全国1勝をあげた龍谷富山高校サッカー部 その裏にあった関係者の思い

群雄割拠の富山県を制し、初めて全国高校サッカー選手権大会(以下選手権)に出場した龍谷富山高校。初戦の那覇西高校にPK戦の末に勝利し、2回戦では松山北高校に惜しくも0-1で敗れたものの、全国初勝利を手にした。
大会前、横山旺世(よこやま おうせ)キャプテンは「目の前の試合を大事にしたい」と話し、チームとして明確な目標を立てているわけではなかった。その中で得た全国1勝を手にした経験を、今年度のチームでも主力を担った2年生と中心とした“新チーム”でも生かしたいところだ。
チームとして、今回は初めての全国大会。サッカー部や学校だけでなく、OBや親族が一体となって選手権に挑んだ。「何をどうするか」から始まった中、多方面からさまざまな形での支援があった。

初めての全国大会も さまざまな形で届いたチームへの支援
「全国大会に出る甥っ子を応援したいという気持ちで寄付させていただきました」と話す黒田康友さんも、全国大会に向けてチームに支援をした1人。初戦の那覇西高校戦で途中退場となったものの、年間を通してディフェンスの要としてチームを引っ張った宮林渉選手の叔父にあたる。
その黒田さんは2023年に長年勤めていた会社を退社し、2024年3月、富山県高岡市に黒田越中餃子研究所を設立。氷見牛や黒部名水ポークを使った生餃子を製造・販売している。
「甥が所属しているときに、初めて全国大会に出場し、初勝利を果たしたという貴重な経験ができ本当に良かったと思います。喜ばしいことです」と黒田さんは宮林選手と龍谷富山高校の快挙を称える。
店舗の営業があり、残念ながら選手権を観戦することはできなかったが大会の前には宮林選手とメッセージのやり取りし、「全国大会、頑張れよ」と激励を送った。チームは惜しくも2回戦敗退となったが、黒田さんのような関係者の思いが届いた“全国1勝”となった。

自身の経験を思い返し 縁を大事にチームに寄付
黒田さんは日頃からチームと接点があったわけではない。甥の宮林選手を通して寄付をすることになったが、「全国大会に富山県の代表として出るってことは本当にすごいこと。学校全体を応援したい気持ちはありました」と次第にチームを応援する気持ちに変わっていった。そこには自身が経験した出来事に通ずるものがあったという。
高校卒業後に祖父が創業した会社に勤めていたが、さまざまな企業の管理職と面会する中、「『自分は何も経験していないんだな』と感じるようになりました。日に日に『自分の力で何かをしたい』と思うようになりました」と一念発起。何をするか決まっていなかったものの、会社を退社した。
その後、さまざまな人の縁で出会った男性から餃子の製造や店舗営業のアドバイスを受けることができ、飲食業に飛び込むことを決意。こうした“縁”を今回の龍谷富山高校へのサポートに照らし合わせ、「店舗をオープンにしたときに、何かを支援するという形は想像していなかった」と振り返る。加えて、「『こうしたい』と思っているときに不思議と巡り合わせがある。これも何かの縁かな」と。(黒田さん)
甥の宮林選手はこの3月で卒業となるが、「どんな形になるかはわかりませんが、今後も協力していきたいと思います」と黒田さんは話す。

飲食業だからこそできる“食”のサポート “縁”をさらに広げていく
黒田越中餃子研究所を立ち上げて1年足らず。店舗のさらなる飛躍を目指す一方、今後は飲食業ならではのサポートを模索している。
「例えばこども食堂や被災地での炊き出しなど、応援の方法はあります。喜んでくれる人がいるのであれば僕もうれしいですし、そういう支援の仕方があるのであればやっていきたいと思います」と語る。
また龍谷富山高校に向けても「サッカー部だけではなく、いろんなことに頑張っている子どもたちに食べてもらいたい。食べることが頑張る力につながるのであれば、それはうれしいですね」と、食で貢献できる支援を探っている。
思いがけない形での飲食業への挑戦、そして龍谷富山高校とのつながりではあったが、今後も“縁”を大事にしながら、これからもさまざまな形で社会貢献を目指していく。
(写真提供/黒田康友さん、龍谷富山高校)
