子供たちの夢の保証人になった堂安律選手 W杯ベスト8進出と背番号10への想いとは

2022年6月19日、恵比寿ガーデンプレイスセンター広場で開催されたキッズイベント“「ROAD TO Dream」~堂安選手と夢を叶えるワークショップ〜”に、サッカー日本代表の堂安律選手が登場した。

このイベントは、抽選で選ばれた11名の子供たちが、堂安選手の前で自分の夢を発表し、それを叶えるためのアドバイスをもらえるというワークショップだ。堂安選手からは目の前で直接アドバイスをもらえるだけでなく、子供たちが作成した「夢の宣誓書」に直筆のメッセージを書いてもらえる。子供たちにとってはまさに夢のような時間だっただろう。

さらに、このイベントの前半は堂安選手のトークショーが行われ、2022年カタールW杯を控えた現在の心境などが語られた。

今シーズンの振り返りとW杯への意気込みを語る

梅雨時期にしては気温が高かった当日。イベント参加権を手にした子供たちとその保護者の前に、堂安選手が登場。第一声で「今日は皆さんの将来の夢の保証人として、ここに参加させていただきました。」と挨拶した。

続けて司会者より「今シーズンもお疲れ様でした。そして、今週はお誕生日でしたよね。おめでとうございます!」と祝福の言葉がかけられると、参加者と集まった多くの観覧者から拍手が沸き起こり、トークショーは始まった。

「試合に出ない時期もありましたけど、出た時にはしっかり活躍できたなと思ってます。優勝したかったんですけど、1年間通して充実したシーズンにはなったんじゃないかなと思います。」と冒頭で話した堂安選手。今シーズンは一定の手応えを得たようだった。

そして話は今年11月に開催されるW杯に。直前にキリンチャレンジカップとキリンカップの4連戦を終えたばかりだったが、「課題もありました」としつつも、 「収穫があった試合もあったと思います。これからしっかりとみんなで話し合って、11月に向けて調整していきたいと思ってます。」と語った。

インタビューに答える堂安選手

堂安選手が実践する気持ちの切り替え方

ワークショップの前に、事前に用意した中で特に人気が高かったという質問が、堂安選手にぶつけられた。「嫌なことや、辛いことがあった時は、どう気持ちを切り替えていますかか?」という質問が投げられると、こう答えている。

「もちろん僕も嫌なことはあります」と前置きすると、「やっぱり試合で得点できなかったりだとか、負けたりしたときには悔しいし、ストレスがたまりますけど、 僕は考えます。僕はめちゃくちゃ考えるタイプです。」

どういうことだろうか?堂安選手は続ける。

「それに答えはないとは思います」としたうえで、「色々考えて答えを出そうとして、それで考えすぎてしんどい時もありましたけど、次の日起きた時には頭が整理されてるので」

堂安選手は嫌なことはすっかり忘れようとせず、どんな感情も受け入れる。なぜそうなったのかを徹底的に考えることで、次に活かそうとする。そうやって自分と向き合いながら気持ちを切り替えているようだ。

トークショーは、要望が多かったというリフティングで締めくくられた。

「言い訳しときます。服はこの格好ですけど、大丈夫ですか?」と堂安選手は言いつつも、安定感のあるリフティングを披露し、会場を沸かせた。

堂安選手の夢と目標とは?ガンバ大阪への思い

自分の手で宣誓書に記入した3年後、6年後、9年後、12年後、15年後の目標を発表するワークショップでは、11人の子供たちに先駆けて堂安選手の夢が発表された。

『W杯でまだ見たことのない景色を』

会場のモニターに宣誓書が映し出されると、堂安選手本人が続ける。「まず、誰も成し遂げてないベスト16の壁を破ること、その先に僕たちの夢であるW杯優勝というものが見えてくる。僕の夢です」

堂安選手が書いた夢の宣誓書

そのためにどんな目標を立てたのだろうか。

「3年後は日本代表で10番を背負う」「6年後はキャプテンを任せられる存在になる」実現可能性が高い目標が並んだが、9年後に関しては少しトーンが変わる。

「32歳が3回目のW杯の年なので、33歳は違う目標を探す時なのかなと思っていて・・」

目前に迫ったW杯出場に向けて、今はそのことに集中しているはずだ。ただ、この先のキャリアプランについては、まだ明確ではないものの意識しているようだった。それがサッカーに関するものなのか、はたまたそうではないのか。そこにも注目していきたい。

一方で12年後は明確だった。

「やっぱりガンバ大阪にタイトルをもたらしたいとずっと思ってます」

育ててくれたことへの感謝の気持ちと、所属中にタイトルを獲得することができなかった悔しさがある。明確な時期を示しての日本復帰宣言。実現は大いに期待していいだろう。

そして最後に15年後、『次世代にバトンを渡す!』と書かれていた。その場にいる子供たちをはじめ、日本中の若者に向けられている。

夢の保証人として子供たちに真剣に向き合う

メインイベントである子供たちの夢の宣誓が始まった。

「サッカー日本代表になる」
「(堂安選手が所属する)PSVに入る」
「世界の食糧危機を救う発明をする」
「犬と一緒に入れる美味しいフレンチトーストのお店を開く」

夢を語るだけでなく、自分の夢に至るまでの過程を、3年単位の目標でしっかりと組み立てている。それを発表する姿もまた十人十色。緊張気味の子もいれば、ハキハキと喋る子もいる。

一生懸命に話す子供たちに対して、堂安選手は自らの成功体験を伝えるのではなく、子供たちそれぞれに合わせて的確にコメントしていた。大胆な発言がメディアに取り上げられることが多い選手であるだけに、夢を持つことの大切さを伝えつつも現実的なアドバイスを贈っている姿が、とても印象的であった。

憧れの堂安選手の話に聞き入る子供たち

強気な発言は成長のため 夢はまだ何も叶っていない 

「やっぱり特別なものですか?背番号10は?」と司会者に問われると、次のように返した。

「そうですね、やっぱりみんな10番が特別であることはわかってると思いますけど、10番を背負ってプレーしたオリンピックの時は、 すごい心地いいプレッシャーで、自分がやらなくちゃいけないって思わせてくれました」

10番へのこだわりは強い。

「プレッシャーとか焦りがないと成長しないと思うので、 それは常に自分に言い聞かせて、こうして人が集まる場所だからこそ、そういう発言をするようにはしています」と挑戦を続ける堂安選手らしい言葉が続く。

20歳の頃に15年プランをノートに書いたことも語られた。そこに書いたことは全く叶っていないそうだ。では、そのノートはどのような意味を持っているのだろうか。堂安選手は「書いたことを後から振り返り、反省材料になる」と考えている。さらに、そのようなノートを書く上で大事なことを問われると、「自分しか見ないノートなので嘘は書かないことです」と即答した。

一見すると夢を叶え続けてきたように見える堂安選手だが、本人が言うのだから叶っていないのだろう。ノートにどのような目標が書かれていたのかについては触れなかったので定かではないが、今の堂安選手を上回る高い目標が書かれていたのだと考えられる。イベント終了後に行われた囲み取材では「代表での初ゴールのときは周りの反響が凄くて、自分のためだけにサッカーしてるのではないと改めて感じた。」と話したが、日本を背負って立つ覚悟を感じる。自身がW杯に出場するためには「このままではいけない」「何かを変えなければいけない」と常に進化を続ける姿勢を見せた。

最後に、このイベントで子供たちに一番伝えたかったメッセージは何かと問われると、こう答えた。

「本当に簡単な夢ではないということです」

決して「簡単ではないから叶わなくても仕方がない」という意味ではないだろう。筆者には、叶えることは簡単ではないが、目標を持ってやるべきことに取り組み続ければ、自分たちなら叶えられる夢だということの裏返しに聞こえた。その言葉は子供たちへのエールであるとともに、自身が掲げる目標「W杯ベスト8進出」を誓うようだった。

関連記事