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9年目を終えたLiga Agresiva大阪。高校野球の進化をリードする活動は続く。

高校野球のリーグ戦、Liga Agresivaは、大阪で始まった。9年目を迎えた2023年シーズン、Liga Agresiva大阪は、10チームが参加し、9月から11月までに合計50試合が行われた。

このリーグ戦を、幹事として企画、運営してきた門真なみはや高校の藤本祐貴監督に今年のリーグ戦を振り返ってもらった。

2023年の盛り上がりは?

「2023年は、タイミングよくLiga Agresiva神奈川に参加している慶應高校が甲子園で優勝しました。僕たちの学校も甲子園に慶應高校を応援に行きましたが、多くの人が価値を見出そうとしているリーグに参加させてもらっていると言う期待感はひしひしと感じます。

今年のリーグ戦では、各校から感じるLigaへの期待感、Ligaをモチベーションにしている学校の多さを感じましたね」

門真なみはや高校の藤本祐貴監督

2023年は大阪府立今宮高校、羽衣学園高校、関西大倉高校、大阪府立門真なみはや高校、早稲田摂陵高校、大阪学芸高校、大阪府立布施高校、大阪府立花園高校、大阪府立旭高校、大阪府立みどり清朋高校の10校が参加。

2022年は2リーグに分けたが、2023年は1リーグでリーグ戦をした。

「2リーグ制にしたのは各校間の実力差が広がったのが大きかったので、大差の試合より接戦の試合をしたほうが経験値が高まると思ったからです。

でも前年の状況を見ていると、弱いチームもだんだん地力がついてきて、実力差は以前ほどなくなったと思えたんです。

これなら1リーグにしてもいいんじゃないかと思って1リーグに戻しました。でも強いチームに善戦した試合も出てきて、実力差は縮まっているのかなと思いました。大阪のリーグでは、6回以降に一二塁とか、一三塁とか状況設定をするようにしています。どうしてもLigaでは『投手戦』が多くなって、得点機を経験してもらう機会が少ないからそうしたのですが、そういう状況設定を利用して逆転することも多かった。最後まで選手がファイトすることが多かったですね。

最後まで試合をあきらめずに、試合を頑張ると言うのは成長の大きな要因になってくれると思います」

走塁も大きなテーマ

投手起用でも変化が

投手は「球数制限」を設けている。投手起用では変化はあったのか?

「どの学校でも継投が定着しました。いろんな選手がマウンドを経験するのが当たり前になってきました。これはLigaの大きな目的の一つなので良い傾向だと思います。

特に普段はマウンドにあまり上がらない選手が、マウンドに立つと新たな可能性が開けると言うか、新しい才能が見つかることもあります。これは各校の監督さんと話していてもよく聞く話です。低反発の金属バットも定着したと言う印象ですね。」

野球をする「仲間」と言う意識が定着

試合後に両チームの選手がともに話し合う「アフターマッチファンクション」も行われたが?

「もともと選手、監督など指導者が、日本スポーツマンシップ協会の中村聡宏先生(立教大学准教授)のスポーツマンシップの講義をリモートで受けると言うことになっていたのですが、3年前からは、試合後に選手同士が話をして、お互いのプレーを評価したり、アドバイスするアフターマッチファンクションも実施しています。時間の都合があるので全試合実施するわけではありませんが、1試合目と2試合目の間の時間などに実施しています。

やはり違うチームの選手同士、仲間意識ができるのがいいですね。

今年、慶應高校が甲子園で優勝したことなんかも話題になっていて、大舞台で活躍しているのを見て刺激を貰った、みたいなことも言っていましたね。

選手の仲間意識としては、今までで一番醸成されたのではないでしょうか?」

アフターマッチファンクション

藤本監督は、前任校の時代から、Ligaの活動の延長線上で、子どもたちの野球教室を実施するなど普及活動にも力を入れていたが。

「12月の日曜日には、Ligaに参加している生徒もたくさん集まって、運動会みたいなイベントも行いました。野球ではなくていろんな種目をやりましょうということで、野球からつながって、学校の枠を超えてそういう校友もできてきたので、本当に繋がってきたな、と思いますね。同じ競技をしていて、試合で顔を合わせているのに、コミュニケーションがないのはもったいないですからね」

投手に経験を積ませることができた

藤本監督の大阪府立門真なみはや高校では、どんな変化があったのか?

「2023年は2年生が6人と少なかったのですが、割といい投手がいて実力的にもチームの中心になりそうだったのですが、Ligaではその投手だけに頼っていてはいけないので、思い切って2番手、3番手の投手に経験を積ませました。ピッチャーを育成することに主眼を置いたんですね。

もちろんその分、エースの投手の投球回数は減ってしまいましたが、そこは割り切って起用しました。また1年生もたくさん試合経験が詰めたのも良いことだったと思っています。

打撃に関してはチームの弱点だと言うことが再認識できました。

Liga大阪の場合、一球速報アプリを使っていて、投手成績、打撃成績などがオンタイムで出ます。数字を見れば、打てていないことがわかるので、課題も見えてくるのがいいですね」

Ligaを運営するうえでの問題点は?

「これは大阪だけではないですが、審判員さんが減っているんですね。球審を確保するのが大変でした。千葉のリーグでは『ノーアンパイア』で、ジャッジも自分たちでやるような動きも出ていますが、そういうことも考えないといけないかもしれません。参加校も増やしていきつつ、課題を解決していきたいですね」

勝利も全員の充実も

関西大倉高校の松井僚平監督

2023年でLigaに参加して7年目になる関西大倉高校の松井僚平監督は

「最初はやり方がわからなくて、選手も戸惑っていましたが、今では公式戦とは別の試合として、理解してそのルールでプレーをしています。

うちは選手主体でオーダーを決めました。元々監督や指導者がやっていたマネージメントみたいな部分を選手たちも経験することで、野球への理解が進むと思います。

スポーツマンシップ講座は最初はそれほど理解していなかった部分もありましたが、1度聞いたことがある2年生が1年生に『この話、聞いておけよ』ということもあります。そういう形でスポーツへの理解が進むのは非常にありがたいなと思っています。

2023年は慶應高校さんが夏の甲子園で優勝されました。自由な髪形のことも話題になりましたが、僕は髪の毛が長くても野球は下手くそにならないと、もともと思っていましたので、そういう意味ではのびのびとした野球が増えたかなと思います。 うちは勝ちも当然目指しますけど、それよりも全員の充実が大事だと思っています」

プレイボール!

投手に起用して積極性が出てきた

大阪府立布施高校の山下健治監督

大阪府立布施高校は、Ligaに参加して3年目だ。山下健治監督は語る。

「2022年は、打撃で好成績を挙げた選手が出たりして、選手のモチベーションとしてはいい感じになりましたね。やっぱり負けて終わりじゃなくてずっと続くので。もちろん相手チームに勝つことを考えながらやっているんですけども、自分のスキルを挙げることも考えることができる。続いていく中で結果が残っていくっていうのが、すごくプラスになってるのかなと思います。

2023年の選手数は22人ですが、DHが採用できるので、2試合やればほぼ全員出場できますし、ピッチャーなんか投げるのを楽しみにしていると思います。

中学校のときに投手の経験があるけど、高校では自信がないから投げたくないという選手がいたんですが、チームの投手事情もあってLigaで投げなければならなくなって、マウンドに立ちました。投げてみると野球の見え方がやっぱり違うので、積極的に練習するようになりました。そういう良い変化があるのでLigaは良いと思いますね」


布施高校山下監督がアドバイスする

2024年から、高校野球は低反発の金属バットを導入する。高校野球もどんどん変化していく。Liga Agresivaはその変化の担い手として注目され、今や31都道府県153校になった。

Liga大阪はその発祥の地域として、さらにユニークな取り組みを続けていく。

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