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「滋賀から野球界へ新たな旋風を」-滋賀GOブラックス柳川洋平監督の“既成概念を変える戦い”に迫る(前編)

2022シーズンから始動する日本海オセアンリーグ(以下NOL)。富山県、石川県、福井県、滋賀県に本拠地を持つプロ野球新リーグの4球団が、4月2日の開幕戦を皮切りに頂点を目指してしのぎを削ることになる。

そんなNOLに、ひときわ熱い思いで野球と向き合う男がいた。滋賀GOブラックス監督、柳川洋平氏。 彼は、福岡ソフトバンクホークスで投手としてプレーした元プロ野球選手だ。現役引退後はオセアン横浜ヤングの監督に就任し、中学硬式野球の舞台で全国制覇を経験した。

平塚学園高校時代からお世話になり続けてきた先輩、黒田翔一氏(現:NOLCEO)に招かれて加入した滋賀GOブラックスでは、前年まで断トツの最下位だったチームを監督就任1年目で地区優勝に導いた。そんな柳川監督へインタビューをしていると、「既成概念を変えたい」という情熱がひしひしと伝わってくる。

前編となる今回の記事では、柳川監督が2022シーズンにかける思いやチームの注目選手について尋ねた模様をお届けする。

リーグもチーム名も変わったが、現場の不安はほとんど無い

NOL初代チャンピオンに向け、日々の練習にも熱が入る

――まずは、2022シーズンへ向けた滋賀GOブラックスのチーム事情を教えてください。

柳川氏:指導者で言えば、今季から澤﨑俊和投手コーチ(広島東洋カープOB「以下広島」)と生山裕人野手コーチ(千葉ロッテマリーンズOB)が加わることになりました。澤﨑投手コーチは、昨シーズンまで広島でコーチをされていた方です。プロ野球の第一線で指導されていたコーチから意見が聞けるのは、選手にとっても大きなプラスになると思います。

選手に関しては、昨シーズンから残ったメンバーが半分です。残りの半分は、新たにトライアウトで獲得した選手や知人から紹介していただいた選手が占めています。

私の強みは、野球界の人脈があることです。数年前までヤングリーグで監督を務めており、教え子を全国の高校へ送り出してきました。その繋がりで、今は滋賀GOブラックスへ選手を紹介してもらっています。

今年から所属リーグやチーム名が新しくなりましたが、現場の人間は特に何か変わったという意識はないですね。

――やはり監督として目指すのはNOLの初代チャンピオンでしょうか?

柳川氏:私の性格上、やるからには常に頂点を目指します。新リーグでの優勝は最低条件。それに、ファンからすると「3位でいい、4位でいい」なんてあり得ませんよね。

戦術的なことで言えば、大きな打球を飛ばせる選手は多くないので“足を絡めて繋ぐ野球”を目指しています。新入団選手を含め投手の枚数は揃っていますし、今シーズンから澤﨑コーチも加入したので投手力は安定すると思っています。

チームを改革するために選手の私生活から見直した

2021シーズン、柳川監督率いる滋賀GOブラックスはチーム史上初となるBCL西地区優勝を果たした

――2021シーズンは、前年7勝47敗だったチームを監督就任1年目で地区優勝に導かれました。その裏にはどのような取り組みがあったのでしょうか?

柳川氏:まずは選手の私生活から見直しました。残念ながら、今は野球界全体の指導が緩くなってきているのを感じます。選手には「良いものは良い、駄目なものは駄目」とハッキリ言わなければいけない。

もちろん、練習量を増やしたのと選手の質を上げることにも拘りましたが、例えばゴミが落ちていたら拾うとか、人として出来て当たり前のことから取り組みましたね。

野球もそうですが、基本が出来上がっていないのに特殊なことをやろうとしても無理があると思うんです。昭和の人間で古い考えと言われるかもしれませんが、私生活のおこないがプレーにも影響すると思っています。

あとは私も独立リーグの出身なので、「なぜ今ここにいるのか分かっているの?」と選手に厳しい言葉を伝えることもあります。この場所は、社会人野球と違って何年もいる場所ではない。

個人的な価値観ですが、何らかの事情がないとここに足を踏み入れることは無いのかなと思っています。純粋に力のある高校生は、社会人野球か大学野球、もしくはプロ野球に進みますので。

たとえこの場所で花が咲かなかったとしても、就職に困らないような選手を育てていきたいです。実際に、「もしこのまま引退したら、その後の生活はどうするの?」と選手の将来を心配する声も正直耳に入ります。

「給料とセカンドキャリアを考えれば、社会人野球のほうが良い」と判断する方がほとんどです。監督として未来ある選手たちを預かる以上、先のことまで考えてあげられる指導者でありたいと思っています。

2022シーズンにおける滋賀GOブラックスの注目選手

NPBのスカウトも注目する左腕・荒川翔太投手

――今シーズン、監督が注目している地元・滋賀出身の選手はいますか?

柳川氏:まずは、中学時代に彦根市を中心としたチームで一緒にプレーしていた投手の荒川翔太(豊日中→智辯学園高)と捕手の長谷川勝紀(愛知中→近江高)です。

本来、彼らはここにくるような選手ではないと思っています。ただ、彼らにとっての中学時代の恩師が滋賀GOブラックスの元球団社長だった縁もあり、地元でのプレーを決断してくれました。

荒川は昨シーズンもNPBの球団から調査書が届きましたし、実力的にNPBを目指せる選手だと思っています。彼は生まれ持った天性もあるのですが、テイクバックがとても綺麗で、もし私がNPBのスカウトだったら追いかけたい選手ですね。

実は、高校時代の指導者からは「外野手のほうが良いよ」と紹介されていたんです。確かに、彼は身体能力も凄いし体にバネがある。ただ、本人に意向を聞いたら「投手で勝負したい」と。そこで1度、投手として投げさせてみたら「これは投手をやらせなきゃ勿体ない。将来が楽しみだ」と感じました。

長谷川は、肩が強くてキャッチャーらしい選手ですね。高校2年生までの投手経験もあるため、ピッチャーの間合いを汲み取れることも彼の長所かなと思います。19歳ながら今年からキャプテンに任命しましたが、年上選手とも密にコミュニケーションが取れる点も彼の武器です。

入団2年目、19歳にして主将を任された・長谷川勝紀捕手

――荒川投手、長谷川捕手以外に監督が注目している地元・滋賀出身の選手はいますか?

柳川氏:外野手の鈴村亜久里(愛東中→日本航空高)も、体格こそ小柄ですが楽しみな選手の1人です。彼は何かに目覚めたのか、秋口から意識が変わって目をギラギラさせながら日々練習しています。

実は、鈴村も荒川・長谷川と同じチームで中学時代にプレーしていました。鈴村の場合、守備面はまだまだ伸びると思いますし、持ち前の脚力を活かすことが出来れば上の世界から注目してもらえる選手になれると感じています。

この世界は、入団後3〜4年が勝負です。その期間に出来るだけ実力を伸ばしてあげたいと思っています。地元・滋賀の選手で言えば、新入団選手で米原市出身の山口玲央投手(大垣日大高→岐阜協立大)にも期待していますね。

――監督としては、やはり「地元・滋賀の選手に活躍してもらいたい」という思いがあるのでしょうか?

柳川氏:うちは滋賀県に本拠地を置くチームなので、基本的には滋賀出身の選手を1人でも多く獲得し、NPBへ送り出したいと思っています。

ただ、滋賀には独特の野球事情があって、中学卒業と同時に県外へ野球留学する選手も多いんです。例えば関東の高校へ進学したら、そのまま関東の大学を選んで地元から離れた選手になってしまう。

もっと滋賀GOブラックスを魅力あるチームに育てあげ、滋賀の選手が地元に戻ってくる文化を作っていきたいと思っています。

「戦力面での不安はない」

今シーズンのチーム事情を尋ねると、何の迷いもなくそう答えた。昨シーズン、柳川監督は台所事情が苦しい中でチームを地区優勝へと導いている。戦力が整った今シーズン、滋賀GOブラックスはどれだけの躍進を見せてくれるのであろうか。4月2日の開幕戦が待ち遠しい。

柳川監督が求めているのは、チームの成績だけではない。彼は選手たちへの既成概念を変えるために、野球以外の取り組みにも情熱を注いでいる。

後編では、滋賀GOブラックスをもっと魅力ある球団へと変えるために日々奔走する柳川監督の思いに迫る。

後編に続く

(取材 / 文:ライター兼編集者 濵崎侃)
(写真提供:滋賀GOブラックス)

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