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ユニバーサル野球 東京ヤクルトスワローズと共催 三輪正義さんと分かち合った笑顔と喜び「挑戦している仲間がいたら、たくさん応援してあげましょう」

9月中旬、東京都北区立なでしこ小学校で「ユニバーサル野球」が行われた。

東京ヤクルトスワローズとのコラボ開催となり、かつて選手でもあった三輪正義さんがユニフォーム姿で登場。子どもたちとともに笑顔あふれる空間になった。

(取材協力:堀江車輛電装株式会社、東京ヤクルトスワローズ 写真 / 文:白石怜平)

全国で展開される”誰でもプレーできる”野球

ユニバーサル野球は、堀江車輌電装の中村哲郎さんによって考案・発明された。実際の野球場の1/20の大きさの”リアルな野球盤”とも呼ばれている。

誕生のきっかけは17年4月。知人の紹介によりスポーツコミュニティの教室に参加したときのことだった。一緒に参加した脳性麻痺の少年から「野球をやりたいです」という言葉を直接聞いた。

北海道出身で、夏の甲子園に通算40回目の出場を誇る名門・北海高校の元球児だった中村さん。野球人の血が騒ぎ、その想いを実現させたいと約2年かけて自らの手でつくりあげた。

誰でもプレーできるユニバーサル野球

19年3月に東京都立小平特別支援学校で体験会を行って以降、コロナ禍での縮小開催などを経て、現在は全国の特別支援学校や小学校、放課後等デイサービスで展開されている。

今年6月には北海道5地域で開催。北海道日本ハムファイターズ協力のもと、3月に開業した新球場「ES CON FIELD HOKKAIDO」型の特別版で実施するなど、中村さんがその足で全国を回り活動を広げている。

堀江車輛電装の中村哲郎さん

ユニバーサル野球のプレーの特徴は、年齢や性別、障がいの有無に関係なく”誰でもできる”ことである。

ひもを1cmほど引くとストッパーが外れてバットをスイングすることができ、ホームベース上で回転する円盤上に設置されたボールを打つ。

判定は、グラウンド上に「HOMERUN」や「1BH」「OUT」などと記された場所によって判定。その結果で得点が与えられ、チームでの合計点で勝敗を競う。

グラウンド上に記された結果で得点が決まる

東京ヤクルトスワローズと北区で共催

9月、ユニバーサル野球は東京ヤクルトスワローズとコラボして行われた。スワローズは本拠地を置く東京都で社会貢献活動を積極的に行っている。

小学校での「投げ方教室」や職業選択の学習などにてOB選手が講師を務め、教育の現場に深く根付いている。今回は「ユニバーサル野球」と手を組み、総合的な学習の時間として展開された。

選手OBで現在は球団広報を担当している三輪正義さんが講師を務めた。三輪さんは、08年から19年までの12年間スワローズでプレーした。15年には87試合に出場しチームのリーグ優勝に貢献、日本シリーズの舞台にも立った。

元選手で現在は広報を務める三輪正義さん

内外野守れるユーティリティプレイヤーとして活躍するだけではなく、明るいキャラクターでムードメーカーとして盛り上げるなど、グラウンドそしてベンチ両面でチームを支えた。

19年に引退後、翌年から広報担当に就任。都内の小学校を訪問し、1か月で1000人以上の児童に投げ方教室を開催するなど、野球の楽しさを伝え続けている。

今回設定したテーマとねらい

会場は東京都北区立なでしこ小学校。交流の深い区立赤羽小学校と合同授業で行われた。

今回のテーマは「選手=お友達の良いところを紹介し、応援し合う交流戦 」。”選手”は特別支援学級のクラス約40名。1年~3年生は生活単元学習、4年~6年生は総合的な学習の時間として行われた。

ユニバーサル野球では地域や学年・クラスによって趣旨を合わせながら行っている。ここではテーマをベースに、

「自分の良いところを多くの人に知ってもらうことで自信につなげる」

「応援が自分の力を引き出してくれることを体感し、頑張っている人を応援しようとする気持ちを育てる」

「ルールを守り、勝敗のあるゲームを楽しむことができる」

「チームのみんなと協力する良さを味わう」

上記の4つをねらいとして設定した。

児童たちが”グラウンド”に集まり、ユニフォーム姿の三輪さんが紹介されると会場からひときわ大きな拍手が沸き起こった。

ここで、三輪さんからプレゼントとしてスワローズのキャップが用意され、一人ひとりに直接手渡した。

三輪さんからプレゼントされたスワローズのキャップを着用して”プレー”した

東京音頭と傘で神宮球場のさながらの雰囲気に

ユニバーサル野球は児童たちにとって初めての経験。三輪さんのレクチャーと練習で一人1打席ずつ立ったのちに試合がスタート。

プロ野球をモチーフにしたアナウンスで選手を紹介し、その際に選手のいいところをコールして打席に送り出す。そして後ろの太鼓でさらに背中を後押しする。それぞれの役割を担うのはチームメイト。応援し、応援してもらうことでお互いを高め合った。

試合では一人2打席立った。1巡目はなかなか安打が出ず三輪さんも悔しい表情を隠さなかった。

三輪さんも選手とともに悔しい表情を見せた

しかし、2巡目になるとそれぞれが適応能力を見せ、安打や安打性の辺りを量産。出塁すると三輪さんやチームメイト、そして先生も一緒にハイタッチで出迎え、会場のボルテージが上がっていった。

そしてついに本塁打が飛び出すと最高潮に。東京音頭が流れるとスワローズの応援名物の傘が振られ、神宮球場のような盛り上がりを見せた。

写真上:打席では会場全員で応援した  同下:名物の傘で本塁打を打った選手を祝った

45分の授業はあっという間に過ぎ、2試合を行いきった。三輪さんは講評とともに児童へメッセージを贈った。

「今日はたくさんの人の助けがあって、ユニバーサル野球を開催できました。僕一人ではできません。みんなも何かに挑戦しようと思った時には、一人ではなく、いろいろな人が助けてくれます。たくさん挑戦してみてください!

そして、挑戦している仲間がいたら、今日みたいにたくさん応援してあげましょう!ユニバーサル野球は障がいがある、ないに関わらず、いろいろな人が楽しめます。この機会に、誰もが一緒に楽しめる事を考えてみてください。今日がそのきっかけになれば、僕も嬉しいです」

最後は全員とタッチを交わし、授業は惜しまれつつ終了した。

中村さんは全国各地を回りながらユニバーサル野球を通じて、三輪さんは野球人として今もスワローズのユニフォームを着て、子どもたちの未来を照らし続けている。

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