上智大学アイスホッケー部―部員急増がもたらした、コミュニケーションとチーム貢献の変化とは―
カレッジスポーツと呼ばれるスポーツがある。アメリカ合衆国を中心に主に大学の4年間に集中的にプレーされるスポーツで、アメリカンフットボールやバスケットボールそしてアイスホッケー等がカレッジスポーツの花形競技である。
日本でも大学入学を機に、新しいスポーツを始める人は多い。とはいえ、子供の数が減少傾向にある日本では、カレッジスポーツの部活でも、この数年は部員の数の減少に苦しんでいた。
しかし、こうした近年の傾向に反して、今年の上智大学アイスホッケー部は大勢の新入部員を迎えることができたという。
上智大学アイスホッケー部に何が起こっているのだろう。同部主将の島田晃暉(しまだ こうき・4年)さん、副主将の岸樹洋(きし みきうみ・4年)さん、そして次期主将の武居虹平(たけすえ こうへい・3年)さんの3人に話を聞いた。

12人の新入生、上級生の役割の変化
現在、アイスホッケー部の学年別構成は、どのようになっていますか。
島田晃暉さん(以下、敬称略)「プレーヤーとマネジャー合計した人数になりますが、1年生が12人、2年生が14人、3年生が8人、4年生は7人で合計41人です。」
1年生と2年生が非常に増えたようですね。今年の新歓期間になにかアイスホッケー部として、新しいことをしたのでしょうか。
島田「以前は新1年生にアイスホッケーを体験してもらうことが、新歓期間のメインイベントだったんです。でも、昨年度からご飯会というものを開催して、アイスホッケー部を見に来てくれた新入生とご飯を食べながら、いろいろな話を聞く時間を設けました。今年はご飯会は1回しか開催できませんでしたが、それでも新入生はアイスホッケー部に親しみを持ってくれたみたいです。」
新入生は12人とのことですが、アイスホッケーの経験のある人はいますか。
島田「スケートの経験がある人は1人だけで、他の人は高校時代に野球やサッカー、アメリカンフットボールをしていたそうです。ちなみに、アイスホッケーの経験者はいません。」
1年生が増えて、2年生以上の上級生に何か変化は生まれましたか。
島田「上級生ひとりひとりの、部への貢献方法が変わってきたように思います。昨年までは部員の数が少なかったこともあり、幹部と呼ばれる役職に就いた人が主体となって、チームをまとめていました。でも部員の数が多くなり、幹部だけでは部全体をまとめるのが難しくなった分、他の上級生みんながチームをまとめる方法を考えるようになりました。上級生各自が、自分はチームのために何ができるのかを具体的に考えて、行動に移すことが増えました。」
武居虹平さん(以下、敬称略)「やはり部員ひとりひとりの責任が増えたことが、大きな変化だと思います。部員が増えて、今までのように幹部だけが頑張る形ではチームをまとめることが難しくなり、上級生全体が自発的にチームをまとめるようになりました。その分、上級生は見るべき範囲が広がって、例えば練習時間以外でも下級生へ話しかけるなど、下級生へのアプローチの仕方が変わってきたように思います。」
岸樹洋さん(以下、敬称略)「新入生の育成や教育に、上級生全体で取り組むようになったことが、大きな変化だと思います。1年生の数が増えて、上級生皆で新入生と関わり、話すことになりました。
上級生はシーズンが近くなるとどうしても試合形式の練習が多くなり、1年生のスケーティング練習を見に行くことがあまりなかったんです。でも、先日釧路で行った夏合宿では、上級生は1年生のスケーティング練習を頻繁に見に行って、アドバイスできることを積極的に探したりしていました。1年生もこんな練習を自分たちはしようと考えているけど、どう思うかと上級生に質問することもあるんです。
こうした変化はチームを強くする一因にもなっていると思います。」

他のスポーツにはないスピード感と新鮮な感覚
皆さんにとって、アイスホッケーという競技の魅力とは何でしょうか。また、新歓の時、アイスホッケー部を見に来た新入生に、皆さんの考えるアイスホッケーの魅力を伝えるために、どのようなことを意識していましたか。
島田「アイスホッケーって珍しいことしかないスポーツだと思うんです。まず、ゲームの間はずっと氷の上で滑っているスポーツだから、当然地に足がついていない状態ですし、ボールではなくパックという平たい物体をゴールまで運ばないと得点になりません。そして、そのパックを運ぶのは人間の腕や足のような体の直接的な部分ではなく、スティックという腕から伸びた部品のようなものです。だから、アイスホッケーって、今まで自分が感じたことがない感覚の下でプレーするスポーツだと思っています。
自分は中学時代からアイスホッケーをプレーしているので、そうした感覚は身についてしまっているのですが、初めてこの競技をする人にとっては、新鮮な感覚にあふれたスポーツだと思います。多くの人は、大学に入って初めてアイスホッケーを始めることもあり、今まで知らなかった新しい感覚を身につけながら、競技面で自分の成長を実感しやすいスポーツであることも、新入生に伝えようと意識していました。」
武居「私にとってアイスホッケーの魅力は、この競技の持つスピード感です。スケーティングが上達すると、陸上で走るよりもずっと速いスピードで氷の上を滑ることができるようになります。そうしたスピード感って、陸上ではなかなか感じることができませんが、氷の上なら自分の体だけですごいスピードを生み出すことができるんです。
また、アイスホッケーっていろいろなスポーツで身につけたものが生かせるスポーツでもあるんです。例えば、私は高校までずっと野球をやっていましたが、その時に鍛えたバッティングの感覚は、アイスホッケーでもスティックを使ってパックを打つという動作に生かすことができます。自分のキャリアで積み重ねてきたスポーツの経験は、アイスホッケーという競技でも十分生かすことができると新入生にも話しました。」
岸「やはり私もアイスホッケーの魅力はスピード感と、氷の上でのスポーツであるということだと思います。自分も大学入学からアイスホッケーを始めたのですが、スケートが上達するのに比例してスピード自体も上がることが、とても楽しかったんです。そうしたことを、新歓期間に新入生に話していましたね。」

コミュニケーションの問題を乗り越え、1部で戦うために
部員の数が増えたことで、今まで経験したことのない課題にも直面しているのではないでしょうか。
島田「人数が増えたことで、全員としっかりコミュニケーションをとることが意外と大変なことになっているのも事実です。でもアイスホッケー部の部員には孤独感は感じてほしくないので、4年生1人・3年生1人・1年生あるいは2年生2人ぐらいという感じで、学年の壁を越えた縦割り制のシステムを作り、気楽にいつでもコミュニケーションがとれるようにしています。
それに、大学に入ってからアイスホッケーを始めた新入生は、技術的にも体力的にもメンタル的にも、最初の段階からものすごい勢いでアイスホッケーについて学び始めるんですね。だから、最もアイスホッケーについて吸収できる時期にいる新入生に必要なことを十分に教えることができる環境を作りたいと考えて、この縦割り制のシステムを取り入れました。」
武居「人数が増えたことで、以前と比べて、個人の存在感が薄まりがちになってしまうことが、新たに生まれた問題だと思います。人数が増えて、ひとりひとりに目が届きにくくなった分だけ、目的もなく、ただなんとなく練習に参加している人が出てきてしまうこともあります。
各自の主体性を引き出す部になる必要がありますし、そうすることで部自体も活気にあふれた場になっていくだろうと思います。」
最後に、上智大学アイスホッケー部として、今年の目標を聞かせてください。また、近い将来に上智大学アイスホッケー部がどのようなチームになって欲しいと思っていますか。
島田「今季の目標は、関東大学リーグの2部で優勝すること、1部・2部の入れ替え戦に勝って1部に昇格することの2つです。同時にインカレの出場権も今年は手に入れたいです。
また、将来の上智大学アイスホッケー部は、競争の激しいチームになって欲しいです。部内でライバル関係があることは活気を生み出すと思いますし、一人一人の実力を上げる良い方法だと思います。」
武居「今季の目標は、先ほど島田主将が話した通り、1部に上がることです。そして、将来のアイスホッケー部は、下級生がステップアップをしながら、自分で部やチームに貢献できる要素を見つけられる団体になっていてほしいと思います。一見ささやかでも、チームのためになっているという実感は、この部にいることの存在意義になりますから。」
岸「問題に対して、柔軟な対応ができるチームと部になって欲しいと思っています。今回は部員の数が増えるという形で部は大きな変化を迎えましたが、今後も部やチームが、様々な形で、変化に対応せざるを得ないことがあると思います。そうした変化に対応できるような部になって欲しいです。」

12人の新入生を迎え、大きな変化を遂げた上智大学アイスホッケー部。その変化の向こう側で、上級生も新入生も新しい環境を活用しながら、各個人が生き生きと主体的に活動できる部を作ろうとしている。
アイスホッケーを新鮮な感覚にあふれたスポーツであると話す島田さん、自分が部に貢献しているという実感を持つことの大切さに気付いている次期主将の武居さん、1年生からの積極的なコミュニケーションを嬉しい変化として受止めている岸さん。部員増という変化を、部全体でもっと良い変化に変えていこうという姿勢がうかがえるインタビューとなった。
念願の関東学生リーグ1部で戦うために、上智大学アイスホッケー部は最高のスタートを切ることができたのではないだろうか。
(写真提供 上智大学アイスホッケー部
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(インタビュー・文 對馬由佳理)
