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在日朝鮮人のプロサッカー選手・韓浩康~日朝韓の高校生に夢に挑戦するキッカケを届ける~

 在日朝鮮、日本、韓国の高校生たちを招待して行うサッカー交流イベント・ミレロフェスティバル(MIRERO FESTIVAL)が今年12月に開催予定となる。

今年で3回目を迎えるミレロフェスティバル。主催するのは、Kリーグ(韓国リーグ)でプレーする現役プロサッカー選手のハン・ホガン(韓浩康)選手だ。ハン選手は、Jリーグの横浜FCなどでプレーした経験があり、日本のファンにとっても馴染み深い存在だろう。

そんなハン選手が、なぜミレロフェスティバルを開催するのか?そして、開催に向けて、熱い想いを語ってくれた。

非日常の体験を通じて、夢に向かい“挑戦”するキッカケを届ける

 

ハン選手は、京都市出身の在日朝鮮人であり、朝鮮大学校を卒業後、2016年にモンテディオ山形に加入。その後、ブラウブリッツ秋田を経て、2021年からJ1に所属する横浜FCに移籍し、念願のJ1プレイヤーとなった。2022年よりKリーグ(韓国リーグ)でプレーする現役のプロサッカー選手だ。

第1回目のミレロフェスティバルは、ハン選手がJ1デビューした2021年の12月に開催された。現役プロサッカー選手としてプレーをしながら、イベントを主催するのは、ハードなものだと容易に想像できるだろう。

それでも、ハン選手は、

「プロの最前線で戦っているからこそ、響くものがある」と語るように、学生たちに伝えたいことがあった。

ハン選手がプロサッカー選手という夢を抱き、その夢を実現させたいと強く思った背景には、学生時代に経験した非日常の体験があった。

それは、父親と訪れたプレミアリーグでの試合観戦や2010年に行われたワールドカップに在日朝鮮人の選手が朝鮮代表として出場したことだ。自身と同じルーツを持つ選手たちが国際大会の舞台で活躍する姿は、プロサッカー選手という夢をより強固なものにした。

「学生時代に経験した非日常の体験を今の学生たちにも届けたい」

ワールドカップのような非日常の体験を届けることは難しいが、異なる形で学生たちに非日常の体験を届けたいという想いから、ミレロフェスティバルの開催を決断した。

もちろん、ミレロフェスティバルはハン選手1人だけでなく、多くの方々の協力や賛同があって開催された。その中には、大学時代の恩師であるキム・ジェドン(金載東)さんやワールドカップのピッチにも立ったアン・ヨンハ(安英学)さんらがいた。彼らもハン選手の想いに共鳴し、ミレロフェスティバルは加速していった。

1,2回目共にミレロフェスティバルを支えたアン・ヨンハさん:小学校6年生のハン・ホガン(左)は、当時よりアン・ヨンハ(右)に憧れていた。

 

“ミレロ”は韓国語で“未来へ”という意味がある。過去のミレロフェスティバルでは、ハン選手が出場するJリーグの試合への招待、アン・ヨンハさんなどのレジェンドサッカー選手たちとのエキシビションマッチといった、学生たちに“未来へ”挑戦するキッカケとなる非日常の体験を届けてきた。

世界の架け橋となるべく進化していくミレロフェスティバル

 

第1回目のミレロフェスティバルは在日朝鮮高校の学生が対象となったが、回数を重ねるごとに規模が拡大。3回目を迎える今年は、在日朝鮮高校、日本の高校生にとどまらず、韓国の高校生も招待し、異文化交流の時間も設けられている。

ハン選手は、韓国の国籍を持ちながら、日本で生まれ育った在日朝鮮人という3つのルーツに関わる特殊な存在である。そんなルーツを持つハン選手には、各国の架け橋になりたいという強い想いがあった。

2022年からKリーグでプレーするハン・ホガン選手

 

在日朝鮮人のプライドを持ちながら、Jリーグでプレーしたハン選手は、2022年より韓国リーグに移籍。日本と韓国の異なるリーグに所属したことで、自身が様々な見られ方をすることに気付いた。在日朝鮮人が身近でないという人々には、時にネガティブに捉えられてしまうこともあるという。

だからこそ、若いうちから様々なルーツの人と交流し、様々な価値観を肌で感じてほしい。その想いから、今回のミレロフェスティバルには異文化交流の時間を設けている。

将来的には、日本や韓国、在日朝鮮の学生にとどまらず、世界の学生に向けてもミレロフェスティバルを展開していくというビジョンを抱いている。世界の学生に対して夢に”挑戦”するキッカケを届け、世界の架け橋となるべく、ハン選手も”挑戦”をし続ける。

自分の可能性に“#かけろ”、夢に魂を“#かけろ”

 そしてもう一つ、今回のミレロフェスティバルから “#かけろ“という言葉がコンセプトに掲げられている。これは、第1回目のミレロフェスティバルから伝えてきたものであるが、今回からコンセプトとして前に出していくことになった。

「自分自身の可能性にかけろ」「夢に魂をかけろ」など、“#かけろ“には様々なメッセージが込められている。これらのメッセージには、ハン選手のこれまでのキャリアが凝縮されている。

Kリーグでも魂のこもったプレーが光るハン・ホガン選手

 

朝鮮大学校では最終学年になるまで、いわゆる控えという立場だったハン選手。大学3年時には公式戦デビューをしていたが、スタメン出場は4年生になってからが初めてで、周りには自分よりも上手い選手がたくさんいたという。

また、ハン選手が通った朝鮮大学校は各種学校扱いとなるため、卒業しても最終学歴が中学校卒業となる。そのため、ハン選手を含め多くの学生は朝鮮大学校の在学中に通信制の高校へ通い、朝鮮大学校と高校卒業の資格を取得している。

だが、ハン選手はダブルスクールという制約を受けながらも腐らずプレーを続け、自分にできることを地道に取り組んできた。そして、最終学年時にレギュラーの座を掴み、少ないチャンスを生かし、プロの契約を勝ち取り、プロサッカー選手という夢を実現させた。

「プロになる前もなってからも、上手くいかないことがほとんどだが、どんな時でも自分に矢印を向け、今できることを地道にやり続けた結果、今がある」

と語るように、どんなに技術や能力が高くても、強い意志や想いがなければ、成功をすることができないと身に染みて感じている。それがハン選手のキャリアの歩みであり、プレースタイルでもある。

魂をかけて挑戦していくことは、プロサッカー選手に限らず、人生においても重要なことだ。

だからこそ、学生たちに夢に向かって挑戦していく意志や強い想いの重要性を伝えていく。これが、ハン選手がミレロフェスティバルを通じて、一番伝えたいメッセージである。

学生たちに”挑戦”するキッカケを届けるとともに、ハン選手の”挑戦”もまだまだ続いていく。

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