感動のファイナルゲームを迎えた11年目のLiga Agresiva大阪

広尾晃のBeseball Diversity

このコラムでは今季一度紹介しているが、Liga Agresiva大阪は2015年のスタート以来、11年目を迎えた。

Liga Agresivaは「高校野球のトーナメント」だが、ただ野球をするだけではなく、様々なルールを設定し、学びの機会も設けている。リーグ戦を通じて選手の心身の成長を促しているのだ。

2025年Liga大阪 試合風景

参加校が増える

今年の参加校は、大阪府立門真なみはや高校、大阪府立花園高校、大阪府立みどり清朋高校、大阪府立布施高校、関西大倉高校(Sチーム、Jチーム)、羽衣学園高校、桃山学院高校、奈良市立一条高校、早稲田大阪高校、汎愛高校、大阪府立寝屋川高校、大阪学院大高校、大阪府立今宮高校、さらに交流戦として兵庫県立加古川北高校、兵庫県立加古川南高校が、リーグ戦に参加した。

原則としてベンチ入り選手は全員出場、球数制限を実施する。また、試合の状況は「一球速報」アプリで、オンタイムで公開している。

「今年は14校が参加しています。新たに大阪学院大高校が参加して1校増えました。関西大倉高はS(2年生)、J(1年生)の2チームで参加しています。
以前は、Aリーグ、Bリーグと実力差で2つのリーグに分けていましたが、最近は、それほど実力差がないので、2リーグに分けるものの、上下関係はなく、それぞれから勝ち抜いた学校で決勝トーナメントを行うようにしました。今年からはワイルドカード枠も設けました。またMLBのように両リーグの“交流戦”も行います」
Liga大阪を幹事として長年、企画、運営してきた門真なみはや高校の藤本祐貴監督は話す。

門真なみはや高校の藤本祐貴監督

7回制、独自ルールも

リーグ戦の試合は各試合7回制とする。これまでやってきた経験から、9回制より7回制の方が接戦が多くなっていた。そこでリーグ戦は好ゲームが多くなるように7回制とし、決勝トーナメントは9回制とすることとした。

さらにLiga大阪は独自のルールも導入している。

「3回と5回は、1アウト一三塁から、7回はノーアウト二塁から試合を開始します。

一三塁は、最も点が入りやすいシチュエーションだと言われています。この状況からスタートして、攻める側はどうすれば得点に結びつけられるかを考え、守る側は失点を防ぐための方策を考えます。バントも『1試合2回まで』と決められていますから、このタイミングで使うか、使わないかの判断もすることになります。打つにしても、ただバットを振るだけでなく、走者を進めるために右打ちをするなど、考えた打撃をするようになります。新しい金属バットになってから、ボールが飛ばなくなっていますし。こういうルールはLiga神奈川でも導入しているようですが、状況を設定することで、出場しているみんなが“考える野球”を目指すんですね。
新しく参加した大阪学院大高校の辻盛英一監督は、取り組みを評価してくださり、こういうリーグ戦なら2チーム参加してもいい、と言われました」

11月25日のファイナルゲーム

選手数が少ない学校にも配慮

関西大倉高校のように、2チームを出す高校がある一方で、今季の大阪府立花園高校は9人だった。

「今年の花園高校は1年生が2人だけだったんですね。来年は新入生が入ってくるでしょうが。今年は合同チームはありませんでしたが、以前にはありました。選手数が少ない学校でも参加できるように、前向きに考えています。

学校間の力は拮抗してきたと思います。リーグ戦では早稲田大阪が全勝しました。このままファイナルまで突っ走るのかと思ったら、トーナメントでは他の学校が奮起しました」

「スポーツマンシップ」の学びが拡がる

Liga Agresivaに参加する指導者、選手は「スポーツマンシップ」について学ぶことになっている。

筆者は先日、リモートで久しぶりに、一般社団法人日本スポーツマンシップ協会の中村聡宏代表理事(立教大学スポーツウエルネス学部准教授)の講義を聞いた。

スポーツは「勝ちを目指す」からこそ面白いが、そのためには競技そのもの、チームメイト、相手チーム、審判へのリスペクトが欠かせない。そして、勝者だけでなく敗者も讃えられるべきである。

さらに、従来の「リスペクト」は、選手から指導者に対するもので、上向きの矢印になっていたが、スポーツマンシップの考え方では「リスペクト」は、選手、指導者双方が相手に対して抱く対等のものだ、という話も印象的だった。

この講義は、甲子園優勝校も含む多くの高校野球選手、指導者が聞いていた。

Liga Agresivaの輪が広がるとともに「スポーツマンシップ」の考え方も浸透しているのだ。

藤本監督は語る。

「トーナメント戦、ファイナルでは負けたチームの選手たちが、自分たちに勝って進出したチームを応援していました。ファイナルに進めなかった選手たちは『同じ野球をする仲間』として、勝ったチームに対してリスペクトする気持ちを持ってくれたんですね。スポーツマンシップの考え方が浸透していると思います」

スタンドから応援する選手たち

感動のファイナルゲーム

11月25日、Liga Agresiva大阪のファイナルゲームが、大阪府豊中ローズ球場で行われ、関西大倉高校Sチームが大阪府立布施高校を、7対6、劇的なサヨナラゲームで破った。

「24日の午前中には豊中ローズ球場で子供たちを集めて野球教室を実施しました。野球のすそ野拡大、普及活動もLiga大阪がずっと取り組んできたことです。

豊中ローズ球場で子供たちを集めて野球教室

ファイナルは大接戦になりましたが、負けたチームの選手が泣いていました。本気でプレーをしていたからこそ涙が出たんですね。オフシーズンの練習試合ではこの感動はなかった」

甲子園出場につながる公式戦ではないが、野球に真剣に取り組むひたむきさは変わらない。最後は勝者も敗者も達成感に満ちた笑顔を見せていた。

勝者を称える
涙する選手たち

「野球をする仲間」の輪をさらに大きく

藤本監督は、将来的な目標としてこう語った

「今は秋季だけの大会ですが、野球シーズンを通してLigaができないかと思っています。公式戦のない期間には、これまでも週末に普通に練習試合をしてきたわけですから、それをリーグ戦にしていけばいいのでは、と思います。

そういう形で日常的に多くの学校がリーグ戦に参加するとともに、スポーツマンシップなどLigaの理念を共有できればいいのではないかと思います。

そうした選手たちが、夏の地方大会で負けた学校を甲子園で応援するなど『同じ野球をする仲間』としての輪が広がれば最高ですね」

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