JR東日本東北が7大会ぶりの日本選手権出場 怪我人続出のチームを救った左腕コンビ
10月1~4日に開催された社会人野球日本選手権最終予選東北大会でJR東日本東北が優勝し、7大会ぶり20回目の本大会出場を決めた。
今年は強力打線が猛威を振るっており、今大会も3試合でチーム打率.386、4本塁打、27得点を記録した。一方、投手陣は昨年先発の柱を担った早坂一希(24=東日本国際大)、ブルペンを支えた津高弘樹(26=日本大)、台頭が期待された浦野冬聖(23=仙台大)の左腕3人が怪我で1年間離脱。苦しい台所事情を強いられる中、救世主となったのが小野寺輝(24=国士舘大)、鈴木翔也(26=帝京大)の左腕コンビだ。
MVP獲得、2年目に飛躍を遂げた小野寺輝
小野寺は今大会、TDKとの初戦で7回4失点と力投。中1日で先発した日本製紙石巻との代表決定戦では6回2死まで無安打投球を続け、6回1安打8奪三振無失点の快投でチームを勝利に導いた。MVPにも輝き、大会後は「野手の方に助けてもらって楽に投げることができた。嬉しいです」と顔をほころばせた。

代表決定戦は初球から雄叫びを上げながら投げるほど気合いが入っていた。その反面、投球は終始落ち着いており、力みのないフォームからテンポよくストライクを取った。「先に点を取られないようにすることを一番の目標にしていて、それを達成できた。100点のピッチングだったと思います」。そう自画自賛する投球で攻撃にリズムをもたらした。
JR東日本東北には故障を抱えたまま入社し、1年目の昨年は公式戦の登板がわずか1試合に終わった。もどかしさを感じながらも、「自分がボールを投げて楽しいと思える環境を作ろう」と復帰に向け邁進。そんな矢先、左腕3人の長期離脱が決まり、小野寺に白羽の矢が立った。
「怪我なく1年間投げ抜く」を有言実行へ
「昨年は投げられなくてしんどかったのですが、東京ドームに連れて行ってもらった。今年は投げられない人たちの分まで、自分が少しでも長いイニングを投げようと意識しています」
春先から先発を任され、主要大会で着実に経験を積んだ。今やエース格の投手と言えるほど首脳陣からの信頼度が増した。2月の取材時に「春先からベストなボールを投げて、怪我なく1年間投げ抜く」と誓っていたが、まさにそれを成し遂げようとしている。

都市対抗野球大会はベテランの吉田一将(マルハン北日本カンパニー)を補強したこともあり、当初は小野寺が先発する予定はなかったという。それでも、「吉田さんの先発予定を覆すくらい結果を残そう」と腐らずオープン戦などでアピールした。迎えた本大会、信越硬式野球クラブとの初戦で吉田の後を受けて最終回を締めると、試合後、急遽次戦の先発を告げられた。
のちに優勝する西濃運輸との2回戦では5回2失点と粘投。「ヒットは打たれましたが、良い感じに打たせて取れたし、要所で三振も取れた。最終的に西濃さんが優勝して、自分のピッチングはそこまで悪くなかったのだと自信になりました」と大舞台で手応えを得た。次は京セラドーム大阪のマウンドで、飛躍のシーズンを締めくくる。
4年目左腕・鈴木翔也が確立した投球スタイル
そんな小野寺が「いつも助けてもらっていて、自分も良いピッチングをしないといけないと気持ちが入る」と刺激を受ける存在が、4年目の鈴木だ。
小野寺とともに先発の一角を担い、時に中継ぎでも勝利に貢献する。今大会は七十七銀行との準決勝に先発し、9回3安打9奪三振2失点(自責0)完投勝利を挙げた。鈴木も「(左腕3人の離脱は)チームにとって痛手。僕と小野寺で補いたい」との思いで腕を振っている。

直球は130キロ前後ながら質が高く、時折投げる70~90キロ台のスローカーブが打者を惑わす。高校時代から制球力重視の投球スタイルで、大学時代から投げ始めたスローカーブについては「考えて投げているわけではないんです。不意に投げてストライクが取れたらバッターは嫌だろうなと…」と明かす。
普段の練習から回転数やボールへの力の伝え方、出所の見づらさなど球速以外の部分に目を向け、弾道測定器「ラプソード」を活用しながら、「スピードが遅いなりに速く見せるためにはどうすればいいか」を追求してきた。「抑えると気持ちいいですね。速い球も投げてみたいですけど、投げられないので、自分はこういう(投手としての)生き方を続けます」。速球派の投手が著しく増えた現代において、異質な輝きを放つ。
「怪我人がいることを言い訳にしたくない」
今年5月のJABA東北大会では決勝でサヨナラ打を浴び、悔しさを味わったが、この大会中に投球の感覚を掴んだ。それを都市対抗予選の好投につなげ、本大会でも救援登板の1試合ながら2回、打者6人を完璧に抑えた。

「怪我人がいないに越したことはないですが、誰が出ても良い内容の試合ができるよう意識してチーム作りをしている。怪我人がいることを言い訳にしたくないですし、1人、2人に頼っているチームでは厳しい。その時にいる者で戦うしかないと考えて選手層を強化しているつもりです」とは西村亮監督。東北地区の社会人野球をリードするJR東日本東北が、久々の京セラドームで頂点を狙う。
(取材・文・写真 川浪康太郎)

