• HOME
  • コラム
  • その他
  • 14チームが結集する「TOKYO UNITE」社会課題へのアプローチを通じ、東京を”エネルギーに満ちた都市”に

14チームが結集する「TOKYO UNITE」社会課題へのアプローチを通じ、東京を”エネルギーに満ちた都市”に

東京に本拠地を置くプロスポーツチームや団体で結成されている「TOKYO UNITE」。

2022年7月に発足した本プロジェクトは、競技の垣根を超えて子どもたちや、社会課題の解決に向けたアプローチをしている。

歴史も規模も種目も異なるチームが結束している本プロジェクトの軌跡と共に、その意義を追った。

(取材 / 文:白石怜平)

東京をホームにするスポーツチームによる共同プロジェクト

「TOKYO UNITE」は7競技14チーム・団体(※)から成る共同プロジェクト。

それぞれの経験や知恵を結集させ、社会課題と向き合いながらスポーツの魅力を高める活動を行っている。

(※)参加チーム
野球:読売ジャイアンツ・東京ヤクルトスワローズ
男子サッカー:FC東京・東京ヴェルディ・FC町田ゼルビア
女子サッカー:日テレ・東京ヴェルディベレーザ
バスケットボール:アルバルク東京・サンロッカーズ渋谷
ラグビー:東京サントリーサンゴリアス・東芝ブレイブルーパス東京・リコーブラックラムズ東京
卓球:木下マイスター東京
水泳:Tokyo Frog Kings
相撲:日本相撲協会

具体的に置いている主な軸は「社会貢献活動」と「マーケティング」。

社会貢献活動については未来を担う子どもたちにアプローチしており、いずれも後述する『「#your_shoes」プロジェクト』と『キッズスポーツフェス 』の2つを中心に発展させている。

事務局の後藤理央さんは、社会貢献活動における2つの背景を語った。

「1つ目は新型コロナの影響や部活動の習い事化が進んだことなどにより、数年の間にも経済格差が大きく広がっていると感じています。これらの理由で子どもたちがスポーツする機会を失ってほしくないという想いがあります。

また2つ目としては、日本では一つのスポーツ競技を小さい頃に始めると、その競技だけをずっと小学校、中学校と続けていくケースが一般的だと思います。

ですが他のスポーツを早いうちからすることで、他に向いている競技を見つけたり、今やっている競技に活かすなど、新たなきっかけを与えられるかもしれない。これらの考えからを取り組みをスタートしました」

キッズスポーツフェスでは様々な競技を体験できる(昨年12月撮影)

マーケティング面では、試合の相互招待を行なっている。例えば読売ジャイアンツのファンクラブ会員をアルバルク東京の試合に招待することで、会員の応援するチーム・競技のシーズンがオフでもスポーツを楽しむことができる。

加えてチーム同士の交流の一つとして試合会場にマスコットキャラクターが来場し、グリーティングやハーフタイムショーに参加している。

観戦に訪れたファンにとっては他競技のチームをより知れるきっかけとなり、チームにとっても競技の垣根を超えたつながりが創出されている。

発足のきっかけは北島康介さんの提案から

TOKYO UNITEはどのようにして誕生したのか。発起人となったのは水泳界のレジェンドである北島康介さん。

20年に北島さんは、アジア初のプロ競泳チームである「Tokyo Frog Kings」のゼネラルマネジャーに就任し、チーム運営に携わっている。

競技者としては世界一になったが、チーム運営側に回るのは初めてだったため、手探り状態からのスタートだった。 

競泳の国際プロリーグである「インターナショナル・スイミング・リーグ(ISL)に参画していることから、海外リーグ組織との関わりやプロスポーツチーム運営について相談したいと考えていた。

そんな中、ジャイアンツの親会社でかつベーブ・ルースさんの時代からMLBと深い関係にある読売新聞社の関係者と21年に話す機会があった。

その会話の中で北島さんから、「東京にある他のプロスポーツチームと、競技の垣根を超えたチーム同士の連携は今あるんですか?」と質問が挙がった。

当時連携がなかったことから、「東京のチームが一つになってやっていけば、何か大きなこと・面白いことができるのでは?」という話があり、実現に向けてスタートした。

事務局を務める井上哲さんはTOKYO UNITEの立ち上げから尽力し、現在の14チーム・団体を直接訪問して回った。

「皆さんへそれぞれ説明した際には『一つのチームで限界があったとしても、多くのチームが結集すればいろいろなことができるのではないか』と話していました。それが賛同いただいた一つです」

TOKYO UNITEへの参画から携わっているBリーグ・アルバルク東京の取締役 兼 経営企画部 部長の浅野英朗さんも、

「東京もさまざまなスポーツ・エンタメがありますので、地域と一緒に何かやるとしても一つのクラブでは難しい部分もあります。

人口がたくさんいますし、『ウチだけお願いします』ではないことは各団体共通認識でした。そのため、TOKYO UNITEの理念である『みんなで手を取り合っていろんなことができるのは素晴らしいこと』と感じました」

と、提案に賛同した理由を語ってくれた。

キッズスポーツフェスでもサンロッカーズ渋谷と共にバスケコーナーを展開した(昨年12月撮影)

加えて井上さんはもう一つ賛同を得られた要因があると続けた。

もう一つは『社会貢献をやりましょう』となって、実際やるにも資金や人的リソースはかかりますよね。プロスポーツの組織ですから、どんなに慈善活動をしても自らの体力を削がれてしまっては続かなくなります。

ですので、プロスポーツ組織として経営の健全化・体力強化をするために、横での連携(営業ノウハウの共有や共同マーケティング)を通じて『東京からスポーツ産業を活性化させよう』というのも感じていただけました」

TOKYO UNITEが展開する2つの軸

TOKYO UNITEを象徴する企画として挙げられるのが、後藤さんが上述した『「#your_shoes」プロジェクト』と『キッズスポーツフェス 』。

前者は、参加チームの選手が実際に使用したシューズなどに直筆サインをいれたアイテムをチャリティオークションに出品し、手数料を除く収益金の全額をシューズ購入費に充てる取り組み。

経済環境の悪化など様々な事情によってスポーツをあきらめてしまう子どもたちに向けてスポーツシューズを届けることで、スポーツを始め、続けていく機会を持ってもらうことを目的にしている。発足初年度から3年連続で実施し、1000足以上のシューズを届けることができた。

キッズスポーツフェスは小学生を対象にしたマルチスポーツ体験イベント。

野球やラグビー、バスケなどボールを使って競技を体験する他に、現役力士による四股踏みや体力測定も行うことができる。

昨年12月に行われた「第4回スポーツキッズフェス」

こちらも3年間開催しており、今年度は7月と12月の2回開催に拡大した。

東京でも公園でボール遊びが禁止されていることなどから、スポーツを身近に体験する機会が減少している。

その背景もあり、さまざまな種類のボールを使ってみることで競技や体を動かす楽しさを感じてほしい想いでこの企画が生まれた。

野球やラグビーなどボールを使った体験ができる(昨年12月撮影)

このフェスでは都内在住の子どもたち約150名が参加する。その中には、「#your_shoes」プロジェクトと同様に経済的に恵まれない子どもたちに向けた招待枠を確保している。

それは、井上さんがある話を聞いたことがきっかけだった。

「NPO法人の方たちと話していて知ったのですが、『スポーツチームから試合に招待いただくのはとてもありがたいのですが、困窮家庭は会場に行くための交通費すら出すのが大変なんです』と。そんな話を伺ったので、それならばとフェスでは招待枠の方には親子での交通費も我々が負担しています」

上記2つのイベントは軸として行われているものであり、他にも自治体と連携した特別授業や、野球の国際大会で試合前セレモニーへ一緒に参加するなど、東京のチーム・団体が1つになった活動が広まっている。

昨年11月には渋谷区で「スローイング×マルチスポーツチャレンジ」が行われた(提供:TOKYO UNITE)

井上さんは、今後TOKYO UNITEを通じて実現したい世界についてこのように語った。

「東京の子どもたちが、どんな環境下・経済条件でもスポーツができる。そんな世の中にしたいです。でもそれは”一丁目一番地”です。

このモデルが他地域にも広がり、あらゆる子がスポーツを自由に楽しめるできる世界をつくるために、この活動を続けることで大きくしていきたいです」

4期目を迎えようとしているTOKYO UNITE。東京を起点としたスポーツにおけるムーブメントは、さらに今後も発展を遂げていく。

(おわり)

関連記事