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元中日・吉見一起氏 プロ野球OBクラブ新企画に登場 トークショーで語った侍ジャパンでの経験とドラゴンズへの”アドバイス” とは?

8月14日、東京・墨田区の曳舟文化センターで日本プロ野球OBクラブ主催のイベント、「〜MEMORY COLLECTION~」が初開催された。

記念すべき第1回目のゲストは中日ドラゴンズのエースとして活躍し、一昨年に現役を引退した吉見一起氏。

現役時代の活躍を知るドラゴンズファン、プロ野球ファンが貴重な交流の時間を楽しんだ。

(取材協力:日本プロ野球OBクラブ、取材 / 文:白石怜平)

2年半ぶりの対面式イベント開催

本イベントは、日本プロ野球OBクラブ(以下、OBクラブ)が主催するイベント。

OBクラブは2020年からのコロナ禍以降、対戦カードのOBと一緒に解説や選手とのエピソードを聞きながらTV観戦する会や、画面を通じ1:1で会話を楽しみながら思い出のグッズにサインを書いてもらえる「〜Autograph Collection〜」など、オンラインを中心としたイベントを行ってきた。

今回の「〜MEMORY COLLECTION~」は対面式のイベントで、ゲストOBのトークショーに加え、2ショットでの写真撮影そしてオプションでサイン会に参加できるなど、タイトルの通りOBとの記念に残るイベントである。

OBクラブが対面式のイベントを開催するのは2年半ぶり、19年12月の創立25周年記念パーティー以来となった。

第1回目のゲストは元中日・吉見一起氏

そして「〜MEMORY COLLECTION~」の記念すべき第1回目のゲストは元中日の吉見一起氏。

吉見氏は05年ドラフト希望入団枠でトヨタ自動車からドラゴンズに入団。08年から12年まで5年連続2桁勝利を挙げるなど、落合博満監督が率いた黄金時代後半のエースとして球団初の連覇(10年・11年)へ導いた。

今回ゲストの吉見氏も昨年「〜Autograph Collection〜」に参加した

その間2度の最多勝(09年、11年)に輝き、特に11年は投手4冠(最多勝・最優秀防御率・最高勝率・最多完封)を達成するなどMVP級の活躍を見せた。

20年に現役を引退し、現在は野球解説者やYouTubeチャンネル「吉見一起 コントロールチャンネル」で活動している。

加えて古巣であるトヨタ自動車硬式野球部のテクニカルアドバイザー、そして5月からは侍ジャパンU-12の投手コーチに就任するなど、指導者としてのキャリアも積んでいる。

「いい経験になりました」侍ジャパンでの10日間

当日、会場には約40人のファンが集まった。開場からすぐに席は埋まり、今か今かと待ち侘びる様子が見られた。

10時になり、イベントがいよいよ始まった。冒頭、OBクラブの公式YouTubeチャンネルでもMCを務め、この日の進行役を務める中嶋絵美氏が登壇した。開会の挨拶をした後に吉見氏を紹介。壇上に向かうと大きな拍手に包まれた。

会場は約40人のファンで席はすぐに埋まった

最初の話題は侍ジャパンでのコーチについて。吉見氏は7月29日から10日間、台湾・台南市で開催された「第6回 WBSC U-12ワールドカップ」(W杯)に投手コーチとして参戦した。

監督は現役時代共にユニフォームを着て優勝を味わった井端弘和氏。ドラゴンズ時代、幾度となくピンチを救ってくれた先輩と今度は監督・コーチとして日の丸のユニフォームを着ることとなった。

コーチとして子どもたちを指導するのは初めてという吉見氏。大会を終えたのがこの日からちょうど1週間前というタイミングでだった。

「残念な結果でした。アメリカは体格もレベルも圧倒的に違うなと感じました。最終回までは6-7と1点差(※最終的には6−21で敗戦)だったのですが、投手がいなくなってしまったんです。選手のやりくりの大変さを感じましたね」

この大会で侍ジャパンは、参加11国中7位に終わった。メンバー決定が大会の約2週間前と準備期間がとても短く、現地入り後も隔離期間がありチーム作りが難しい部分もあった。

また、選手の選考は最初「侍ジャパンU-12代表 全日本合同トライアウト ~デジタルチャレンジ~」と題し、公募で全国から動画にて送られた。井端監督や吉見コーチらが何度も動画を見て絞り込みを行い、トライアウトを経て最終的に18人が選ばれた。

動画で選考を行う難しさもさることながら、選手選考において今後の課題があったという。

「体格やボールの速さ、飛距離は個人差が出てきます。日本の野球は守備や走塁で相手の隙を突くことができます。そういうものでカバーしていくことが必要だと感じましたね。

また、今回選んだ中でリトルリーグから選抜した選手もいました。リトルリーグはランナーのリードや牽制がないんです。その子たちにとって通常のルールと違い慣れていないですし、準備期間も短かったので日本の良さを出せなかったと反省しています」

侍ジャパンでのコーチ経験について語る(左はMCの中嶋絵美氏)

井端監督と共に選手には生活習慣を指導することもあったそう。グラウンド外でも子どもたちと接することで、指導者のキャリアとしてまた1つ経験値が加わった。

「いい経験ができたかなと。もちろん勝ちに行ってはいますが、野球だけできればいいわけではないです。僕からも選手たちに伝えたので、いつかそこに気づいてくれればいいなという大会だったと思います」

現在のドラゴンズに向けた意見とは?

続いては、古巣であるドラゴンズについての話題に。現時点でセ・リーグ最下位と苦戦を強いられているが、現在の課題について問われると投手目線ならではの意見を述べた。

「軸になる打者がいないですよね。ただ、僕が教えられたのは『点を取られなければ負けない』。引き分けたら優勝できないと思うかもしれないですが、1勝142分けでも優勝できるんです。

投手陣が『自分の投球が出来ました』と言うのですが、負けたら意味ないと思います。なので投手陣ではないかと考えています」

現在、ドラゴンズのチーム防御率はリーグ3位の3.36(※8月26日現在)と決して悪い数字ではない。ただ、投手目線・そしてOBとして愛情があるからこその厳しい意見だった。

「先制点を取られないこと、これは必須です。あと3本柱である大野(雄大)投手・柳(裕也)投手・小笠原(慎之介)投手が貯金できていないので、まずは3人とも貯金をつくってほしいですね」

ドラゴンズ出身の投手として厳しいながらもエールを贈る

吉見氏がエースとして活躍し連覇を果たした10年・11年は、チーム打率がそれぞれリーグ5位・6位ながら防御率は両年ともリーグトップをマークし、投手陣を中心に守り勝っていた。自身の経験も踏まえて今後上位に上がるポイントについて語った。

「僕が現役の時も点が入らないと言われてたんですよ。投げている僕としては、我慢強く投げていれば点は取ってくれると信じていました。ただ、そのタイミングを僕はコントロールできない。

なので、『この回は大事だな。この回を抑えたら点を取ってくれる』といった先読みをしながらマウンドに上がっていました。あとは、点を取ってもらった次の回を大事にしてきたので、そこを必死に抑えることを徹底してきた結果勝つことができました。

試合の流れを読むというのは外にいると分かりづらいかもしれないですが、グラウンドにいれば分かると思います。僕でできたので今の選手たちもできるはずです」

先発投手は”ぽっちゃり”がいい!?根尾投手へのアドバイス

ドラゴンズの話題はまだまだ続く。続いては根尾昂選手の投手コンバートについて問われた。かねてから賛成と発言していた吉見氏は改めてこの話に及ぶと、「僕は大賛成です」と即答した。

吉見氏は自身のYouTubeチャンネルでの取材で、大島洋平選手・高橋周平選手と共に行っていた自主トレに同行し、根尾選手のキャッチボールを見ていた。放たれる球を見て、投手らしい球筋というのを感じていたという。

今後、投手として大成するために必要なことは何か。自身が見てきた例を踏まえて説いた。

「体格がまだ投手の身体じゃないです。実は投手ってスリムはダメなんです。体脂肪が少ない選手って一年間持たないんです。リリーフならまだ可能性はありますが、先発はダメです。

先発をするなら体脂肪をつけた方がいいと思います。要はスタミナです。僕が今まで見てきた選手でスリムな投手が1年間持ったピッチャーは1人も見たことないです」

現役時代の貴重な経験を交えて語る

吉見氏は共に黄金期を築いた名だたる先輩方を例に解説。ここで”えー”と思わず出る選手の名前も挙がった。

「少しお腹に乗って締まりが悪いなっていうくらいが実はいいんですよ。名前を出すと怒られるかもしれないですが(笑)、川上憲伸さんとかリリーフですが実は岩瀬(仁紀)さんもそうです。※ここで会場がざわめく

あと当時だと朝倉(健太)さんも。中田(賢一)さんも最初シュッとしてたんですけども、それじゃダメだって体脂肪をつけるようにして1年間投げれるようになりました。ただ、野手はお勧めしないです。逆に動けなくなると思います」

さらに盛り上がりを見せたトークショーが惜しまれながらも終了すると、撮影会そしてサイン会と交流の場が設けられた。参加したファンの方々からもSNSで吉見氏と交流できたことを喜ぶ投稿も見られるなど、大盛況のうちに終了した。

OBクラブでは、全国各地で野球教室の開催を再開するとともにオンラインでのイベントも継続するなど、時代やファンのニーズに合わせた企画を行っている。

「〜MEMORY COLLECTION~」でも、今後さまざまなプロ野球OBが登場する予定である。再度スタートを切ったOBクラブの活動に今後も注目していく。

(おわり)

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