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森岡薫がリガーレヴィア葛飾で成し遂げたいこと 勝利と挑戦を追い求め続けるフットサル界のレジェンド

今シーズンからFリーグディビジョン2(以下、F2リーグ)に所属することになったリガーレヴィア葛飾。注目すべき選手は何人もいるが、キープレーヤーの一人として挙げられるのは、日本フットサル界のレジェンド 森岡薫選手だ。紛れもなく日本のフットサル界を牽引してきた選手だが、なぜ今シーズンの戦いの舞台にF2リーグを選んだのか。森岡選手本人に話を聞いた。最大の目標はリガーレヴィア葛飾をF1リーグ昇格に導くことだが、入団の経緯や自身の役割に加えて、フットサル以外の取り組みについても聞くことができた。森岡選手が考える今と未来とは?

旧友との約束 リガーレヴィア葛飾入団の経緯

F2リーグに昇格したばかりのクラブへの入団は、様々な捉えられ方をしていると思う。日本代表や所属クラブだけでなく、個人としても数多くのタイトルを獲得してきた森岡薫選手は、2022年シーズン開幕を迎えた時点で43歳になっていた。ベテランと言われる年齢であることに違いないが、キャリアの終盤を下部リーグで過ごすためにリガーレヴィア葛飾に入団したわけではない。

「西野に誘われたからです」

「西野」とはクラブのGMである西野宏太郎氏のことで、森岡選手がフットサルを始めた頃からの友人である。入団の最大の理由は西野氏からのオファーだった。

森岡選手のリガーレヴィア葛飾入団は、実は2回目だ。2020年に40歳にして世界最高峰のスペインリーグに挑戦したが、新型コロナウイルス蔓延の影響でリーグは中断。そのタイミングで西野氏のオファーを受けて、当時関東リーグに所属していたリガーレヴィア葛飾(当時のチーム名はリガーレ東京)に練習参加した。しかし、関東リーグ開幕も延期になってしまったことから、公式戦に出ることなく退団することになる。その後、スペインリーグやFリーグクラブなどいくつかのクラブを経て、リガーレヴィア葛飾に戻ってきた。

リガーレ東京を去る際に西野氏からは「必ずFリーグに昇格する。その時はまた一緒にやろう」と言われていた。「見事に上がりましたね」と森岡選手は旧友との約束を果たしたのだ。

リガーレヴィア葛飾に復帰した森岡薫選手

森岡選手が追い求めるのは「勝利」と「挑戦」 チームでの自身の役割とは?

リガーレヴィア葛飾に「復帰」した森岡選手だが、もしチームがFリーグに昇格していなかったら、同じ選択をしていたのだろうか。少し迷いながら答えた。

「西野だから入団を決めたというのはあります。でも関東リーグのままだったら、今すぐには行かなかったかもしれないですね」

これは関東リーグでプレーしたくないということではない。森岡選手はインタビューの中で「挑戦」という言葉を多く口にしていた。「フットサルではある程度のことを経験させてもらってきました。でもまだやれると思っているので」と、まだ高いレベルでのプレーを求めている。

「意味なくプレーすることは嫌いなので。(西野氏からのオファーのような)魅力を感じるオファーがなかったら、引退していたかもしれないです」と語る森岡選手の今の目標は、リガーレヴィア葛飾をさらなる高みに導くことだ。

練習後にインタビューに応じてくれた

西野氏が森岡選手に求めるのは、試合での得点やゴールにつながるプレーであることは当然だ。だがそれは役割のひとつに過ぎない。若い選手が多いチームを鼓舞することにも期待をしていると話していた。森岡選手自身も求められている役割を理解している。戦力も資金も限られているチームにおいて、多くの選手は他の仕事をしながらプレーしているのが現状だ。そんなチームにとって「大きな力になれる」との確信とともに、「実際にどこまでチームを助けられるのか」という挑戦がそこにはあると語った。

一方で西野氏が危惧していることがあった。実績も経験も、オーラもある偉大な選手の振る舞いに、若い選手が萎縮してしまうのではないかという点だ。森岡選手は「たしかに言葉を選ばず言ってしまうことはありますが、それは勝ちたいからです」と話す。ここで言う「勝ちたい」は、個人やチームといった一人称の感覚ではなく、サポーターやスポンサーのことを考えたものだ。練習や試合ができるのは応援してくれる人たちのおかげだということを忘れてはいけない。そのことを練習から若い選手たちに伝えることで、勝利に貪欲になれるチームにしている。

「厳しいことを言った選手に対して恨みがあるわけではないし、みんないいやつばかりですよ。オンとオフは分けているので、ピッチを出れば冗談も言い合います」と言う通り、取材前に目にした練習後のチームはとても良い雰囲気だった。

森岡選手が若いチームを牽引する

経営にも挑戦 アスリートのセカンドキャリアをサポートしたい

森岡選手にはフットサル選手以外の顔もある。高円寺にエステサロンをオープンし、夫婦で経営しているのだ。そのことについても少し話を聞いた。

現在は脱毛とホワイトニングを行うエステサロンなのだそうだが、セカンドキャリアを見据えての開業とのことだ。かつて浦和レッズレディースの選手だった妻の寛美さんとともに「アスリートをサポートできるような職場を作りたい」という想いがある。

「選手を引退したらこの先どうしようっていう選手は、やっぱたくさんいるので、自分が少しでも力になれるのではないか。みんなで力を合わせれば生活していけるんじゃないかなと思って」

引退したアスリートに働いてもらうことを視野に入れている。あるいは、現役アスリートを綺麗にすることも目的の一つだ。現役中から引退後までを支援できる、森岡選手が経営するエステサロンは、アスリートならではの発想が生み出した空間と言えるのではないだろうか。

森岡選手がエステサロンをオープン(写真は森岡選手のInstagramより引用)

リガーレヴィア葛飾がF1リーグに昇格できる可能性は?

リガーレヴィア葛飾はF2リーグで優勝できると思いますか?という問いに対して森岡選手は即答した。

「不可能(笑)」

思わずこちらも笑ってしまったが、森岡選手は続ける。「厳しい目標ですけど、不可能だと思ったらやってないと思うんですよ」と引き締めたあと、「それを可能にできるようにやっていきたいです」と再び笑った。

Fリーグで数々の個人タイトルを獲得してきた森岡選手は、MVPや得点王は狙っていないと言う。とはいえ、「もちろんリーグ終盤で狙える位置にいれば意識しますけど」と、個人タイトルへの意欲がないわけではない。それが結果的にチームの勝利につながることは、百戦錬磨の森岡選手自身がよく理解していることだろう。F2リーグという新たな舞台で、森岡薫の挑戦は続いている。

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