「野球を通じて平和の重要性も伝えたい」九州の地でポニーリーグ各年代日本代表が決定
ポニーリーグの年代別日本代表が九州の地で決まることには大きな意味がある。野球の裾野拡大にとどまらず、“平和の重要性”を世界へ訴えることにも繋がるからだ。長崎・佐賀の各会場で行われた選考会の場において、地元の人々が胸に抱く思いを語ってくれた。

~九州から世界へ羽ばたく野球選手が誕生して欲しい(ポニーリーグ九州連盟局長・大原和喜氏)
「“九州の野球人”にとって、世界を身近に感じられる大きな舞台になっています」とポニーリーグ九州連盟局長・大原和喜氏は嬉しそうに語り始めてくれた。
5月9-10日の2日間に渡り、長崎・佐賀の8会場9球場で『広澤克実杯・全日本地域対抗選手権大会・兼・日本代表選手選考会』が開催。各年代ごとに構成された全国6地区の選抜チームの参加336人中から、U15が18名、U14とU13が各15名の日本代表候補が選出された。
「九州や沖縄というのは、関東や関西といった“中央都市”に比べると物理的に遠い場所にある。普通に考えれば、日本代表選考会はそういった場所で行われることが多いはずです。長崎・佐賀で開催できることに、“やりがい”と“誇り”を感じます」
初日の開会式は、長崎県営野球場・ビッグNスタジアムで行われるのが恒例となっている。「プロ野球公式戦も開催される、25,000人収容の球場を使用できることが本当に嬉しいです」と続ける。
「選手・関係者には、参加したことを大事な思い出にしてもらいたい。九州にはみずほPayPayドーム福岡もありますが、ビッグNスタジアムも負けないくらい立派な球場です。開会式やプレーができたことは、ずっと忘れないと思います」

同大会は2023年から長崎・佐賀を中心に行われるようになった。以前はリーグ所属チームのグラウンドも活用して大会運営をしていたが、「高校野球を開催できるレベルの素晴らしい球場でプレーさせてあげたい」という思いから、現在の形となった。
今回は長崎県のビッグNスタジアム、SUNボールパークかきどまり、諫早市第1野球場、同第2野球場、松浦球場。そして佐賀県では、ひぜしんスタジアム、みゆき球場、鹿島市民球場、佐賀ビクトリーGの合計9球場を使用した。
「5月の九州は日差しは強いですが、風が爽やかで野球をするには最高の季節。移動距離が短い範囲にある球場で大会開催できるのが強みでもあります。地元の野球関係者の方々も、本当に力強くサポートしてくれます。『九州の野球を盛り上げたい』という思いが1つになって、ここまでの大会が開催できています」
「九州の野球熱がもっと高まって、世界へ羽ばたくような選手が1人でも誕生して欲しい」と続ける。
「ポニーリーグ加盟団体数が、現状は九州全体で22団体です。宮崎は1団体、熊本と鹿児島にはまだ存在しません。この数が少しずつでも増えて行ってもらいたい。向上心を持ち続け、素晴らしい選手を育成していきたいと思います」

~スポーツは平和を伝える重要な手段(長崎市長・鈴木史朗氏)
「長崎で決まった日本代表が世界で活躍する。平和を広げる意味でも素晴らしいことだと思います」と大会の意義を強調してくれたのが、開会式に出席していた長崎市長・鈴木史朗氏だ。
「100年に一度の元気づくり」を掲げる鈴木市長はスポーツに対する理解が深く、開会式では選手達を温かい眼差しで見守っていたのが印象的だった。
「スポーツは平和を伝える重要な手段だと思っています。『スポーツで感動を共有する』ことは、国境や言葉といった全てのものを乗り越えられます。野球を通じて世界の人と交流するということは、重要なことで大きな力を発揮すると考えています」
長崎市は広島市と共に、世界に2ヶ所しかない被爆都市。鈴木市長はゴールデンウィーク中に米国・国連本部で行われた核兵器不拡散条約(NPT)運用会議に出席したばかりであり、平和への思いを改めて語ってくれた。
「被爆の現実を伝え続けるのが我々の重要な役割であり、それこそが平和にも繋がると信じています。長崎の地でポニーリーグ日本代表が決まり、その選手達が世界を舞台に活躍する。これは平和を広げる意味でも意義があると思います。こういう大会を長崎で行ってくれるのは、スポーツの枠を超えて非常に意義があることです」
開会式が行われたビッグNスタジアムは、平和記念公園に隣接した場所にある。世界へ向けてメッセージを発信するには最適な場所に思える。「ポニーリーグさんには、未来永劫、長崎の地を使ってもらえればと思います」と笑顔が絶えることはなかった。

~野球を続けるためにも大舞台に立った“喜び”が必要(佐賀ビクトリー監督・古澤豊氏)
「選手達はどこまで考えているかは分かりませんが、ビッグNスタジアムでの経験は小さくないと思います」とは、九州の名門・佐賀ビクトリーを率いる古澤豊監督だ。
2010年のチーム創設から関わり、指揮官としては今季11年目を迎えるベテラン監督。2023年の第1回エイジェックカップを制するなど、実績と経験が豊富な名将の言葉だけに重みを感じさせる。
「九州にはソフトバンクというNPBを代表する球団があります。選手達にとって身近な場所にある憧れのチーム。福岡のPayPayドームを本拠地にしていますが、ビッグNスタジアムで公式戦を開催することもあります。そういう場所で開会式や試合をできるのは、“喜び”であり大きな“目標”になるはずです」
「僕自身、長崎の学校でコーチを務めていたこともあるので、思い入れが強い球場でもあります」と笑顔を絶やさない。
「佐賀ビクトリーを指導していて常に考えているのは、『選手達に長く野球を続けてもらいたい』ということです。高校以降の進路は選手各自に任せていますが、進学先でも野球を続けて欲しい。できることなら大学、そしてプロや社会人といったその先のステージに進めれば最高だと思います」

「大きな大会での素晴らしい経験が、野球を続けるためのモチベーションの1つになってくれたら嬉しい。またプロ野球選手と同じ球場に立てた“喜び”も忘れないと思います。小さなことかもしれないですが、積み重なることで厳しい日常にも打ち勝つことができるはずです」
「長く野球を続けてもらうためにも、“喜び”“楽しみ”は絶対に必要。もちろん、頑張れるための“抗体”をつけるために厳しいことも言いますけど(苦笑)」と付け加えてくれた。
また、「ポニーリーグ九州連盟の熱意と選手・関係者への気遣いから」と、長崎・佐賀での大会開催への経緯についても教えてくれた。
「『移動を考えて、長崎・佐賀で大会をしませんか?』と、お話はさせていただきました。選手・関係者にとって最も負担になるのが移動です。長崎・佐賀なら30-40分圏内での車移動が可能。九州という遠い場所での大会開催という大英断をされた、日本ポニーベースボール協会のチャレンジ精神には頭が下がります」

~「野球が好き」という気持ちを長く持ち続けて欲しい
日本代表選手達は、『ポニーアジア選手権(アジア・パシフィックゾーン・チャンピオンシップトーナメント)』へ出場(U13、14が6/16、U15は6/22から開催)。頂点に立てば、『ワールドシリーズ』(米国開催)への出場権を得ることができる。
「各大会で結果を出してくれれば嬉しいです。九州連盟からも多くの選手が出場予定なので、活躍を期待します。しかし忘れてはならないのが、『野球が楽しい、好き』という気持ちを持ち続けることです。それによってレベルアップの速度も飛躍的に高まると思います」(ポニーリーグ九州連盟局長・大原和喜氏)
「日本代表選手を目指したことは素晴らしい経験になるはず。選考から漏れた選手も、自分の現在位置が見え、今後に活きると思います。日本代表選手は日の丸を背負って戦うわけですから、懸命にプレーして日本野球の素晴らしさを見せて欲しい。それによって世界へ“平和”を伝えることができれば最高です」(佐賀ビクトリー監督・古澤豊氏)
高校野球の甲子園球場や学生野球の神宮球場のように、各カテゴリーには“聖地”と呼ばれる場所が存在する。ポニーリーグにとっては、夏の全日本選手権大会を行う東京・江戸川区球場と共に長崎・九州が当てはまるかもしれない。

「“九州愛”があるので盛り上げたい気持ちは強いです。謙虚に足元を固めながら、世界へ通用するような選手が出るような環境にしていければと思っています」と、古澤監督は将来の夢を語ってくれた。
間もなく始まるアジアでの戦いにおいて、九州の地で選ばれた選手達がどのような戦いを見せてくれるかに注目したい。そして今大会に出場した選手達が野球を続け、素晴らしい活躍をしてくれる日が今から楽しみでもある。それによって、野球を通じて平和を伝えることもできるはずだ。
(取材/文/写真・山岡則夫、取材協力/写真・日本ポニーベースボール協会)
