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首都大学野球春季リーグ戦、開幕! 日体大・筑波大・武蔵大の戦力は?(前編)

 4月1日、首都大学野球春季リーグ戦が開幕した。これから約2ヵ月に渡り、熱い戦いを繰り広げていく。

試合が行われるのは毎週土日。平日は次の週末の戦いに向けて戦略を練り、技術の向上を目指す。短期決戦と違い、週を追うごとにチームが変化していく様子を見られるのも、大学野球リーグ戦の醍醐味だ。開幕時と閉幕時では、まったく違う印象のチームとなっていることも珍しくない。

 開幕戦、特に新チームで迎える春のリーグの開幕戦は、いつも独特の緊張感が漂う。選手たちの動きにはまだ固さを感じるが、その中でも今季の各チームの特徴や戦い方のテーマが見えてくる。開幕日の4月1日、翌2日には、日本体育大学-明治学院大学、武蔵大学-桜美林大学、筑波大学-東海大学の試合が行われた。各カード、2勝先取したチームが勝ち点1を獲得。1勝1敗となった場合は、予備日に3回戦が組まれる。

 今回は、開幕2連戦から見えた各チームの特徴を選手の言葉とともに、前編・後編に分けて綴る。

日本体育大学 勝ち点1

明治学院大戦 2勝
〇 6-3
〇 4-2

 昨秋の王者、日体大。投打の柱だった二刀流のスター、矢澤宏太投手兼外野手(現・日本ハム)は卒業したが、公式戦出場経験のある選手が多く残っている。新主将となった相澤利俊内野手(4年・山梨学院)も「下級生から試合を経験させてもらっている選手が多くいるので、そういう4年生を中心に練習をやっています。チーム力で勝つ野球を目指しています」と話す。

 古城隆利監督が「(選手たちの)調子を見ながら適材適所に置いている」という打順で、期待したいのはやはり松浦佑星内野手(4年・富島)と中妻翔外野手(3年・常総学院)の一、二番コンビだ。足の速いふたりが出塁すれば、攻撃の幅が広がる。

 四番には、昨秋チーム内トップ、リーグでも2位の打率.400という成績を残した南大輔内野手(3年・花咲徳栄)が座った。昨秋までは外野を守っていたが、今季はサードの守備につく。外野手としての広い守備範囲も魅力だが、内野手としての機敏な動きもまた見ごたえがある。昨秋、開幕直後に故障離脱してしまったセカンド・中島優仁内野手(3年・佐賀商)も戻ってきた。ショート・松浦との二遊間は硬い。

 開幕戦では、六番・指名打者の重宮涼内野手(4年・明石商)が、1点本塁打を含む3安打4打点と大暴れした。守備位置はサードで、今季は南にポジションを奪われた形になるが、売りは打撃だ。「体が大きい分(180cm・88kg)、バッティングの方で期待されていると思うので、そこはしっかり割り切っています。去年の春も東海大戦では打ったんですけど、そのあとなかなか続かなかったので、今季は調子の波がないようにしたいです」。

 両腕に大引啓次臨時コーチ(元・ヤクルトなど)からもらったリストバンドをつけて、試合に臨む重宮。同コーチに「打席の中で一番大切なのはタイミングと集中力」と言われたことが一番心に残っているという。「基礎中の基礎ですが、野球をやっていく中で技術的なことにとらわれて忘れがちになることを改めて教わりました」。

ホームランを打って笑顔の黒川

 2回戦では、三番・レフトの黒川怜遠外野手(2年・星稜)、五番・センターの本間巧真外野手(4年・東海大相模)がそれぞれ1点本塁打を放った。今季、初の開幕スタメンを勝ち取った黒川は、このままレギュラー定着となるか。

 開幕2連戦は、ともにチーム安打数5と多くはなかったが、総合的に見ると野手陣の打撃力、そして守備力も高いと見ていいだろう。未知数なのは投手陣だ。ここ数年、毎年絶対的なエースがいた日体大だが、今年はベンチ入り投手のほぼ全員が横一線のスタートに見える。開幕戦で先発した八田歩投手(4年・大和)は経験豊富だが、2試合ともにリリーフ登板した伊藤大稀投手(2年・智辯和歌山)をはじめ、リーグ戦初登板を果たした寺西成騎投手(3年・星稜)、篠原颯斗投手(2年・池田)、飯島大斗投手(3年・中京大中京)などは、これからが期待される投手たちだ。捕手の山下航汰(3年・京都外大西)とともに、シーズンを通してどう成長していくかは見どころのひとつとなるだろう。

2回戦、先発の篠原はリーグ戦デビュー

 昨季にリーグ戦デビューを果たし、防御率0.00という成績を残した箱山優投手(3年・日体大柏)は、リリーフエースとしてチームを支える。「ドラフト1位でプロ入りしたい」と口にしている以上、想像を超える活躍が見たい。

 6チームの中で唯一、2連勝のスタートを切った日体大。主将の相澤は「日本一という目標を掲げていますが、まずはリーグ戦全勝優勝を目指します」と力強く言った。相澤自身もバットでチームを引っ張る。この勢いのまま、連覇となるか。

筑波大学

東海大戦 1勝1敗
〇 3-2
⬤ 0-2(延長11回)

 なかなか上位に食い込めない苦しい時期を乗り越え、昨秋は2位となった筑波大。投手、野手ともに主力選手が残り、大きく変わらない布陣でこの春を迎えた。

 現時点で、投手の平均水準はリーグ1と言ってもいいだろう。飛び抜けた存在はいないが、安定感のある投手陣だ。昨秋、規定投球回に達したのは西舘洸希投手(現・七十七銀行)のみ。細かい継投で戦う試合も多かったが、リーグ戦を終えてみると登板したほとんどの投手が防御率1点台だった。

 この春、開幕戦の先発を務めたのは、寺澤神投手(4年・鳥栖)だ。初回に筑波大が3点を先制、寺澤が4回2/3 2失点でマウンドを降りると、3投手が1点差を守り切って初戦を制した。2回戦の先発を務めた村上滉典投手(4年・今治西)は3回無安打無失点の投球。この日は、なんと10回まで(10回からはタイブレーク、無死一、二塁・継続打順)6投手でのノーヒットノーランを続けた。11回に失点し最終的には敗戦となってしまったが、これぞ筑波大という戦いだった。

どんな場面でも頼りになる北爪

 リリーフ陣は、右であれば山田拓朗投手(4年・川越東)、隼瀬一樹投手(3年・伊香)、国本航河投手(2年・名古屋)、左は長曽我部健太郎投手(3年・北野)、一井日向汰投手(3年・武蔵野北)などがいる。そして、この先は絶対に点を取られたくないという場面で出てくるラスボス的存在、北爪魁投手(4年・高崎)。いかに北爪に繋ぐかがカギとなる。

 野手陣の打撃にも期待ができる。開幕戦は4安打に三盗、相手のエラーなども絡み、1回表から3点を先制。主将の西浦謙太捕手(4年・府立八尾)が「できすぎ」と言うくらいのスタートとなった。

 「いろいろ試したんですけど、結局こうなりました」と、川村卓監督は今季も一番に石毛大地外野手(4年・県立相模原)、二番に永戸涼世内野手(3年・八千代松陰)を並べた。頼れるリードオフマンの石毛と、今後さらにチームの中心選手となっていく永戸で打線に勢いをつけることができれば、長打もある三番の西浦、川村監督も信頼を置く四番・大高正寛内野手(4年・星稜)、12月の侍JAPAN大学代表候補強化合宿にも参加した五番・生島光貴内野手(4年・福岡県立福岡)のクリーンアップが打って、ホームを踏ませてくれることだろう。

積極的にバットを振る岡城

 「まだ粗さはあるが、思い切りがいい。積極性が持ち味の選手」、そう川村監督と西浦主将が期待する六番・岡城快生外野手(2年・岡山一宮)は、リーグ戦初出場。初打席で右中間に2点適時二塁打を放った。中村真也外野手(3年・専大松戸)、成沢巧馬捕手(4年・東邦)、宮澤圭汰内野手(1年・花巻東)と続く下位打線でも得点が取れれば、もっと打線が活気づくに違いない。

 主将の西浦は「スタンドで応援している人も含めてみんなで勝ちを取る」ことを理想とする。「自分が入学してから声出しの応援がなかったので、今日打席で初めて聞いて、すごいな、力になるな、みんなで戦っているな、と思いました。筑波の応援が、一番声が出ていて一体感もあると思います。そういった面で、全員で勝ちを取るという意識がより強くなれば、個の力は劣っていても勝負になると思うので、そういうチームにしていきたいです」。チーム一丸となって優勝を目指す。

武蔵大学

桜美林大戦 1勝1敗
〇 6-2
⬤ 3-4

 ここ数年、優勝争いに絡むことが多い武蔵大。特に昨年は、打撃のいい4年生が多くいたため得点力が高かった。その4年生がごっそり抜けてしまい、今季の武蔵大打線は不透明だったが、開幕戦では9安打7四死球で6点を挙げた。

 新・一番の松井颯大外野手(2年・桐光学園)が、さっそく活躍。ここまで8打数4安打1四球という成績を残している。二番の茂木陸外野手(3年・星槎国際湘南)は1年春からレギュラーだ。足が速く、センターの守備では守備範囲が広すぎて360°どの打球にもアクロバティックに飛び込む。三番の松本京太郎外野手(3年・仙台育英)は昨秋後半からレギュラーに定着した。本人は「足と守備が売り」と言うが、パンチのある打撃も魅力。2回戦では2点本塁打も打った。

 他には、これまで代打などでの出場が多かった江波戸駿内野手(3年・専大松戸)、大島智貴内野手(4年・国学院栃木)、樋口結希斗内野手(3年・浦和学院)がスタメンに起用された。昨年は指名打者で出場していた岩田侑真捕手(2年・日大二)も含め、今年の武蔵大の中心選手となっていけるか。

 片山敬内野手(4年・聖光学院)が主将となったのも頼もしい。派手ではないが、下級生のときからリーグ戦に出場してきた「武蔵を知る男」。個性豊かなチームをどうまとめていくか、お手並み拝見だ。

2点適時三塁打を打った1年生の秋元

 新入生で唯一スタメンに抜擢されたのが、昨年夏の甲子園で優勝した仙台育英のセカンド・秋元響内野手だ。守備力には定評がある秋元だが、大学野球の公式戦、初の守備の場面では「来た瞬間、固まっちゃいました。大学に入ってから守備に自信がないんですよね」と捕球ミス。だが、その後の打撃では2点適時三塁打を打つなど、ミスを帳消しにする活躍を見せた。

 新1年生の取材では「高校野球と大学野球の違い」について訊くことがある。答えで多いのは「投手の球の質の違い」「打球の速さの違い」などだ。秋元も「投手の球の質の違い」については触れていたが、他にも興味深いことを言っていた。「大学は、キャッチャーがバッターを惑わせるような言葉を言います。今日の打席でもキャッチャーが『ストレート』と言っていたのでストレートを待っていたら、全然違う球が来ました(笑)。その逆もあったりするので、それに惑わされないようにしなきゃいけないです」。

 さらに「ベンチの雰囲気が違います。高校のときは一喜一憂しちゃってベンチが沈むときもありましたが、大学はずっと声が出ていて、打ったときの盛り上がりもすごいです」とも語っていた秋元。早く守備の自信を取り戻して、元気なプレーを見せて欲しい。

下級生の頃からチームの柱だった田中も4年生に

 投手陣は、今年も田中啓斗投手(4年・日大二)、松崎公亮投手(3年・聖徳学園)、小林匠投手(2年・星槎国際湘南)が中心となるだろう。昨秋は新戦力の小林が先発し田中がリリーフに回ったが、今季は田中と松崎が先発する。うしろに小林が控えていると思えば心強い。

 開幕投手は田中だった。6回2失点でマウンドを降りると、7回からは小林が投げ、無失点でチームを勝利に導いた。2回戦に先発した松崎は、4回までランナーを出しながらもホームを踏ませない投球をしていたが、5回に連打を浴び失点。ブルペンにいてくれると安心、困ったときの石綿唯人投手(4年・星槎国際湘南)が後続を抑えた。二瓶大紋投手(2年・八千代松陰)、菅沼鱗太郎投手(2年・実践学園)などのニューフェイスも登板し、今季の武蔵大の戦力が見えてきた。

 プロ入りを目指している松崎が、もう少し持っている力を出すことができれば、チームの勝ちも増えるだろう。「まっすぐの球速は上がってきていてキレや伸びも増しているのですが、それをしっかりコーナーに投げ切るコントロールを身に着けたいです。変化球の精度も日によって差がないように、いつでもストライク、三振がとれるようにしたいです」と、明確な課題を持って取り組んでいる。今後の投球に期待したい。

 開幕週の振り返りとともに各チームの戦力について書いてきたが、冒頭でも書いた通り、大学野球のリーグ戦は「週を追うごとにチームが変化していく」ところも魅力のひとつだ。次の試合で大幅にスタメンが変わっていないとも言い切れないし、今までとはまったく違う戦い方をする可能性だってある。

 首都大学野球春季リーグ戦を、あなた自身の目でチェックしてみて欲しい。

好きな時に好きなだけ神宮球場で野球観戦ができる環境に身を置きたいと思い、OLを辞め北海道から上京。 「三度の飯より野球が大好き」というキャッチフレーズと共にタレント活動をしながら、プロ野球・アマチュア野球を年間200試合以上観戦する生活を経て、気になるリーグや選手を取材し独自の視点で伝えるライターに。 大学野球、社会人野球を中心に、記者が少なく情報を手に入れづらい大会などに自ら赴き、情報を必要とする人に発信することを目標とする。

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