「存在するのはルールだけ!」FutureDreamCupレポート Vol.1

11/2(土)、埼玉県吉川市の吉川運動公園で「10th Anniversary FutureDreamCup」が開催されました。

「存在するのはルールだけ!」

このイベントは日本ダイバーシティ・スポーツ協会の主催で、国籍・障がい・年齢・性別・LGBTQなど全ての壁を取り払い、「誰もがありのままに、自分らしく」心から野球を楽しみ、誰も排除しない”多様性”の野球大会です。

今回は第10回の記念大会となり、参加チームも過去最多の10チームで行われました。

選手宣誓は野球選手のモノマネ芸人たちにより結成された「偽ジャパン」代表のアントキの猪木さん。

選手宣誓したアントキの猪木さん。最後に手話で「元気があれば何でもできる」と参加者に披露

国歌斉唱は“ファイヤーファイターガール”として活躍中の佐々木ゆかさんが歌い、日本で初めて聾唖(ろうあ)者で主演女優を務め、数々の賞を受賞した女優の忍足亜希子さん、そして横浜DeNAベイスターズの”ハマの番長”三浦大輔さんの実弟で俳優・手話シンガーの夫・三浦剛さんご夫妻が手話で表現しました。

佐々木ゆかさんと三浦さんご夫妻。三浦さんご夫妻は手話スクールを運営している

始球式は1992年夏の甲子園で松井秀喜さん(元巨人・ニューヨークヤンキースほか)を5打席連続敬遠した投手である元明徳義塾高校・河野和洋さんが登板し、偽ジャパンで松井秀喜氏のモノマネをする松井不出来さんとの1打席勝負。
マウンド上で乱闘が起こる演出(?)で大会の幕が開きました。

始球式では松井不出来さんへの死球をきっかけに乱闘(?)が起きる

初戦は千葉県の身体障がい者野球チーム「市川ドリームスター」と中原恵人(しげと)吉川市長や河野和洋さん、偽ジャパンなどの混合チーム「Divercity Yoshikawa City」の組み合わせ。
10:15に球審を務める同じく偽ジャパンの敷卍(しき・まんじ)によるプレーボールの声が掛かりました。

初回に市川ドリームスターの打線爆発

市川ドリームスターの先発は三浦敏朗
(以降、選手名は敬称略)下肢障がいを持ちながら投手として練習を重ねてきました。迎えたこの日は先発マウンドに立ちます。

先発の三浦。試合前の練習通り低めに球を集める

Divercity Yoshikawa Cityの先頭打者は始球式で参加者を沸かせた河野。その大きな体格からは威圧感を感じます。

投手三浦との勝負。河野はフルカウントからの6球目を強振し、ライト前に運びます。
その後安打と失策で満塁となり4番の一打で1点を先制。

しかし、ここから三浦が踏ん張ります。次打者で坂本勇人(巨人)のモノマネをする偽ジャパン・さかともを三振に切って取ると、死球を挟み松井不出来は高めの球を振らせ、二ゴロに打ち取りピンチを切り抜けます。

偽ジャパンのさかとも。巨人・坂本のモノマネで爆笑を誘う

1回裏、市川ドリームスターの攻撃。
Divercity Yoshikawa Cityの先発マウンドには前田健太投手(ロサンゼルス・ドジャース)のモノマネをする偽ジャパンのマネケンが立ちます。

先発のマネケン。前田投手同様スライダーが冴える

先頭から市川ドリームスターが猛攻撃に出ます。1番・小林浩紀が三塁内野安打で出塁すると、この日2番に入った強打者・山田元が初球をフルスイング!わずか3球で同点に追いつきます。

この後も攻撃の手は緩めません。3番・石井修が内野安打でつなぐと4番・山岸英樹が走者一掃の三塁打。3点を勝ち越します。
さらに市川ドリームスターの小笠原道大GM(北海道日本ハムヘッド兼打撃コーチ)のモノマネをするGM補佐・小笠原ミニ大も二塁打を打つなどさらに4点を加え、一挙8点のビッグイニング!試合を大きくひっくり返します。

小笠原ミニ大GM補佐。豪快なスイングを見せた

好投で強力打線を無失点に

2回表、Divercity Yoshikawa Cityはその名の通り、多様性のある選手構成で臨みます。

国家斉唱で綺麗な歌声を披露した佐々木ゆかや吉原市在住の子どもたち、そしてこの試合で捕手を務めた中原吉原市長も登場しました。この回Divercity Yoshikawa Cityは1点を加えます。

2回裏、Divercity Yoshikawa City は河野がマウンドに立ちます。
さすが元甲子園球児といえる見事なマウンド捌きで前の回に猛攻を見せた市川ドリームスターを無失点に抑えます。

両軍無得点で最終回へ

3回表、市川ドリームスターは2番手に遊撃から小林が投手に回ります。低めへの変化球も冴え、3球で内野ゴロ2つとテンポの良い投球を披露します。
そして1番に戻り、表に好投を見せた河野に打順が回ります。2球で2ストライクと追い込み、続く3球目を中飛に打ち取りました。
この回を危なげなく3者凡退でまとめ、次の攻撃につなげます。

2番手の小林。遊撃から投手とセンターラインを担う

3回裏、Divercity Yoshikawa Cityは3番手の吉川市民代表が河野の後を継ぎます。
市川ドリームスターは9番・遠藤敬之の中前安打で出塁しますが後続が凡退し、この回は両軍無得点。
大会規定上、試合時間が90分で打ち切りとなるためこの回が最終回になります。

最終回、偽ジャパンの本領発揮!?

市川ドリームスターは小林が2イニング目に入ります。先頭を打ち取ったところで、ついに偽ジャパンを率いるアントキの猪木が登場。打席に向かうとこの日一番の大歓声が沸き起こります。

ベンチでは乱闘に備え、ラインの近くで構える選手もいる中で迎えた2球目、レフトへ大飛球が飛びます。惜しくもファールとなり、2ストライク。3球目もファールとなった後の4球目、左中間の2塁打を放ちます。その大きな体格で豪快なバッティングを披露しました。その後、山田哲人選手(東京ヤクルト)のモノマネ・山田別人や今シーズン限りで引退する阿部慎之助選手(巨人)のモノマネ・あれ慎之助がつなぎますが後続が倒れ無得点に終わります。

アントキの猪木が最終回に登場。柵越え寸前のファールではどよめきが起きる

4回裏、Divercity Yoshikawa Cityの投手は4番手にバトンが渡ります。
市川ドリームスターの攻撃は先頭の2番・山田が打席に立ちます。前の打席でライトオーバー打った打撃そのままに、2球目を振りぬくと打球は外野の頭上を越え、ランニングホームランに。貴重な1点を加えたこの回は、4番・梶本祐介が三振に倒れたところで90分となりゲームセット。9-2で市川ドリームスターが勝利し、トーナメント2試合目に駒を進めました。

障がい者や健常者、大人や子どもそして芸人が、同じグラウンドで時間を共有し、野球を通じて“多様性”が輝く特別な試合となりました。

試合終了時の整列。マツコ・デラックスのモノマネをする北条ふとしさんも加わる

試合後のコメント

仲村謙人ゲームキャプテンの声

今日はみんなが楽しむことに重点を置いた試合だったと思います。
ピッチャーが前に出て子どもさんにトスして打ったりもして、そういったことも含めて大会の成功ですので良かったと思います。
試合では、今日は特に走塁の意識が良かったです。みんな上手く走れて次の塁に積極的に進めました。
あとは、ゲームキャプテンでしたので、整列の時にアントキの猪木さんと握手できたのがいい思い出です(笑)

山田元選手の声

投手がマネケンさんで前回の試合で無失点※だったんで今日は打ってやろうと。
モノマネ軍団面白いですね。1塁の守備中に猪木さんや河野さんと話もできましたし、
エンターテイメントの方たちとやるのも本当に楽しいです。
市川の今年のテーマで「盛り上げよう・楽しもう」ってのがあるので、こういったエンターテイメント性ある試合は今後も積極的に参加できたらいいなと思います。

※独立リーグ・茨城アストロプラネッツ戦で1回無失点

三浦敏朗選手の声

元々2イニングの予定でしたので、最後投げ切れたのはよかったです。自分の中で少し緊張していましたが、守ってる仲間を信じていましたので、開き直れました。
自分は下肢障がいで普通の投手と違って足を高く上げて踏み込めないですが、傾斜のないマウンドでも体を安定させるポイントを探してもっと長いイニングを投げれるようにしたいです。

小笠原ミニ大GM補佐の声

試合は分け隔てなく、老若男女・上手い下手関係なくみんなが野球を楽しむことができたと思います。
僕らは芸人なので少しふざけたこともしちゃうじゃないですか?でも中断しようがボケようが僕らも楽しめましたし、偽ジャパン自体もこんなに集まるのが久しぶりでしたので和気あいあいと野球ができました。
整列した時に一体何だったのかよくわからないように見えて、でもそれが面白い大会でしたね。

◆特定非営利活動法人日本ダイバーシティ・スポーツ協会HP
http://www.diversity-sports.org/

◆市川ドリームスターHP
http://dreamstar.html.xdomain.jp/

白石 怜平
1988年東京都出身。 趣味でNPBやMLB、アマチュアなど野球全般を20年以上観戦。 現在は会社員の傍ら、障がい者野球チームを中心に取材する野球ライターとしても活動。 観戦は年間50試合ほどで毎年2月には巨人をはじめ宮崎キャンプに訪れる。 また、草野球も3チーム掛け持ちし、プレーでも上達に向けてトレーニング中。

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