育園の課題として園庭を確保することが難しく、公園と言っても交通量や治安面を考えると安心して遊べるところがないと聞きました。

我々のグラウンドであれば、整備された芝生の上で安全に遊んでもらえます。ラグビーチームとして施設を持っていることも一つのバリューになりますので、是非そこで貢献したいという形で実現しました。

先生にお伺いすると、芝生そのものに慣れてないお子さんが多いとのことでした。ここですと自然にも触れられるのですごくいい機会だと感じています」

チームのグラウンドは子どもたちの成長の場でもある(©BlackRams Tokyo)

もう一つの例が「出前健康講座」。世田谷区内の高齢者施設を訪問し、ラグビーを通じた健康づくりや入居者との交流を深めている。

元々は区からの要望で地域が開催している健康講座に参加していたが、ブラックラムズからの提案で施設訪問という形で進化させていた。

「これまでの健康講座って開催場所まで行ける人しか参加できないと感じていました。

世の中を見渡した時、人とのコミュニケーションが希薄になってしまったり、その場所に来られない環境にある人たちもいます。そういった方たちも、コミュニティでのつながりを求めてるのではないかと。

日常生活では支えてもらっている側かもしれないですが、誰かを応援することを通じて再び支える側の立場になることで、日々の活力を得ていただきたいという想いから始めました」

ここでのエピソードとして、外国人選手が参加した際のやりとりがとても印象的だったと野田さんは語った。

「訪問した高齢者施設にいた方のお一人で、長く海外に住んでいたことから英語が堪能な方がいました。

普段施設の中では英語を話す機会はないのですが、外国人選手が来たら自ら選手のところに行って延々と英語で会話していたんです。

新しい刺激・出会いがあるからこそ、生き生きとした自分を表現できる場を提供できたなというのを感じて、大切なことだなと私も思いました」

年代を問わず地域の方々へ活力をもたらしている(©BlackRams Tokyo)

試合そしてイベントを共創する「Ramgelist」

ブラックラムズにおける“共創”を語るにあたり、欠かせないコミュニティが存在する。それがブラックラムズが運営する公式ボランティア組織「Ramgelist(ラムジェリスト)」である。

ホストゲーム開催日やチーム主催のイベントの際に、場内案内やプロモーション活動といった運営全般をサポートしている。

ホストゲーム1試合あたり最大70名ほどが参加しており、登録者数も発足した2022-23シーズンの約100名から今シーズンは150名を超える規模へと拡大している。

試合やイベントをサポートする「Ramgelist」(©BlackRams Tokyo)

公式ボランティア組織はリーグワンの中でも静岡ブルーレブズとブラックラムズの2チームのみで、ラグビー界の中でも希少な活動である。これはチームビジョンを実現させる一つのプロセスで生まれたものだった。

「『Be a Movement.』というチームビジョンを掲げているのですが、これは自分たちが主体的になって動くことでうねりをつくり、周りを巻き込んでいくという意味があります。

自分たちの力だけではできないこともたくさんありますし、ブラックラムズの魅力を波及させていくための仲間が必要と考えています。

ボランティアというと無償で働くという意味がありますが、そういったイメージではなくチームの一員です。そして一緒に創り上げていきたい。そんな想いからラムジェリストを立ち上げました」

名称はブラックラムズの伝統と魅力を共に伝えていってほしい想いを込め、ラムズの“Ram”と伝道者を意味する“Evangelist”を組み合わせた。

ラムジェリストのメンバーは一人ひとりの持つ力を発揮すると共に、チームの魅力を体現する存在であった。数ある例の中で、観戦時にあった出来事を明かしてくれた。

「プレシーズンマッチの時に具合が悪くなられた方がいらっしゃって、その方が休憩されてる時に、ラムジェリストさんがずっと付き添っていただいたんですね。

そのお礼を後日ファンクラブ宛てのメールでいただいたので、そのラムジェリストさんにお話したら、実は看護師さんだったんです。それを聞いて個々の持っている経験を活かす場にもなっているし、チームの力にもなっているんだとすごく感じました」

150人以上のメンバーがチームの“戦力”として参加している(©BlackRams Tokyo)

プロジェクト最終日では、選手も応援するのぼりを掲出

7日から始まる「駒沢ホスト3連戦3万人プロジェクト」。最終日である3月14日(静岡ブルーレブズ戦)には、選手たちがジャージー姿でチアリーダーの格好を決めたのぼりを掲出する。

ホストゲームの試合会場で来場者を迎える選手たちののぼり。主に掲げられるのは迫力あるプレーシーンが中心であるが、今回その趣向を変えたのにはチームとして込めた想いがあった。

「“応援”というのは双方向にあると私たちは考えています。ファンそして地域の皆さんに選手を後押ししていただきたいというメッセージがある一方で、我々からはラグビーを観に来たみなさんに活力と感動をお届けしたい。

チームからもラグビーを通じて来場者の皆さんを応援し、一層元気になってほしいという想いからこの企画が実現しました」

3月14日は応援を通じて元気を与え合う日になる(©BlackRams Tokyo)

ホストエリアとして根付き、区のシンボルとして希望を与えているブラックラムズはホームタウン活動でも更なる発展を目指していく。インタビューの最後は、チームが地域と描く未来について語った。

「世田谷区にとってなくてはならない存在になりたいです。それはスポーツチームとしてではなく地域の一員として、区民の皆さんの困ったときに役立てるインフラとしてブラックラムズが真っ先に思い浮かんでもらえるようになっていきたい。

チームが存続していくためには、地域の一員となって、皆さんと共に成長していくことが不可欠だと思いますので、地域に愛されるよう今後も取り組んでいきたいです」

リーグワンも後半戦に差し掛かり、より重みを増す試合が続く。これから始まる世田谷3連戦で後押しを受け、目標のトップ6を掴んでいく。

(了)

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