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北東北大学野球春季リーグ戦が開幕!各大学の春のスタートを振り返る

 4月15日、岩手県花巻市の花巻球場で、北東北大学野球春季リーグ戦が開幕した。富士大、八戸学院大を中心に近年多数のプロ野球選手を輩出している、ハイレベルなリーグ。昨秋は1部では青森大が5季ぶり37度目の優勝を果たし、富士大の5連覇を阻止した。今季を占う重要な開幕節、1部各大学の戦いぶりを振り返る。

富士大は今春も投打ともにタレント揃い

 リーグ最多タイ37回の優勝を誇る富士大は、開幕節は1回戦が10-2、2回戦が7-0でいずれもコールド勝ちを収めた。1回戦は中岡大河投手(4年=広島商)、2回戦は木下真吾投手(3年=日本文理大付)と先発投手が好投。打線もつながり、王座奪還へ向け上々のスタートを切った。

 昨年大ブレイクしたプロ注目右腕・中岡は、威力のある直球と多彩な変化球を駆使して7回7奪三振2失点(自責1)とエースの役割を果たした。今年は日本ハムにドラフト2位で入団した大黒柱・金村尚真投手が抜けたが、中岡がいる限り投手陣の心配はなさそうだ。「もちろんプロに入ることを目標にしている。その前に全勝優勝して、全国に行きたい」。チームの目標、個人の目標を成し遂げるべく、大学ラストイヤーも腕を振り続ける。

開幕試合で力投する中岡

 打線も2試合で17得点と機能した。昨年は4年生の主力が多かったこともあり、打順やメンバーが大きく入れ替わる中、開幕試合から新クリーンアップが躍動。3番・松尾翼内野手(4年=作新学院)は2打数1安打1打点、4番・渡邉悠斗捕手(3年=堀越)は4打数3安打2打点、5番・山澤太陽内野手(3年=啓新)は4打数3安打3打点と結果を残した。また1番を任された麦谷祐介外野手(3年=大崎中央)は1回戦で三塁打2本、2回戦で適時打2本とリードオフマンらしい働きを見せた。

 そんな中、昨秋下級生ながら主軸を打った佐々木大輔内野手(3年=一関学院)は2試合とも「9番・遊撃」でスタメン出場。昨秋から約10キロ増量したことで打球スピードや飛距離が変化してきていたものの、オープン戦では調子が上がらず、長打も出ていなかったという。しかし、打順が下がったことで「甘く来た球は打ちにいこう」と気持ちが吹っ切れた。開幕試合では左右に2本塁打、2回戦でも左右に二塁打2本を飛ばし、磨いてきた長打力を発揮した。佐々木が今後も打線のキーマンとなりそうだ。

力強くバットを振る佐々木

 富士大の選手層の厚さはリーグ随一で、ルーキーの赤瀬健心外野手(1年=下関国際)、渡辺陸外野手(1年=花巻東)も早速スタメンに名を連ね活躍している。今年も北東北を引っ張る存在となることは間違いない。

開幕戦から際立った八戸学院大の強力投手陣

 7季ぶりの優勝を狙う八戸学院大は、岩手大相手に連勝スタートを切った(2回戦は不戦勝)。1回戦は9-2で快勝。序盤は守備の乱れもあり、4回までリードを許す苦しい立ち上がりとなったものの、5回以降は得点を重ね突き放した。

 中でも際立ったのが、投手陣の豊富さだ。開幕試合では高橋凱投手(4年=湯沢翔北)、竹嶋亮投手(3年=札幌大谷)、加藤響投手(3年=金足農)、岩井裕貴投手(2年=秀明英光)、小林直生投手(2年=聖和学園)、坂主清投手(4年=作新学院)と6人の右投手が登板。サイドの竹嶋を除く5人は最速が140キロを超えた。

 先発した高橋は最速151キロを計測。今秋のドラフト候補にも挙がる逸材で、直球の球速は常時でも140キロ台中盤~後半を保った。本人が武器だと自負する「分かっていても打たれないまっすぐ」が、今春も他大学の打者にとっての脅威となりそうだ。一方、変化球は現状スライダーが中心となっており、高橋は「落ちる球も使って、投球の幅を広げたい」と意欲を見せている。ドラフトも見据えつつ、総合力の向上を目指す。

リーグ戦初登板で圧巻の投球を披露した加藤

 3番手の加藤はリーグ戦初登板ながら、2回1安打無失点と好救援。逆転した後の2イニングをピシャリと抑えた。この日は140キロ台の速球で押し切り、最速は148キロをマーク。今後の飛躍を予感させる、堂々たる初マウンドだった。

 加藤のほか、竹嶋、岩井、小林もリーグ戦では初めてマウンドに上がった。経験の浅い投手陣を懸命にリードしたのが、昨秋から正捕手を務める竹本江希捕手(4年=学法石川)だ。初登板の投手に「気負わずに今までやってきたことをやればいいよ」と声をかけ好投を引き出した一方、四球をきっかけに失点する場面もあり、試合後は「(初登板の投手の)不安要素を完全に取り除けなかったのは反省点」と唇を噛んだ。

貴重な本塁打を放った竹本

 それでも、「自分のタイトルはどうでもいい。とにかく優勝できる、勝てる捕手になりたい」との言葉通り、扇の要としてチームに欠かせない存在となっているのは確か。昨秋打率.385を記録した打撃も売りで、この試合では7回に、リーグ戦初本塁打となる一発を左翼席へ放り込んだ。頼れる4年生捕手が、攻守でチームを牽引する。

収穫と課題手にした青森大、ノースアジア大

 開幕節で当たった青森大とノースアジア大は1勝1敗スタート。1回戦はノースアジア大が6-1、2回戦は青森大が8-1で勝利した。

力強い球を投げ込む佐藤

 2季連続優勝を狙う青森大は、昨秋の絶対的エース・内山透吾投手(現・トヨタ自動車東日本)が卒業した後とあって、投手力が課題。1回戦は開幕投手を務めた好左腕・佐藤翔英投手(4年=稚内大谷)が4回まで安打を許さない快投を続けるも、5回につかまり回の途中で降板、中継ぎ陣も失点を重ねた。一方で2回戦は鈴木太晟投手(2年=金足農)が4回1失点と試合をつくり、勝利を呼び寄せた。打線は経験豊富なメンバーがそろうだけに、庄司陽斗投手(4年=聖和学園)、鰺坂由樹投手(4年=金光大阪)ら実力者を含めた投手起用が勝敗の鍵を握ることとなりそうだ。

開幕から完投勝利を挙げた橘高

 ノースアジア大は、1回戦で先発右腕・橘高康太投手(3年=ノースアジア大明桜)が雨中の力投を披露した。140キロ前後の直球やカットボールを駆使した投球で青森大打線を散発5安打に抑え込み、9回9奪三振1失点完投勝利。2回戦は登板した3投手がいずれも失点するかたちとなったが、橘高を軸に投手陣を立て直したい。打線もつながった時の怖さがあり、投打が嚙み合えば自然と上位に食い込んでくるだろう。

岩手大、青森中央学院大は開幕節連敗から巻き返しを図る

 岩手大、青森中央学院大は開幕節で白星を挙げることができなかった(岩手大の2回戦は不戦敗)。両校ともに課題を残した中、チームの持ち味が光る場面もあった。

 岩手大は足を使った攻撃で八戸学院大相手に4回までリードを奪った。初回は1、2番の連打と相手投手の牽制ミスで無死一、三塁をつくると、一塁走者・玉熊佑成内野手(2年=青森南)の盗塁が捕手の悪送球を誘い、その間に1点を先制する。同点で迎えた4回は、一死から四球で出塁した永井友翔外野手(3年=長野西)がすかさず盗塁を決め、次打者の蹴揚祐斗外野手(3年=八戸)のしぶとい右前打で本塁に生還した。序盤に展開したような緻密な野球を徹底し、国立大の意地を見せたい。

開幕試合で適時打含む2安打をマークした蹴揚

 青森中央学院大は富士大に投打で圧倒される試合内容となった。1回戦は好投手・中岡から2得点したが、いずれも4番で開幕投手も務めた横山永遠投手(2年=八戸学院光星)が攻撃の起点をつくった。またこの試合では1番の桐山大空内野手(2年=八戸西)も2安打1盗塁と躍動。1、4番に好打者が座っているだけに、打線の組み方次第では大量得点も見込める。野手、投手ともに開幕節から1年生も多く出場機会を得ており、ここからの成長が楽しみなチームだ。

好走塁で三塁へ向かう桐山

 今春の戦いはまだ始まったばかり。次節以降も秋田、青森、岩手の各地で熱戦が繰り広げられる。全国切符を勝ち取るのはどのチームか、今後の展開に注目だ。

(取材・文・写真 川浪康太郎)

読売新聞記者を経て2022年春からフリーに転身。東北のアマチュア野球を中心に取材している。福岡出身仙台在住。

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