筑波大学女子ラクロス部―2部昇格、その壁を超えるために―

4月から新学期を迎え、大学に進学した人も多いだろう。そして、大学では高校では経験したことない部活動をしてみたいと思っている人も多いに違いない。

ラクロスは大学入学を機に始める人が多いスポーツである。1チーム10人の選手で構成され、クロスと呼ばれる棒の先に網のようなものをつけた道具を使ってボールを運び、ゴールを決めるゲームである。

このラクロスという競技で、関東学生リーグの2部昇格を目指して日々活動しているのが、筑波大学女子ラクロス部である。悲願の昇格を叶えるために、どのような思いを胸に日々過ごしているのだろうか。

松丸碧愛主将(4年生・埼玉県立浦和第一女子高校出身)、大坂雪乃ゲームキャプテン(4年生・愛知県立明和高校出身)、OG でヘッドコーチの武田真歩氏(愛知県立豊橋東高校出身)の3人に話を聞いた。

ラクロスはコンタクト・スポーツ、安全を確保するため眼鏡やマウスピースは必須

選手一人ひとりがゲームを考えられるチーム

松丸さんは主将で、大坂さんはゲームキャプテンということですが、お二人の役割の違いはどのようなものですか。

松丸碧愛主将(以下、敬称略)「キャプテンはチーム運営を中心にチームビルディングなどを担当し、ゲームキャプテンは試合のゲームメーキングや戦術を担当します。今までは、主将だけがゲームメイキングや戦略を決めていたのですが、今シーズンからそれぞれ別に担当を決めました。」

大坂雪乃ゲームキャプテン(以下、敬称略)「私たちのチームは、選手一人ひとりがゲームを考えることができるチームなんです。だから、ゲームキャプテンとして私が戦略を一方的に決めるのではなく、みんなが考えた戦術を1つにまとめる役割になりたいです。」

武田さんはOGで、現在社会人でいらっしゃいますが、お仕事をしていて「大学時代、ラクロス部だったんだ」という人とお会いになることはよくあるのでしょうか。

武田真歩氏(以下、敬称略)「はい、私は子供たちを相手に仕事をしているのですが、子供のお父さんやお母さんが「大学時代ラクロスやってましてね」と話して、その流れで私もラクロスやってました、と話が盛り上がることが何度かありました。」

キーパーとディフェンスがゴールを守る

朝6時から練習がスタート

ラクロス部の方の、授業がある日の1日のスケジュールはどのような感じなのでしょうか。

松丸「朝4時半くらいに起きて、5時40分にグランドに集合、6時から8時までがラクロス部の練習時間です。その後、8時40分から16時くらいまで授業に出てから、アルバイトに行ったりして、23時くらいに寝ます。

 女子ラクロス部の練習時間は朝6時からと早いのですが、その後に朝一限の授業から出席することができますし、夕方からアルバイトも行けるのが良いところだと思います。

 筑波大学の学生のほとんどは大学の近くの寮やアパートに住んでいるので、自転車で10分も走れば、練習場に行くことができます。だから朝早くから練習できるのですが、冬の朝などはまだ暗くて寒いので、今日は練習に行くのがだるいなぁ、と思うこともあったりします。でも、練習中にきれいな朝日が昇る瞬間を見ることができますし、何よりも私自身がこのラクロスのチームが大好で、そこに自分の居場所があることがすごくがうれしいので、朝が早くても毎日練習に行けています。」

練習自体は朝の時間帯ですが、大学の部活だと対外的な業務などもありますし、大坂さんの場合は、次の試合の作戦を立てるためにミーティングする必要もあるかと思います。そうした場合は、皆さんの授業の合間や夕方に集まるのでしょうか。

大坂「はい。私の場合は、戦略部と呼ばれるラクロス部員数人と、授業の合間や夕方に集まることもあります。そうした場では自分たちの課題を見つけ出して、その課題を克服するために何をすべきか考え、改善点を考えることに最も多くの時間を使うことになります。そして最後に、プレーを改善するための練習メニューを決めてミーティングが終わるという感じですね。」

走ることで、チャンスが広がる

ラクロス部が好き、だから大けがも乗り越える

皆さんが筑波大学女子ラクロス部に入ったきっかけを教えてください。

松丸「高校時代はボート部に所属していました。でも、高校時代にボートはやり切ったと思ったので、大学に入ったら何か新しいスポーツを真剣にやりたいと思っていました。

 新歓期間にいろいろな体育会の部活に行ったのですが、ラクロスは初心者でも始められて上手になれるスポーツということで、すごく興味を持ちました。また、新歓期間中あったラクロス部の雰囲気が明るく、チームメイト同士がとても仲が良いことがわかったので、ここで4年間を過ごそうと思いました。」

大坂「高校時代、私は陸上の七種競技の選手でした。でも、大学では真剣に新しいスポーツに取り組んでみたいと思っていたんです。

 筑波大学に入学が決まって新歓期間が始まるまでの間に、いろいろ体育系の部活のことを調べました。そうしたらラクロスという競技があって、大学入学後に始める人が多いスポーツだということを知り、またこの競技なら、高校時代に鍛えた走ったり投げたりする力を生かせると思いました。

 新歓期間になり、女子ラクロス部を訪ねたところ、チームの雰囲気も良く、みんな仲がよさそうに見えたので、ここで最後の学生生活の4年間を過ごそうと考えて入部を決めました。」

武田「私も大学で新しいスポーツを始めたいと考えて、ラクロス部に入部した一人です。高校では陸上部で短距離の選手だったんですが、私自身は個人種目よりも、リレーの方が好きだったんです。

 大学に入った時にチームスポーツをやりたいと思い、ラクロス部に出会いました。ラクロスはほとんどの人が大学入学後からプレーするので、そこから日本代表選手になることも夢じゃないよと新歓で当時の先輩方にいわれて、それなら本気でこれからの4年間この競技に打ち込んでみようと思いました。」

ラクロスをしていて、一番嬉しかったことと一番悔しかったことはどのようなことですか。

松丸「嬉しいこととは、少々違うかもしれませんが、私はこのチームが大好きなので、練習中はもちろん練習時間以外でチームメイトと話をしている時間が一番楽しいです。チームメイトとは練習時間以外でも、よく一緒にお茶をしたりご飯に行ったりします。私が大学の4年間で、一番長い時間を一緒に過ごしているのは、女子ラクロス部のチームメイトあることは間違いないですね。

 一番悔しかったのは、私が2年生の4月に膝の前十字靭帯を断裂して、約10か月間プレーができなかったときです。手術とリハビリをした結果、再びプレーできるようになったのは、けがをした約1年後でした。
 そのけがをした時でも、ラクロスをやめることは全く考えていませんでした。チームが好きだったから、そこから離れたくなかったんです。だから、自分は全く動けなくても、毎朝のラクロス部の練習には行っていました。そのおかげで、チームに復帰するモチベーションをずっと保ち続けられたんだと思います。」

大坂「自分が上級生になってから感じることなんですが、後輩の選手が今までできなかったことができるようになったり、試合や練習で良いプレーをできるようになる瞬間を見ているのが、とても嬉しいです。

 一番悔しかったことは、自分が1年生の頃に経験した2部と3部の入れ替え戦でしょうか。当時の主将や副主将がけがでプレーできなくて、1年生だった私ともう1人のチームメイトがプレーをすることになりました。もちろん1年生の私たちはラクロスを始めて間もなかったため、良いプレーをすることはできません。せめて思い切り走り回れれば良かったのですが、私が試合中に足をつってしまって、それもできない状態でした。結局その入れ替え戦は負けてしまったのですが、全くチームの力になれなかったことがすごく悔しかったです。」

武田「今まで何回かチャンスはあったのに2部に昇格できていないということが、やはり悔しいですね。自分が選手としてプレーしているときにも、何度か昇格のチャンスはありました。また、卒業後にラクロス部のコーチとして関わるようになってからもチャンスはあったのですが、大事なところで1点が取れなかったり、勝ち切ることができなかったりして、2部昇格を果たせないことが続いています。

 その一方で、その悔しさがしっかりと次の世代へ伝えてられていることが、とても心強いのも事実です。だから世代を超えてみんな本気で2部昇格を目指していますし、そのための環境も、コーチ陣を含めて、整ってきていると思います。」

ラクロスはクロスと呼ばれるスティックを操り、ゲームを進める

4年間、本気になれる場所

4月に新入生が入学して、今は新歓時期です。新しく筑波大学に入った人に、女子ラクロス部はこんなところだよと伝えていただけますか。

武田「みんな本当に初心者から始めるので、最初は上手にプレーできないのは当然です。でも大学の4年間、本気でラクロスをして、本気で2部昇格を目指す、という強い心を持った人に入ってきてほしいです。

 自分が社会人だから感じるのかもしれませんが、大学の4年間って「最後の青春」だと思うんです。その4年間、真剣に打ち込んで何かをしたい人に、ラクロス部はピッタリだと思います。」

松丸「大学生の女の子が一人で体育会の部活に入るのは、かなり勇気がいる決断だと思います。でも、この部には、大学から始めたラクロスという競技に真剣に取り組んでいる仲間がいます。自分がそうした仲間たちに恵まれているというのは、本当にありがたいことだと思いますし、同じような経験を今年の新入生にもしてほしいですね。」

大坂「女子ラクロス部は仲間ができて、自分の成長が感じられる場所です。人に自分の意見を伝える難しさと楽しさを経験しますし、なにより団体競技なので、仲間と力を合わせて勝利を目指すことができます。そうしたことが繰り返されると、自分の周りに仲間がいることに自然に感謝ができるようになるんですね。

 部活以外で周囲の人の支えを感じられる場って、学生生活ではあまり多くないのだと思います。でも、この部ではその貴重な経験ができるところです。」

松丸「また、プレーヤーだけでなく、例えば将来トレーナーになるために経験を積みたいという人、あるいはチーム運営の面で選手の役に立ちたいという人がいれば、女子ラクロス部全体で大歓迎しています。

 現在、マネージャーとして選手を支えている人が一人しかいない状態なので、例えばトレーナーになりたい人はすぐに選手に対応することができます。また、学校の垣根を越えてラクロス協会としてトレーナー研修が開催されることもありますので、そうしたところで学ぶこともできます。筑波大学内でもトレーナー研修が開催されるので、学生のうちから、トレーナーとしての経験を積むことができます。

 また、データ分析が得意な人なら、アナリストという形で戦術を決めるお手伝いをしていただくことも可能ですし、PRや広報に興味のある人なら、女子ラクロス部のSNSを担当することもできます。

 どのような形であれ、筑波大学女子ラクロス部に入った方は、4年間充実した大学生活が送れるよと伝えたいですね。」

悲願の2部昇格へ向けて、新たなシーズンが始まる

筑波大女子ラクロス部の悲願である2部昇格。何度も挑戦しては跳ね返されてきた厚い壁ではあるが、現在の部員には悲観的な雰囲気や、緊張した様子は一切見られない。日々プレーの問題点を見つけ、改善を繰り返す姿勢が日常のものとなっていることが伺えた。再びの戦いの舞台へ、新しいシーズンはもう始まっている。

(写真提供 筑波大学女子ラクロス部) (インタビュー・文 對馬由佳理)

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