3年ぶりの全日本大学野球選手権に臨む富士大 プロ注目のエースと“全国”知る4年生コンビが牽引
8日に開幕した第75回全日本大学野球選手権大会。3年ぶりの出場となる富士大は9日に松山大との初戦を迎える。北東北大学野球連盟からは一昨年は八戸学院大、昨年は青森大が出場。今春は9勝1敗でリーグ戦を制した富士大が檜舞台に返り咲いた。前回出場した2023年は14年ぶりの4強入りを達成。今年はさらなる高みを目指す。
エース・角田楓斗を中心とした強力投手陣
最大の注目は今秋ドラフト候補の最速153キロ右腕・角田楓斗(4年=東奥義塾)だ。1年秋と2年秋に明治神宮野球大会で登板しており、すでに全国の舞台で名前を売っている。
今春は5試合に先発して防御率1.13、59奪三振をマーク。最優秀選手賞、最優秀防御率賞、ベストナインの個人三冠に輝き、エースの役割を果たした。本人が「150キロ台を連発できるのが自分の魅力」と話すように、最大の武器は威力のあるスピードボールだが、先発を任されるようになってからは変化球の制度や試合中の修正力にも磨きをかけて完成度を高めた。

以前、「チームの目標を最優先にしながらも、相手を圧倒するような結果を残してドラフトにかかりたい」とラストイヤーの意気込みを口にしていた角田。進化した姿をアピールし、自身が掲げる「ドラフト1位指名」の目標に近づきたい。
3年生の投手陣も逸材揃いだ。緩急のある投球が持ち味の古堅鈴之輔(3年=読谷)は、今春角田に次ぐ先発の座を勝ち取った左腕。150キロ超の球速を誇る細野龍之介(3年=札幌新陽)やそれに迫る速球を持つ伊知地晴(3年=旭川志峯)は、登板すればスカウトの目を引くだろう。リーグ戦でブルペンを支えた中山雄仁郎(2年=九州学院)の存在も心強い。
野手陣は各学年にキーマンが名を連ねる
一方、野手陣は今春のリーグ戦10試合で計68得点を挙げた。岩手大との1戦目で1イニング16得点、青森大との2戦目で1イニング7得点を挙げているように、つながり始めると止まらない打線が相手投手の脅威になる。
その打線の中軸は3年生以下の選手が担った。ウメビンユオチネード優(3年=旭川志峯)と徳弘太陽(3年=山梨学院)は一発を打てる右の長距離砲。左打者では1年時から個人タイトルを次々と獲得している早川大惺(2年=前橋育英)や高橋昇聖(2年=専大北上)が非凡な打撃センスを発揮する。またルーキーでは今春全試合でスタメンマスクをかぶった梅村団(1年=山梨学院)が攻守にわたって存在感を光らせている。

個性豊かなメンバーが名を連ねる中、チームに欠かせないのが8、9番を打った赤瀬健心(4年=下関国際)と洞口優人(4年=仙台育英)の4年生コンビ。今春はともに4割を超える打率をマークし、守備でも優勝に貢献した。
2022年の夏の甲子園では対戦相手として決勝の舞台を踏んだ二人。大学では紆余曲折がありながらもレギュラーとして最終学年を迎えた。今春全試合で安打を放った赤瀬は「二人とも派手なプレーをしたり、ホームランを打ったりするような選手ではありませんが、下位打線でしっかり仕事をして、守備や試合中の声かけで下級生の多いチームを引っ張ろうと話していました」と胸を張る。
「下級生がやりやすい環境を作ろう」
赤瀬は1年春からリーグ戦でレギュラーの座を奪い、3年前の大学選手権では全4試合にスタメン出場して計15打数5安打と躍動した。幸先の良いスタートを切ったものの徐々に出場機会が減り、昨秋は代打や守備固めに甘んじた。
「(昨年は)何一つうまくいかなかった。自分は3年生で引っ張っていかないといけない立場だったにもかかわらず、何もできませんでした」。赤瀬はチームとしても春秋ともに3位に終わった昨年をそう振り返る。

一昨年までは2学年上の先輩に頼っていたという赤瀬。主将を務めた山澤太陽(現・JR東海)やプロ入りした麦谷祐介(現・オリックス・バファローズ)らが後輩のミスをカバーして積極的に声をかけてくれたからこそ、伸び伸びとプレーすることができた。そんな先輩たちと比較した上で自身の力不足を痛感し、今年は「自分が1、2年生の頃に先輩たちにしてもらったように、下級生がやりやすい環境を作ろう」と心がけた。
有言実行の春。強い富士大が戻ってきた。赤瀬は「久しぶりの優勝。ただ嬉しいというよりは、感動に近い感情です」と喜びを噛みしめた。
「いつも通り」の野球で狙うは日本一
今年の3年生以下の選手はほとんどが大学の全国大会を経験していない。今大会もやはり、4年生の力が必要になる。

「後輩たちは初めての舞台で浮き足立ってしまう部分もあると思う。東京ドームや神宮(明治神宮野球場)を経験している自分たちが『いつも通りやろう』と言い聞かせて、いつも通りの野球をやりたいです」とは赤瀬。1年生から4年生まで、全員で手を取り合って日本一を掴みにいく。
(取材・文・写真 川浪康太郎)

