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部員34人中、宮城の高校出身者はわずか3人…東北大硬式野球部の「仙台二高同級生コンビ」は“宮城で文武両道”を貫く

 東北大は仙台市にキャンパスを構える国立大でありながら、近年は関東の高校出身者が増えてきており、東北の高校出身者は減少傾向にある。仙台六大学野球連盟に所属する硬式野球部も例外ではない。部員34人(選手登録の新2〜4年)の内訳を出身高校の地域別に見ると、関東が18人で最も多く、東北は2番目に多い10人。また都道府県別での最多は埼玉の6人で、東京(5人)、茨城(3人)、宮城(3人)と続く。

 宮城の高校出身者である鈴木杜朗内野手(新3年=仙台二)、道下大洋投手(新3年=仙台二)、佐藤昴投手(新2年=仙台一)はいずれも新チームの主力を張るであろう実力者。中でも仙台二の同級生コンビである鈴木、道下は「宮城の高校からもっと入ってきてほしい」と声を揃える。

 高校時代の鈴木と道下は硬式野球部のチームメイトで、2、3年次はクラスメイトでもあった。高校野球引退後、鈴木が「大学でも野球をやろう」と道下を誘い、二人で東北大を目指すことに。ともに1浪の末合格を果たし、同じ年に同大硬式野球部に入部した。

 大学3年目のシーズンを迎える今年、鈴木は4番打者、道下は主戦投手として新チームを投打で牽引する存在となりそうだ。春リーグ開幕を前に、二人に話を聞いた。

大学2年から「不動の4番」に座る男の奮闘

 高校時代から県内の注目選手として名を馳せていた鈴木は、大学でも1年次から活躍。1年秋は主に「5番・指名打者」でスタメン出場を続け、打率.257(35打数9安打)、1本塁打の好成績を残し指名打者部門でベストナインに選出された。

 昨年は春秋共に全試合で4番に座った。春は1年秋を上回る打率.285(49打数14安打)をマークし、2季連続となる本塁打も記録。秋は打率.200(35打数7安打)、0本塁打と成績を落としたものの、4年生が多く名を連ねる打線の中で大きな存在感を示した。

バットを構える鈴木

 1年を通じて痛感したのは、4番を打つことの難しさだ。4番は好機で打席に立つことが多い上、相手バッテリーの配球は他の打順と比べて厳しくなる。その状況下で結果を残すことは容易ではなかった。特に秋は「とにかくチャンスで打てなかった」といい、満塁で回ってきた3打席はいずれも凡退。得点圏に走者を置きながら併殺打に倒れる場面も2度あった。  

 この冬は変化球への対応を課題に掲げ、厳しい攻めにも屈しない打撃を身につけてきた。また最大の武器である長打力を伸ばすため、筋トレや食トレで体重を増やした。「チャンスで打てるように、ホームランを打てるように、しっかり準備したい」。若き不動の4番は、貪欲に結果を追い求める。

次期エース候補が課題と向き合いながら過ごした充実の冬

 道下は昨年リーグ戦デビューし、春秋それぞれ3試合ずつに登板した。秋は中継ぎ登板した仙台大戦、東北学院大戦こそ無失点に抑えたが、初先発した東北福祉大戦は1回3分の1を投げ5与四球、5失点と辛酸を舐めた。

 秋の新人戦では東北工業大戦に先発し、5回7失点ながら自己最速を2キロ更新する139キロをマーク。新人戦の登板後には「冬の間に球速も制球力も上げ、安心して先発を任せられるピッチャーになりたい」と話していた。

昨秋の新人戦で力投する道下

 その言葉通り、今オフはウエイトトレーニングによる筋力アップに取り組み、着実に球速を伸ばした。3月上旬の練習試合では、コンスタントに140キロ台を計測したという。その一方、インステップする癖を修正したり、体全体を使って投げることを意識したりとフォーム改善を行ったことで、制球力の向上も実感し始めている。

 昨年は小池侑生さん、瀬戸崚生さんと先発完投型の4年生右腕二人が投手陣を支えていた。大きな二本柱が抜け、新チームの投手は現時点で8人とやや手薄な状況。そんな中、140キロを超える直球を持ち、スタミナも兼ね備える道下には大きな期待がかかる。「うちの勝ち試合はほとんど、先発投手が完投している。球数少なく完投できるようになりたい」。新エースの誕生はまもなくだ。

宮城の地で、ライバルと共に文武両道を突き進む

 鈴木は道下を「大学に入ってからより一層自分で考えるようになって、特にこの冬からはすごく伸びている」と評し、3年目の飛躍を予感している。仙台一出身のサイドスロー右腕・佐藤昴も先発候補の一角としてアピールしており、「宮城の三人で頑張っている姿を見せたい」と意気込む。

 一方の道下は、鈴木について「下級生のうちから主軸を任されていて、単純にすごいと思っていた」と話しつつ、「同じ高校出身なので比較されることもあり、『負けたくない』という気持ちもあった」と本音を明かした。ただ試合中、三塁の守備位置から聞きなじみのある鈴木のかけ声が耳に入ると、マウンド上で心を落ち着かせることができる。大学での実績に差はあれど、高校時代から築いてきたライバル関係と信頼関係は揺るがない。

ミーティングで話に聞き入る鈴木(右奥)

 宮城の高校野球界では近年、仙台一、仙台二を含む公立の進学校が実力をつけてきている。文武両道の延長線上として、地元の国立大で硬式野球を続ける高校球児が増えれば、自ずと東北大の選手層も厚くなるはずだ。大学野球の第一線で戦う二人が、道を作っていく。

(取材・文・写真 川浪康太郎)

読売新聞記者を経て2022年春からフリーに転身。東北のアマチュア野球を中心に取材している。福岡出身仙台在住。

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