元横浜高校名コーチが褒める逸材とは?
元横浜高校の野球部長で名コーチ、名参謀として一世を風靡した小倉清一郎さん(74歳)。めったに選手を褒めない辛口評でも有名だが、その小倉さんが「あの子、いいよ!」と高く褒める選手がいる。
神奈川の横須賀市佐原にある湘南学院の古謝樹=こじゃたつき=左腕投手(2年=横浜市立岩崎中学出身)だ。身長178㌢63㌔とまだまだ細身だが、その潜在能力は高い。投げない時は、チームの中心三番に座り非凡な打撃センスでスタンドを唸らせる。
(写真は、古謝樹投手)
臨時コーチとして今もグラウンドに立つ小倉さん
小倉さんは同校の臨時コーチとして月に数回グラウンドに立っている。「フォームは柔らかいし綺麗だが、今は腰を痛めているせいかスピード不足で空振りを取れない。この状態じゃ、全然物足りない。右肩がホーム側に入ってしまい、体が開いたまま、上体だけで投げているのでどうしても外角高めに抜ける傾向がある」とその点は、やっぱり辛口評だ。
古謝投手は、筋肉がまだ出来ていなかった1年生の冬休みに下半身強化のトレ-ニングに取り組んだところ、腰が張りはじめ更に足も上がらなくなるほどの痛みに襲われた。尾
てい骨の上の第五腰椎がおかしくなっているとの診断を受けた。しかし昨春の県大会前に完治ではないが多少投げられるようになったので、痛み止め注射を打ってマウンドに上った。
勝てば夏の100回記念大会で県南大会の第一シード権を手にすることができる対日大藤沢戦、再痛が襲った。「7回ぐらいから痛みが出はじめたが、最後まで投げきろうと思って、普段なら力を抜く場面でも気持ちが高まってしまい、上半身だけで投げてしまった。結果、下半身に疲れが出だし、そのうち全く動かなくなり8回には本塁打も打たれてしまいました。インコースを使って変化球で打ちとるつもりでしたが、痛いのでどうしても体の開きが速くなりシュート気味になり真ん中に入ってしまった」と古謝投手。苦い経験となった。
本萱昌義監督(55歳)は「春失敗したので古謝に、夏に全てを出し切るか、秋に自分たちの代で投げるかの二者択一を迫ってみたところ、『秋に専念したい』とのことだったので、夏は舞岡戦で1回、藤嶺藤澤戦で2回の僅か3イニングだけしか投げさせませんでした」と言う。
新チームになってキャプテンの重責も与えられたことから、古謝投手への逸材としての周囲の期待度の高さがわかる。
「昨秋はセンバツ甲子園もかかっていたので気持ちは高まっていたし、腰も治った感じだった。右足を溜めて、おしりから下げて腕をしっかり振り、自分のフォームで投げることを念頭においたピッチングを心がけました。新しく覚えたチェンジアップに加え、腰にも負担が軽い変化球と真っ直ぐを組み合わせる投球をするようにしました」
熱投の代償は大きく秋は疲労骨折
はじめは大丈夫だと思われた秋の県大会だったが、試合を重ねるごとに、少しずつ痛みを感じるようになっていった。そして準々決勝目前の対湘南工大付戦(4回戦)で8回3
分の2で途中降板。エラーがらみで5点を献上したものの奪三振8,被安打5,四球3と粘投した。しかしながら8対5で敗戦。
(写真は、選手にトスを出す小倉さん)
医師から伝えられた痛みの原因は疲労骨折だった。そのため秋季大会以後、ピッチングは控えている。その分50㍍ダッシュを毎日50本。体を柔かく、下半身強化のためにスクワットなどで基礎筋肉と体力を付けている最中だ。2月初めのMRI検査で疲労骨折部分は、すでに繋がって完治しているとの朗報に元気を取り戻した。力を入れなくてもボールがのびるようになり、コントロールもついてきた。最後の春、夏へ向けてリスタートを切ることができるようになった。
「夏までには140㌔台の真っ直ぐと、スライダーとチェンジアップのキレをもっと良くして『負けない投手』を目指します。他の投手も成長しているので、自分もキャプテンとしてもっと頑張らなくては」と古謝投手。
「ストレートは135~6㌔だが、伸びてくるので打者にとっては140㌔以上に見える。課題は、ピッと小さく鋭く曲がるスライダーを完成させ、カーブとの違いをハッキリさせること。もっともっと走り込んで鍛えれば、将来的にはオリックスの成瀬善久投手みたいになるでしょう」と小倉さん。「県内でも5本の指に入る投手」と辛口の中にも、高い評価を与えている。
(写真は、部員に見本を見せる小倉さん)
まずは、この夏の古謝樹投手に注目だ。
▼前回の大友良行コラム「埼玉県の勢力地図を塗り替える ~加圧トレーニングで身体能力を向上~」
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