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【プロレスリングWAVE 宮崎有妃(後編)】葛西純にデスマッチファイターとして認められたい

プロレスリングWAVE所属。JWP女子プロレスでデビューして28年、様々なプロレス団体で活躍する宮崎有妃。中編は2010年に解散したNEO女子プロレス時代と引退、そして現役復帰。今回はハードコアマッチと今後について伺った。(取材/文:大楽聡詞、取材協力/写真:プロレスリングWAVE)

宮崎有妃が思うハードコアマッチの魅力

2019年、宮崎有妃はプロレス界に完全復帰。2020年12月27日WAVE後楽園大会でセンダイガールズプロレスリング(以下、仙女)のDASHチサコ選手とのハードコアマッチが著者の脳裏に焼きついている。リング中央に置いたフラフープの中にゴルフボールを集め、そこにお互いの身体を叩きつける。目を背けたいのに背けることができない。一瞬たりとも見逃せない戦いだった。

「ハードコアは竹刀やイス・机といった身近なもの使うようにしています。その方がお客さんに痛みが伝わりやすい。そこは気を遣いますね。蛍光灯や有刺鉄線デスマッチなどありますが、一番痛みが伝わりやすいのが画鋲だったりします」

昨年12月、女子デスマッチユニット”プロミネンス”の藤田あかねとのハードコアマッチはレゴブロックを使って試合を行った。宮崎曰く「想像以上に固くて痛かった」そうだ。

初めてのハードコアマッチやデスマッチはどんなレスラーでも躊躇する。宮崎の後輩・狐伯が初めてハードコアルールの試合を行った時、ラダー(脚立)の1番上に乗り怯えた表情をしていた。

「私が『行けぇ〜〜』と言ったら、狐伯は覚悟を決めてなにかを振り切ったようにラダーの上から対戦相手にキックをしました。『私もやったことがないのに良くできるな』と感心しましたね」

宮崎曰く「普通にプロレスをするのも楽しいが、物を使うとテンションが上がる。実際ハードコアでイスを使用して優しく殴っている選手もいますが、やるなら『思いっきり殴れ』と言いたい(笑)」と。少しの痛みでは物足りなく、「突き抜けた痛み」が最高に良いらしい。

「ハードコアは結構頭を使うんですよ。リング上にある机やイスを、『ここで技を出したら、隣に置いてある机を使えるぞ』とパズルを組み立てるように戦います。想定していた場所の凶器を他の選手に使われることもある。そういったアクシデントも含め、道具の位置や相手レスラーの状態を把握しながら、色々考えて戦うのがハードコアの魅力の一つですね」

タッグマッチは片方の選手が戦況を見て指示を出せばいいが、シングルマッチは先の先を読み道具の位置を考えて技を出すので創意工夫が必要になる。

「WAVEのハードコアは単純に道具を使って殴り合うだけではなく、そこにコミカルな要素が入ってきます。他の団体のハードコアとは違っているので差別化ができて面白いと思いますよ」

宮崎はハードコアマッチだけではなく、通常のプロレスやコミカルに振り切ったものなど全てのプロレスに対応できる稀有なレスラーだ。

90年代人気ユニット「ブリーフブラザーズ」の現代版「ブリーフシスターズ」

昨年はハイビスカスみぃ(以下、みぃ)と組んで『ブリーフシスターズ』として活躍。FMW時代の大人気ユニット『ブリーフブラザーズ(以下、ブリブラ)』を、女版ブリブラ『ブリーフシスターズ』として復活させたいと、2016年に現役を引退した金村キンタローに話し、『ブリブラを受け継ぐレスラー』として宮崎が適任だと認められた。

「ブリブラのテーマソングやコスチューム、入場の踊りなど、あれだけ盛り上がるスタイルを誰にも残さないのはもったいない。そのことを金村さんも周りから言われていたみたいです(苦笑)。とにかくあのコスチュームを着てオフスプリングの曲で入場すると興奮します(笑)」と宮崎は嬉しそうに話した。

『はずかし固め』の誕生秘話

NEO時代、アイドルで元チェキッ娘の久志麻理奈と西田夏と試合をすることになった。アイドルとは言え、受け身の練習をしてない一般人にブレーンバスターやボディスラムは危なくてできない。宮崎は「肉体的な痛みではなく精神的な痛みを与える技はないか」と考え生み出した技が『はずかし固め』(相手に股を開かせた体勢でホールドする関節技のこと)だ。

「はずかし固め」は肉体的な痛みと精神的な痛みを伴う屈辱的な技。

「久志麻理奈と西田夏は芸能界を引退する事が決まっていて、『最後に新聞の一面に載りたい』という夢がありました。だから夢が叶ってスポーツ新聞の一面に載ったのは良かった(笑)。それに久志と西田目当てのファンが『あれっ、NEOに可愛い子がいるぞ』と松尾永遠(まつおはるか)に目を向けてくれたのもプラスでした」

ハードコアマッチからコミカルな試合まで幅広く対応する宮崎。アイドルと戦い「はずかし固め」を考えたように相手に合わせた戦い方にも対応できる。

チャンピオンベルトの存在意義

宮崎がWAVEで初めて獲得したタイトルはWAVE認定タッグ王座。「ベルトが欲しい」と話す桜花由美のために奮闘し、第17代WAVE認定タッグ王者に輝いた。

その後、野崎渚とタッグを組み、1度もベルトを巻いたことがなかった野崎のために奮起し第21代WAVE認定タッグ王者に。

次のタッグパートナーは旧姓・広田さくら。双子の母でもある広田は「タッグベルトを2人の子供に1本ずつ巻かせたい」と。ここでも宮崎は「子供たちにベルトを巻かせるために頑張ろう」と、第23代WAVE認定タッグ王者を戴冠した。

「私、ベルトに興味がない(笑)。ベルトがなくても素晴らしい選手は沢山いるので、私は「ベルトって必要なのか?」と思っています。だからベルトに挑戦する時は、何か大きな理由が必要。ちなみにNEOの時、タッグのベルトを獲得したのもパートナーのタニーが『ベルト欲しい!』と言ったからです(笑)」

ベルトがなくても輝く選手もいるし、ベルトを巻くことで輝きを放つレスラーもいる。逆にベルトを獲得して崩れるレスラーもたくさん存在する。

「野崎はベルトを巻いて輝いたし、第30代WAVE認定タッグ王者だったgalaxyPunch!(ギャラパン)の清水ひかりもチャンピオンになって変わりました。野崎がレジーナベルトを巻いた時、『大丈夫かな?』と心配しました。でも野崎はベルトの輝きに負けなかったですね」

ベルトがあろうがなかろうが宮崎のスタイルが崩れることはない。負けてもレスラーとして価値が落ちないのが宮崎有妃だ。

今後について

宮崎には今年中に叶えたい目標がある。それは「葛西純と蛍光灯デスマッチで戦って葛西純からデスマッチファイターと認められたい」だ。

葛西純はプロレスリングFREEDOMSに所属するデスマッチファイター。男性レスラーだけでなく女性レスラーからの支持も高い。

「葛西選手は女子レスラーともキチンと向き合ってくれる。どの試合もインパクトがあり印象に残る試合をする。数ある男性デスマッチファイターの中でNo.1だと思います」

宮崎が希望する戦いが4月2日wave新宿フェイス大会で宮崎有妃&朱崇花vs葛西純&SAKI戦がハードコアマッチルールで行われた。結果は葛西純のパールハーバー・スプラッシュで宮崎が敗れた。

だが試合後、葛西は「おい、宮崎、俺っちとデスマッチでシングルでやりてえんだろ。いいか、よく聞け、この日本の人口、1憶2千万の人口の中で、お前と俺がここで命を削り合った。すげえ奇跡だと思わねえか。お互い数ある腐るほどある職業のなかで、お互いがプロレスラーを志して、プロレスラーになって、この新宿歌舞伎町のリングの中で、命を削りあった。これも奇跡とは思わねえか?これだけ奇跡が続くと、お前のアプローチ、断る理由がない。場所とタイミングはお前に任せる。やろうじゃねえか。葛西純と1対1でやって満足とか、いい試合で満足とか、そんな言葉は俺っち期待してねえから。奇跡が続いてるんだ、葛西純に勝つという奇跡を起こしてみろ」と熱い言葉とともに宮崎とのシングルマッチを了承。

一度プロレスラーとして引退したが、心残りである「デスマッチ」を求めリングに戻った宮崎。「言霊」のように自分の想いを発信し夢をたぐり寄せたのである。

そして「復帰する野崎と戦いたい。それからもう一つ、狐伯をキチンと育てたい」と長期欠場中の後輩・野崎を思いやり、昨年プロレスリングWAVEに加入した狐伯を育成すると笑った。

宮崎はベルトにこだわらず、あくまで自分の信じるプロレスを表現し続ける。正直なところ、デスマッチは苦手な著者だが宮崎の取材を通じてデスマッチを闘うレスラーの覚悟や魅力を知ることができた。今後は目を背けず闘いを見れそうだ。

レスラーは生と死が背中合わせの商売。これからもエンターテイナーとして四角いリングで観客を魅了する闘いを追求してほしい。
(おわり)

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