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台湾、沖縄で鍛えた“メンタル”が武器 「17年ぶり快挙」の翌年…長い冬を越えた青森大が好発進

冬に蒔いた種が芽吹きつつある。2年連続の全日本大学野球選手権出場を目指す青森大は、北東北大学野球春季リーグ戦の開幕節でノースアジア大に連勝し、幸先の良いスタートを切った。1戦目は4-0で完封、2戦目は5-4でサヨナラ勝利。オフシーズンに着手した「新たな取り組み」の効果が色濃く現れる2試合だった。

4年生コンビの力投の裏に「メンタルトレーニング」

1戦目ではエース・小金井凌生(4年=日体大荏原)が9回2安打11奪三振無失点と圧巻の投球を披露した。味方のミスで走者が溜まる場面もあったが、ツーシームを有効的に使いながら落ち着いて0を連ねた。

上々のスタートを切り充実した表情を浮かべる小金井

2戦目はそんな今秋ドラフト候補右腕の力投に「さすがだなと思う反面、悔しさもあった。『青森大は小金井が投げると勝てるけど他の投手が投げると勝てない』とは言わせたくない」と燃えた石川大樹(4年、駿台甲府)が奮闘。3点ビハインドの4回途中から救援登板すると、9回まで再三のピンチを背負いながらも本塁を踏ませず、サヨナラ勝利を呼び込んだ。

二人が投球を振り返る際にいずれも口にしたのが、「メンタルトレーニング」という言葉だ。青森大は沖縄でのキャンプ期間中にメンタルコーチを招聘していた。

助言を参考にした小金井は「以前は連打されたり四球が続いたりすると『点を取られたらどうしよう』と焦ってしまっていたのですが、今は良い意味で何も考えずに投げています。その瞬間、相手と全力で勝負することを意識すると無駄な力が入らなくなったんです」と効果を実感。緊張しやすい性格の石川は、メンタルコーチから教わった「鏡の前で自分の顔を見て笑う」習慣を実践した結果、接戦でも「楽しみながら」投げることができたという。

久々のリーグ戦登板を楽しみながら投げた石川

昨年12月に初めて実施した台湾遠征も大きな転機だった。言語の壁や食文化の違いと向き合いながら過ごした7泊8日を終え、「『生きる力』が身についた」と話していた石川は、早くもそれをマウンド上で体現。1死も取れずに降板した2年秋のリーグデビュー戦以来となった登板を、「『このチームで勝ちたい』という思いで最後まで集中力を切らさなかった。忍耐力、我慢強さが今日出たと思います」と胸を張って振り返った。

プレッシャーはねのけた新正捕手が見せる逆襲劇

「8番・捕手」に座り、2戦目で2度の同点打を放つなど2試合計6打数4安打4打点と快音を響かせた打のヒーロー・中島大成(4年=日本航空石川)は、「普段は打てないのでたまたまです」と謙遜しつつメンタル面の変化を強調した。

昨春はチーム防御率0.90をマークした盤石の投手陣が17年ぶりとなる「春の優勝」を果たす原動力となった。正捕手・鈴木颯大(当時4年)の力が大きかったとあって、「主戦二人が抜けたとはいえ投手は残っている。今年バッテリーが崩れて優勝できなかったら自分のせい」とプレッシャーに押しつぶされかけた。それでも、メンタルトレーニングを経て「先の結果ばかりを追わずに、今できることに集中しよう」と意を決してからは迷いが消えた。

好機で何度もチームを救った中島

捕手として投手陣とのコミュニケーションは欠かさない。中でも、プライベートでも仲の良い石川とは苦楽をともにしながら「ラストイヤーはやり返そう」と励まし合ってきた。「お互い期待されながらも思うようにいかないことが多くて、周りから『ああでもないこうでもない』と言われ続けてきた。その二人で苦しい試合を勝てたのは、1勝以上に大きな価値があると思います」。不屈の精神がバットにも乗り移った。

「らしさ」と「役割」を重視する新・青森大の強み

打線の核になるのはプロ入りを狙う1番・川満真(4年=糸満)と昨秋個人四冠に輝いた3番・土方謙伸(3年=東海大静岡翔洋)だが、開幕節ではその上位打線頼みにならない攻撃が展開された。

1戦目で先制適時打を放った副将の久永浩介(4年=青森山田)は「今年はバランス良くというよりは、それぞれがずば抜けた方向に伸びる『らしさ』のあるチームを目指しています。土方は大きいの(長打)を狙うのが『らしさ』だし、下位打線には下位打線の役割がある」と話す。

攻守にわたって「役割」に徹する久永

下位打線には守備や走塁に長けた選手が多い。それぞれの「らしさ」を追求する一方、上位打線につなぐ「役割」も怠ってはならない。そこでキャンプ期間中、下位打線を打つメンバーで話し合い、「3、4打席に1回は安打でなくとも出塁する」「上位打線と同じ抑えられ方をしない」などの決め事をした。それを形にしたのが中島や、熾烈な右翼手争いを制して開幕スタメンに抜擢され、走攻守で勝利に貢献した中村新(2年=知内)だ。

1戦目で9番に座り好打、好守、好走を披露した中村

2戦目の朝には三浦忠吉監督の提案で急遽、野手間の「グループワーク」を行った。試合中はビハインドの場面でも「今日は野手の日だぞ!」との声がベンチから飛び交った。投手や主軸打者だけに背負わせることなく、全員が役割を考えるチーム作りは着々と進んでいる。

「迷走」時期乗り越えるべく奔走、見えてきた光

青森大の冬は長い。11月中旬以降は積雪の影響でグラウンドを使えないため、長距離遠征を繰り返して実戦機会を確保する。今年はそれに加え、国際交流活動の一環で台湾遠征を実施。さらに沖縄でのキャンプの期間を例年より延ばし、約2か月の間にメンタルコーチや外部コーチを招いたほか、怪我予防などにつながるピラティスも導入した。

新チーム発足当初、「クレイジー」をテーマに掲げて勢いに乗った前の代を真似ようとして「迷走」した時期があった。見かねた三浦忠吉監督はチームが一つになるための「きっかけ」を作ろうと様々な仕掛けを施した。優勝への道のりはまだまだ遠いが、「きっかけ」を掴みつつある選手は続々と現れている。

大城盛龍(3年=興南)が考案したヒットパフォーマンスで盛り上がるベンチ

「今年は勝つ喜びを知るメンバーが多く、『勝ちたい』という気持ちが伝わるチームです」とは中島。群雄割拠の北東北で白星を積み重ね、来月、「優勝」という名の大輪の花を咲かせる。

(取材・文・写真 川浪康太郎)

読売新聞記者を経て2022年春からフリーに転身。東北のアマチュア野球を中心に取材している。福岡出身仙台在住。

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