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バスケットボール実況者・船岡未沙希「バスケットボールを“伝える”ということ」

バスケットボール(以下バスケ)実況者・船岡未沙希は、競技に関わる人々の“本当の想い・本当の声”を大切にする。先人達への敬意を忘れず、光が当たらない人や事象も大事に扱う。バスケ実況のスペシャリストを目指すと共に、同競技の知名度や価値が少しでも上がるように奔走している。

バスケットボール実況のスペシャリストを目指す。

~バスケ実況のスペシャリストになりたい

「バスケ実況を始めたのはWリーグ2018-19シーズンからです。そこから多くのご縁や出会いがあって番組MCやリポーター、イベント等にも広がっていきました」

8月18-20日の第56回全国中学校バスケットボール大会(島根県)では、準決勝と決勝の実況を担当。9月のFIBA女子バスケットW杯2026(ドイツ)でも、日本戦や決勝戦などの実況を任された。他にもBリーグ・アルティーリ千葉の開幕前イベントMC、Bリーグプレミア開幕2試合のリポーターを務めるなど、各方面の仕事が増えている。

「最初は『女性の実況が欲しい』ということでお話をいただきました。『(性別関係なく)船岡に実況を任せたい』と思ってもらいたいです」

「海外では女性のバスケ実況は当たり前に行われています。日本はまだ発展途上の部分もあり、私自身も更なるスキルアップをしてスペシャリストを目指したいです」

どのスポーツ競技でも実況担当は男性が務めるケースが多い。昨今のジェンダーが語られる時代になっても、変化が起きづらい業界に思える。

「長年の積み重ねがあり、視聴者は男性実況に慣れていると思います。また盛り上がるシーンは声のトーンも上がるので、女性実況だと甲高くて聞きづらい面があるかもしれません。私は生まれつき声が低めなので、そういった面では助かっていると思います」

バスケ実況の前はラジオ局のアナウンサーを務めた経験もある。「『落ち着いていて聞きやすい声だね』と言ってもらえるのは、ありがたいです」と自らの声について語る。

バスケットボールの知名度や価値が少しでも上がることを願っている。

~表に出ないバスケ人を知って欲しい

佐賀県唐津市出身、小学4年からバスケを始めた。トップ選手を目指して練習に明け暮れたが、中学2年時に左膝前十字靭帯を断裂。高校2年生では右膝も断裂。故障と付き合いながらのバスケ人生を送ったが、明治大2年時に現役引退を決意。男子バスケ部から声がかかり、主務兼マネージャーを務めることにした。

「当時の明治大男子バスケ部は厳しさが有名でした。“週8練習”の感覚、量も質も凄まじいものでした。入学してくるのは各高校の中心、バスケ雑誌の表紙になるような選手達。でもそんな彼らが必死に練習しても、Aチームの練習にすら出られない。とんでもない環境にいたと思います」

純粋なバスケ好き少女が味わった怪我による方向転換、そして超強豪チームの過酷な現実。「表に出られない選手達のバスケ人生にも大きな価値があり、そこにライトを当てたい」と思った。

「小さな大会でも情報が手に入る時代です。試合結果や出場選手の成績は、ネット等を通じて知ることができます。でも試合に出られず成績が残っていない選手も、同じように激しい練習を積んでいます。誰も知ることができない、そういった選手のことも伝えていきたいです」

明治大学体育会男子バスケットボール部では主務を務めた。

本業であるバスケ実況を行いつつ、メディア『スポットライト』を立ち上げた。プロ、アマ、選手、裏方の分け隔てなく、「伝えたい」人物にフィーチャーしている。

「メディア等で取り上げられる人は一握りですが、それ以外にも数えきれない数のバスケ人(選手・関係者)がいる。彼ら一人ひとりに人生や思いがあり、多くのものを背負っています。そういったものを1つでも多く知ってもらいたい」

「バスケ人の“本当の想い・本当の声”を伝えるのは、バスケ実況もメディア『スポットライト』も変わりません。だからこそ“言葉”の使い方には細心の注意を払うようにして、少しでも多くのことが伝わるようにしたい。最も難しい部分ですが、大きなやりがいを感じています」

1つでも多くのことが伝わるよう、準備を欠かさないようにしている。

~引退後の選手達に寄り添う活動も行いたい

バスケ実況、メディア『スポットライト』等に加え、引退後の選手に寄り添う活動を手掛け始めている。「バスケ人として築き上げてきたキャリアを守りながら、次へ向かう手助けができれば」という。

「BリーグやWリーグのチームが全国にできて選手数も増えました。当然、選手入れ替えが毎年起こります。どの競技も同じですが引退後の進路は大きな課題。コーチやバスケクリニック等の指導者を目指す人もいますが、他にも自分のやりたいことを見つけたり、選択肢が広がったりすれば人生が更に豊かになると思います」

男子はBリーグプレミアも始まり、女子は2030年のW杯日本開催を控えている。華やかな部分に光が当たりがちだが、その陰ではコートを去る選手も数多く存在する。そこから目を逸らさず、バスケファミリーとして共に歩むことを考えている。

「怪我で選手を諦めた経験があるので、コートに立つ選手達が輝いて見えます。バスケ選手として培ったキャリアは、大事なもので大きな価値がある。築き上げたものを活かしつつ可能性を広げて欲しいです。『何をやりたいか?』をしっかり考え、次の道を選ぶためのサポート活動ができれば…」

「バスケットボールに関わる全ての人々と一緒に“ワンチーム”で盛り上げていきたい」と語る。

~バスケットボール界の“ワンチーム”で前進する

「バスケ界がもっと盛り上がるため、必要なこともあるとは思います」と、個人的な考えを最後に語ってくれた。

「男子はBリーグの盛り上がりもあり、世間的な知名度も高まっています。ここから先は、これまでより、またさらに代表チームの国際舞台での活躍が期待されるようになっていくと思います。逆に女子は国内Wリーグや選手の知名度の露出を含め、さらに盛り上げていく必要性を感じます」

日本バスケ界は大きく成長を遂げている。男子では日本人NBA選手が現れ、国内Bリーグも大きく盛り上がっている。女子日本代表は2020年東京五輪で銀メダルを獲得、2030年には女子W杯日本開催も控える。「常に感謝を忘れず、地に足を付けて進むことが大事」と強調する。

「地方へ行っても、『バスケは面白い』と語りかけられる。Bリーグがスタートする10年前まではあまり考えられなかった光景です。現在進行形で頑張っている選手・関係者のみなさんはもちろん、この10年より前から支えてきてくれた先人達のおかげです。そういった方々の思いも繋いで、継承していきたい。バスケに関わっている全ての人で“ワンチーム”ですから」

「この先は、U-18日清食品トップリーグ、Bリーグも実況に入る予定です。10月末にはWリーグも開幕しますし、楽しみばかりです」と、多忙な日々は続きそうだ。

競技を取り巻く環境が少しでも良くなって欲しい。船岡未沙希は、これからも大好きなバスケを追いかけて伝え続ける。

バスケットボールを取り巻く環境が少しでも良くなることを思い続ける。

船岡未沙希(フナオカミサキ)

佐賀県唐津市出身。明治大学文学部卒業。同大学体育会男子バスケットボール部では主務を務める。卒業後は富山エフエム放送株式会社でアナウンサーとして活動、2016年2月にフリーとなり、2021年11月に株式会社ライトを設立。

(取材/文:山岡則夫、取材協力/写真:船岡未沙希、株式会社ライト)

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