「なぜ強豪高校で8割以上がベンチ入りできるのか?」関メディベースボール学院OBが高校野球で躍動する理由
中学硬式野球・関メディベースボール学院(関メディ)OBの活躍がすごい。全国の野球強豪校へ進学した8割以上の選手がベンチ入りを果たしている。同学院ならではの育成思想と指導環境について総監督・井戸伸年氏に話を聞いた。

「38人中32人/ベンチ入り率84.2%」
関メディ10期生(2024年度卒業生)が高校進学後、ベンチ入りを果たして背番号をもらった数だ。
関東の健大高崎(群馬)、東海大相模(神奈川)、関東第一(東京)…。関西の履正社(大阪)、智弁和歌山(和歌山)、京都国際(京都)…。そして九州の東福岡(福岡)、沖縄尚学(沖縄)…。誰もが1度は聞いたことのある甲子園常連校で、関メディOBは中心となって活躍している。

~本気で甲子園を目指すことが人間的成長につながる
「野球を通じて人間的に成長して欲しい。そのためにも甲子園出場を最大目標にしてもらいたい」と井戸総監督は声を大にする。
「高校野球の晴れ舞台である甲子園の地に立つことで、選手のその後のキャリアは大きく変わります。また個々に対する注目度が高くなることで、人間的な自立にもつながります」
高校卒業後も大学や社会人、そしてプロといった上のカテゴリーで野球を続けられる可能性が高まる。関メディOBの今朝丸裕喜投手(阪神)は報徳学園高、島原大河捕手(楽天)は敦賀気比高で甲子園出場を果たしている。

~状況に応じて必要な武器を選び出せる能力
「武器(アイテム)を多く身につけ、そこから正確に選択するセルフマネジメント能力を覚えて欲しいです」
自らの武器を正しく理解して判断・選択できる能力を大事にする。プレー中には、自分の引き出しから必要なものを取り出す。また高校進学後は、チームにとって必要な存在になることができるはずだ。
「野球強豪校には全国から素晴らしい能力を持った選手が集まります。飛び抜けたものがなければ埋もれてしまう。監督の考えやチーム状況に合わせ、何が武器になるかを選択できるようになってもらいたい」
まずは圧倒的な練習量で、野球技術や戦術といった基本をしっかりと身につける。加えて、座学やバイブル等を通じた野球のセオリーや知識のインプットも徹底される。
「グラウンド外で覚えることも多いです。技術や戦術、状況判断の裏付けとなる確かな知識を早い段階で覚えられれば可能性は広がる。頭を使うので面倒臭いと思うかもしれないですが、選手としての幅や奥行きが違ってきます」
そして元プロ野球選手や社会人野球経験者が指導に訪れる。さらには、脳科学に基づくメンタルトレーニング“SBT(スーパー・ブレイン・トレーニング)”を行う臼井博文氏による指導体制も整っている。
「元プロ選手等をコーチに招くのは、キャリアが長く失敗経験も豊富だから。『失敗や挫折をした時にどう捉え、次に活かすか?』を直接伝えてもらっています。メンタルトレーナーを導入したのは、プラス思考のメンタリティを徹底したいからです」
「選手のデータや成長度合いを短いスパンで定期的に測定・蓄積し、指導者間で共有した上で指導やメニューにフィードバックしています。各選手の特性や課題が明確になり、効果的な指導にも繋がります」
また関メディの事務所が甲子園から徒歩圏内の場所にあることもプラスに作用している。日頃から聖地の空気感を身近に感じられる環境で、選手達の「甲子園に出たい」という強い思いと目標意識を支えている。
「強豪校で3年間、野球に真剣に取り組んだことは有形無形の財産になる。寮生活などに関して賛否両論はありますが絶対に成長できます。甲子園出場が叶わなくても、上のカテゴリーでプレーを続けるチャンスも増えます」
今年のNPBドラフトでは、左腕投手の西田櫂吏(ニシダカイリ)が中日から5位指名を受けた。京都国際高時代には甲子園出場を果たせなかったが、着実に成長を重ねてプロ野球選手への切符を手に入れた。
「甲子園出場を本気で目指して真剣に野球と向き合うからこそ、大きな成長につながる。それができるためのメンタル、技術、体力を身につける場所が関メディであり、我々の使命だと考えています」
「中長期で考え、上のカテゴリー(=高校)でも伸びる選手にしてあげたい。だから目先の結果に関して意見することは絶対にありません。もちろん選手自身が『試合に勝ちたい』と考えるのなら、全力でサポートはします」
「極端を言えば、全試合で負けても『絶対に成長できるチームだから』と選手数が増えるのが理想です」と笑顔を見せる。

~関メディは人生を切り開くために存在する
実際に甲子園出場して活躍した先輩やプロ入りしたOBの姿は、後輩にとって強力な手本となっている。目に見える形での夢と可能性を得られ、日々の練習に対する意識や熱量も変化する。
「甲子園出場できる可能性を少しでも高めてあげたい。関メディでの時間は、『強豪校へ進学しても頑張り続けるためのベースを作り上げる3年間』だと思っています。だからこそ心技体、特にメンタル(考え方)が重要だと思います」
「甲子園出場はゴールではなく、『高い目標へ向け日常を懸命に生き、人生を切り拓くスタート地点』です。人生を大きく変える経験になり、その前段階として関メディは存在しています」
「選手自身が甲子園や高みを目指したくなる、強い情熱(熱量)を引き出してあげたい」とも付け加える。
「進路選択においても大人のしがらみを排除しています。本人と保護者の本音や目標、実力を吐き出してもらい進学先を共に探す。選手自身が納得できて覚悟を持って高校生活もスタートできます」
コミュニケーションを密に取り、定期的な面談(三者面談を含む)を行うことで明確な目標を持ちながら取り組める。進学後もモチベーションを維持でき、大きな成長とベンチ入りもつながっていく。
「目標が定まれば、何をすべきかはっきりする。視野も広くなって周囲に対する気遣いや思いやりも生まれます。人間的成長も促され、結果的に野球にもプラスに作用する好循環が生まれるはずです」

「野球という素晴らしいスポーツと巡り会えたのだから、可能な限り長くプレーして欲しい。そのためにも甲子園出場は大きな力になる。そして人間的にしっかりしていれば、何があっても周囲が支えてくれます」
昨今の日本球界では、グラウンド内外での問題も数多く噴出している。結果的に野球を離れることになる選手も少なくない。「野球を長く続けるためにも、甲子園を目指す強豪校で必死に野球へ打ち込み、人間的成長をしてもらいたい」と考える。
井戸氏は、「少年よ大志を抱け」という言葉が好きだ。関メディの選手達には果てしない志を持って甲子園を目指し、大きな人間になって欲しいと願っている。
関メディOB達が高校進学後も順調な成長を重ね、各地で活躍できるのは必然かもしれない。
(取材/文/写真・山岡則夫、取材協力/写真・関メディベースボール学院)
