日本の高校生がアフリカ最高峰・キリマンジャロに挑む!クラーク登山隊よ、大志を抱け
日本の高校生による壮大な冒険が始まろうとしている。
2026年9月にクラーク記念国際高等学校が結成するクラーク登山隊がアフリカ最高峰のキリマンジャロに挑む。
クラーク記念国際高校は1992年に北海道で通信制高校として開校。現在は全国に約80の教育拠点を展開し、通信制のカリキュラムを生かしながら、週5日毎日登校して仲間と学ぶ全日型コースも設けられている。
プロスキーヤーであり、冒険家として世界中の山々に挑戦してきた三浦雄一郎氏が初代校長(2022年から名誉校長)に就任。クラーク登山隊は“三浦雄一郎の冒険スピリット”を引き継ぐべく、結成された。
高校生という青春真っ只中に、どのような思いを持ってキリマンジャロを目指すのだろうか。
キリマンジャロへの過程が大きな財産に
クラーク登山隊には全国の拠点から50人超の生徒が参加している。登山隊の隊長は三浦雄一郎名誉校長の次男であり、プロスキーヤーや登山家として活躍する三浦豪太氏が務める。2021年には各拠点のメンバーがそれぞれ近隣の日本百名山に挑戦する「日本百名山リレー登山プロジェクト」を開始。これまで富士山や剣岳など、名だたる山々を登り、現在84座の登頂に成功している。
そして、「日本百名山リレー登山プロジェクト」のフィナーレとして、アフリカ最高峰のキリマンジャロへの挑戦が決定。クラーク登山隊の有志5人(男子3人・女子2人)が2026年9月にキリマンジャロに挑むことになった。
キリマンジャロには雄一郎名誉校長がスキー滑走を成功させるなど、さまざまな縁がある。隊長の豪太氏も父・雄一郎氏に連れられ、当時の最年少記録となる11歳でキリマンジャロに登頂している。
「夜が明けた時の地平線に広がるご来光を見たときに、『こんな高いところに自分の足で来たのか』と強く感じました。キリマンジャロで見たあの光景はずっと忘れられないですね」と想起する。

豪太氏はクラーク登山隊の学生たちと関わる中で、クラーク登山隊の自発性に刺激を受けたという。
「自分が山に登り始めたのは父の影響が大きく、能動的になったのは大人になってからでした。クラーク登山隊の学生はどうやったら山に登れるのか、しっかり考え、能動的に山に関わっています。高校生は多感な時期であり、吸収したら吸収しただけ伸びるので、彼らをキリマンジャロへ連れていってみたいという野望もありました」
豪太氏はこれまで3度キリマンジャロに登頂しているが、その時々で感じ方や見える景色が異なるという。
「キリマンジャロのような過酷な山に登るのは、自分が追い込まれたときに自分がどうなるのかを知ることができる最もよいチャンス。生徒一人ひとりで感じるものは違ってくると思います。キリマンジャロに登っていく過程が大きな財産になります」
「高校生でもコツコツ努力していけば、夢や目標が叶うということを証明したい」
改めてキリマンジャロとは、どのような山なのだろうか。
キリマンジャロはタンザニア北東部にあり、標高5895 メートルを誇るアフリカ最高峰の山。広大なサバンナや氷河など大自然が広がる。日本から直通便がないため、カタール(ドーハ)などで乗り換えが必要となり、フライトは20時間を超える。日本との時差は6時間あり、時差ボケなど環境に適応しながら登頂に挑まなければならない。
なによりも、キリマンジャロは下山を含め約6日間かかることが一般的であり、体力を要する。また、標高2000メートル以上の山には高山病のリスクがつきまとう。それゆえ、1日の行動時間や高度変動が激しいキリマンジャロは過酷な山として知られる。
キリマンジャロに登るには、日本での事前準備も不可欠だ。クラーク登山隊では、1年以上前からキリマンジャロに向けて動き出しており、昨年9月には総距離約26㎞の南高尾での合宿を実施した。今年1月から4月までは自主トレーニング期間となるが、5月には2度目の高尾山合宿を行い、夏には高度順応トレーニングとして2泊3日で富士山トレーニングを実施予定。また、低酸素室トレーニングも5回程度予定している。体力強化だけでなく、高度順応のトレーニングを積まなければならない。
日本の高校生がキリマンジャロに登頂した例はごくわずかに限られる。複数人の高校生が参加する登山隊としては前例が見当たらない。
キリマンジャロにはクラーク登山隊の有志5人が挑戦する。有志の1人である峯岸輝(みねぎしあきら)さんは入学時からクラーク登山隊に参加し、これまで百名山にも数えられている苗場山、鷲羽岳、黒岳(水晶岳)など、数々の山に登ってきた。
「高校1年の7月に、鷲羽岳と水晶岳は北アルプスの縦走で4泊5日かけて登りましたが、靴擦れを起こしたりして、体力的に足りないんだということを実感しました」と当初は体力面に不安があったが、自主トレーニングや遠征登山を通じて体力強化を図ってきた。

元来、人と関わるのが苦手だったという峯岸さん。山小屋など登山道中にさまざまな人に出会い、登山を通じて成長してきた。「キリマンジャロが初めての海外となり、ハードルも高く、緊張もしますが、自分自身の集大成」と意気込む。
「引っ込み事案な性格で初めてのことに不安を感じやすく、緊張症な一面もあるのですが、キリマンジャロに登って臆病な自分の殻を破りたいです。肉体的にも精神的にも成長したいですし、ただで登って終わるだけでなく、現地の大自然の中で何を感じ取れるのかを自分なりに言語化できたらなと思います」
キリマンジャロへの挑戦は自分自身への挑戦でもある。一方で峯岸さんは高校生がキリマンジャロに登る意義についても見いだしている。
「キリマンジャロに登頂する高校生は数少ないので、高校生でもコツコツ努力していけば、夢や目標が叶うということを自分たちも感じるべきだし、周りにも証明できます。 “Be ambitious”(大志を抱け※クラーク博士の言葉)の精神も実現できるのではないかと思います」
高校生という人生のターニングポイントでキリマンジャロに挑む意義
キリマンジャロに挑む生徒の中には、高校2年生の途中からクラーク登山隊に参加する生徒もいる。
片吉真白(かたよしましろ)さんは幼少期から両親と登山と楽しんでいたが、中学時代は吹奏楽の部活動や勉強に専念し、登山から離れていた。高校入学時もクラーク登山隊の存在は知っていたが、体力に自信が持てず、参加を断念していた。
だが、昨年8月にクラーク登山隊がキリマンジャロに挑むことを知ると、「夢があるプロジェクトでワクワクが止まらず、もう1回挑戦してみたくなった」とクラーク登山隊に参加を決意。途中参加ながら、キリマンジャロプロジェクトのリーダーを務め、体力強化トレーニングにも人一倍取り組む。
「隊長の豪太さんに教えてもらったトレーニングやYouTubeで登山用のトレーニングを調べて、取り組んでいます。あとは日常そのものをトレーニングにしようと思って、最寄り駅の1駅前で下車し、1駅分歩いたり、階段をダッシュで登ったりしています」

キリマンジャロに向けてワクワク感を強く持つ一方、受験シーズンと重なるという不安もあるという。片吉さんを含めて有志5人中4人が高校3年生となっており、大学受験シーズン迎える。ただそれでも、キリマンジャロへ挑戦する意義が勝った。
「受験という不安もありましたが、挑戦しないと後悔すると思いました。進路など人生のターニングポイントであり、大人になる一歩手前で何を経験したかが、今後の人生に大きな影響を与えると思っています。高校生として登りたいですし、登山後に日常が変わって見えるような学びや達成感を得て、日本に帰りたいです」と意気込む。
キリマンジャロ登頂という目標は同じだが、それぞれ異なる思いやテーマを持ってキリマンジャロに挑戦する。隊長の豪太氏は「生徒一人ひとりで(キリマンジャロの登頂で)感じるものは違ってくると思います」と口にしたように、高校生がアフリカ最高峰の地でどのような思いを抱くのだろうか。挑戦に注目したい。
