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荒川静香さん、羽生結弦さんらも幼少期に出場…仙台の小学生大会で垣間見えた「努力」の結晶

 2月11日、仙台市泉区のアイスリンク仙台で、「第34回宮城県小学生フィギュアスケートフリー競技会」が開催された。宮城県スケート連盟に登録している小学1〜6年生の男女37人が出場し、次々とフレッシュな演技を披露した。

 本大会は、仙台で開催される地方競技会の中でも特に長い歴史を誇る。県スケート連盟によると、小学生が練習の成果を発表する場を設けようと、1989年に初開催された。第1回大会には、当時小学校低学年だった荒川静香さんや荒井万里絵さんも出場していたという。  

 第2回以降も本田武史さん、羽生結弦さんら、仙台で育った名選手たちが出場してきた。そんな伝統ある大会で輝いた、次世代を担うスケーターたちを取材した。

「羽生君を目指さなければいけない」仙台の地で追い求めるスケーター像

 2名がエントリーした「Aクラス男子」では、河本英士選手(仙台FSC/聖ウルスラ学院英智小5年)が60.32点で優勝した。全日本ノービス選手権大会に3年連続出場中で、昨年は初参戦のノービスAで11位(35名出場)に入った有望株だ。

 この日は、「自分の脳みそでは調子が悪いなという感じがあった」と不安を抱えながら臨んだ競技直前の練習で、ジャンプに苦戦した。本番でも綺麗にジャンプを揃えることはできず、「もっと練習しないといけない」と唇を噛んだ。

 そんな中、収穫もあった。重点的に取り組んできたトリプル2種(トリプルサルコー、トリプルトーループ)のうち、トリプルサルコーをダウングレード(規定の回転数より2分の1以上の回転不足)こそ取られたものの着氷。全日本ノービスでは構成に入れていなかったトリプルジャンプに果敢に挑み、確かな手応えをつかんだ。

ジャンプに挑む河本

 また、武器であるスピンは丁寧にこなし、足替えのコンビネーションスピンはレベル4を獲得。「手の使い方とエッジの深さを意識できた」というステップでも魅了した。この日演じたプログラム「The 1812」はナポレオン率いるフランス軍をロシア帝国が撃破するストーリーを描いた楽曲で、激しい曲調の部分も多い。曲の背景を理解した上で「勝った喜びを表現する」ことを心がけ、荘厳な音楽に合致したダイナミックな滑りを見せた。

 昨年12月、同郷の大先輩である羽生さんの演技を初めて目の当たりにした。アイスリンク仙台で行われた地方競技会「仙台市長杯」に出場した際、羽生さんのサプライズ登場に立ち会ったのだ。「次元が違う」と驚かされた一方、「これまであまり意識していなかったけど、羽生君を目指さなければいけないと思えた」と身の引き締まる思いに駆られた。  

 当面の目標はトリプルジャンプの種類を増やし、確実性を高めることだが、目指すのは羽生さんのような「万能なスケーター」だ。「オリンピックで金メダルを取る」という大きな夢に向かって、理想を追求し続ける。

若き四大陸王者に憧れる小学5年生は急成長中

 「Aクラス男子」で2位だった上田将生選手(仙台泉F.S.C./仙台市立将監小5年)は、優勝した河本に0.39点差と肉薄した。昨年の全日本ノービスではノービスBで6位入賞(34名出場)を果たしており、将来を嘱望される選手の一人だ。  

 この日はジャンプで持ち味を発揮。前半は転倒もあったもののダブルルッツやダブルループを着実に決め、後半はダブルルッツ+シングルアクセル+ダブルループのジャンプシークエンスとダブルフリップ+ダブルトーループのコンビネーションジャンプを降りた。

勢いを保ったまま滑り切った上田

 ジャンプ以外の面では、「Run To The playoffs」のメロディーに乗せたスピード感あふれるスケーティングが光り、ドラム音に合わせポーズを取るなど細かい工夫も見られた。全日本ノービスの頃よりレベルを上げたスピンも安定しており、総合力の高さが際立った。

 目標としている選手は、四大陸選手権で歴代最年少優勝を果たした三浦佳生選手。「三浦選手のようにスピードがあって、高さ、幅のある綺麗なジャンプを跳べるスケーターになりたい」と話しており、日頃から三浦の滑りを動画で見て参考にしているという。

 また、同学年の河本は「ライバルではなくて友達」だというが、「良い刺激を受けて、練習するきっかけになっている」と切磋琢磨できる環境を成長につなげている。今後も互いに高め合いながら、仙台の男子フィギュアスケートを盛り上げてくれることだろう。

可愛らしさ、美しさ、力強さ…努力の先にある唯一無二のスケーティング

 「ジュニアクラス女子」に唯一エントリーした佐々木愛結選手(仙台FSC/東北インターナショナルスクール6年)は、53.57点をマークした。昨年12月の仙台市長杯でも中高生に混じってジュニア女子にエントリーし、ほぼノーミスの演技で4位(9名出場)に入るなど、この世代を引っ張る存在となってきている。  

 「小学生として出られる最後の大会だったので、後悔のない演技をしたかった」という今大会。スピンやコンビネーションジャンプでミスがあり、「後悔のない演技」とはならなかったが、スケーターとしての個性を光らせた。

映画の世界観に沿った振付を披露する佐々木

 前半は綺麗なジャンプが続き、2回転ジャンプ4種(ルッツ、アクセル2本、フリップ、ループ)はいずれもプラスの出来栄え点を獲得した。後半の冒頭では、具材を切って鍋に入れ、混ぜて味見をする個性的な振り付けを披露。アニメーション映画「レミーのおいしいレストラン」の世界観を再現する可愛らしい演技をジャッジにアピールした。また練習を重ねてきたコレオシークエンスでは、美しさも表現してみせた。

  「努力」。中学生になる来年度の意気込みを聞くと、力強い二文字が返ってきた。「跳ぶことが好きなのでジャンプを頑張りたいし、スピンも磨きたい」と、貪欲に高みを目指す。努力を重ねるごとに、佐々木にしか滑れないプログラムが少しずつ完成に近づいていくはずだ。

細部までこだわる演技で魅了した佐々木

 選手寿命が長いとは言えないフィギュアスケート。小学生とはいえ、一瞬たりとも無駄にできる時間はない。今回取材した選手たちも、大会に向けほぼ毎日氷に乗り、短期間で新たなジャンプに挑んだり、技の難易度を上げたりして積極的にスキルアップを図っていた。

 どんなスケーターにも幼少期があり、成長過程がある。経験をどう生かし、実力をどう伸ばしていくか。そして、同じ仙台のリンクで育った先輩たちのように、世界へ羽ばたくことはできるか―。彼らのスケート人生は、まだ始まったばかりだ。

(取材・文・写真 川浪康太郎)

読売新聞記者を経て2022年春からフリーに転身。東北のアマチュア野球を中心に取材している。福岡出身仙台在住。

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