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新生ハナマウイ「クラブ日本一と2度目の都市対抗出場を本気で目指す大改革」

ハナマウイが再び旋風を巻き起こすために動き始めた。

監督交代を含め選手の顔ぶれも大幅に変わり、従来と異なる新しいチームになった。創部2年で都市対抗本戦出場を果たした実績への上書きを目指す第二章に突入した。

投手陣を中心とした守備力を高めることが、一発勝負の強さに繋がるはずだ。

~野球と人生の両方を充実させるためにできることを考える

「今まで積み重ねたものに拘らず、全てを変える覚悟でやります」と同クラブ社長・森賢司氏は笑顔ながらも厳しい言葉を並べる。

ハナマウイは森氏が保有するデイサービス会社・株式会社ハナマウイが母体となり、2017年に女子部、19年に男子部を立ち上げた。男子はNPBオリックス等で活躍した本西厚博氏を監督に、創部2年目の2020年に第91回都市対抗野球(東京ドーム)出場を果たす快挙を成し遂げた。

「マグレ、巡り合わせなど多くのことが積み重なって出場できたと思います。早々と全国大会を経験したことで、チームは右肩上がりに成長できました。しかし、近年は勝てない時期が続き、チーム自体がマンネリ化し始めたのも否定できません」

都市対抗野球予選は南関東大会での敗退が続いている。また、全日本クラブ野球選手権には過去2回出場(2021、22年)したが、昨年は関東予選で敗れるなどこちらも苦戦が続く。

「やるべきこと」を欠かさないため、選手個々に意識向上を求めている。

「新生ハナマウイにしよう、とスタッフには強く話しました。本西監督に交代していただいたのも結果が伴わなかったから。昨季レギュラーの多くがチームを去りましたが、逆に選手全員にとってチャンス。チームをイチから作り直す気持ちでいます」

都市対抗出場したことで他チームからのマークも厳しくなった。しかし「チームが停滞している原因は自分たちで作り出したものだ」と悔しそうに話す。

「野球場へ遊びに来ているような感じに受け取れた時もありました。そういった姿勢は仕事やプライベートにも影響が出ます。昭和的かもしれないですが、まずは自覚を持って取り組むこと。野球も上手くなるし人生も充実するはずです」

同クラブ社長・森賢司氏は寒風の中でも暖を取りつつ、チーム状態を細かくチェックする。

~やるべきことをやって、一発勝負のトーナメントで勝てるチーム

「一発勝負のトーナメントで勝ち抜けるチームにする」と語るのは、今季から新たに指揮を執る市川和男監督。

「社会人カテゴリーの監督は初めてですが、野球人として非常にやりがいを感じます。時代はどんどん流れていて野球の戦術や選手気質は変わっています。しかし、『短期決戦で勝つにはミスをしない堅実な戦い方をする』ということは同じ」

ハナマウイはヤングリーグに所属していた明友硬式野球倶楽部(以下明友)が原点。市川監督は同チームで指揮を執っていた時期があり、その縁で森社長からチーム再建を託されることとなった。

「企業チームと比べて練習時間は短いが、常に試合を想定することでカバーしたい。相手がいる攻撃とは異なり守備と走塁は自分自身との戦いの部分があるので、やるべきことを確実にできれば強豪相手にも互角になれる。選手には前向きな姿勢があるので、そういう部分に期待をしている」

投手チーフとして市川監督を支えるのはNPB・広島等で活躍した長冨浩志コーチ。国士舘大、社会人・NTT関東時代を通じ市川監督の1学年下の後輩に当たる。

「(市川監督は)物腰柔らかい人ですが非常に負けず嫌い。物事を論理的に考えて結果に対し着実に進んでいくタイプ。我々プロOBは長丁場の長期戦に慣れているので、一発勝負のトーナメントを勝ち抜くのは最適な人だと思います」

「投手部門は起用方法を含めて任せる、と言われています。先発の柱になれる投手は何人か残っているので、彼らを中心に全体的なレベルアップを図る。当たり前のことだが、これができなければ勝てない。マウンド上でやるべきことを確実にできる投手を作ります」

新生ハナマウイの鍵を握るのは投手を中心とする守備力だ。投手陣のレベルアップが急務の中、長富コーチを補佐する形で山木啓至コーチも新たに加わった。

「ハナマウイには明友に投手コーチとして関わっていました。また、千葉商科大で投手部門のサポートを行っていたこともあります。投手としてアマチュア球界の一発勝負の中で戦ってきました。自分の経験を少しでも活かし、勝てる投手作りのお手伝いをできればと思います」

「(企業、クラブを含めた)社会人野球では自分の投球スタイルを知って活かさないと結果は出せない。球速やコントロールの良さは武器にはなるが、それを活かす術を身につけて欲しい。試合に強い、チームの勝ちに貢献できる投手を増やしたいです」

チーム立て直しの鍵を握る、山木啓至コーチ、市川和男監督、長冨浩志コーチ(写真左から) 。

~選手の甘さが招いた悪循環を変える良いタイミング

チーム創設時からチームに在籍するのが野手の道上李生と林弘佑希。高校(宮崎・日南学園)、大学(桐蔭横浜大)も共に過ごした1学年違いの2人は、「勝つために必要な改革」と口を揃える。

道上は2022年に主将を務めるなど、チームを好転させるための最前線にも立ってきた。

「近年は毎回、同じような負け方していた。『なんでだろう?』と常に考えていましたが変化が生まれなかった。1番の原因は選手の甘さだと思います。監督や選手の入れ替わりも、我々自身が招いた部分が大きいと思います」

「勝てなくなるとチーム内の雰囲気も悪くなり、采配等に関しても不満の声が出始めてしまう。昨季後半などはチームがバラバラな感じがあったので、『チームが生まれ変わるタイミングだったのかな…』とも感じています」

プロ側から注目を集めたこともある林は、打線の中核としてチームの勝敗を左右する役割を担ってきた。

「体制が変わることを悪く捉える要素は何もなく、ここから先はプラスしかありません。勝敗、チームの雰囲気など悪循環にも陥っていた部分もあるので、心機一転で良かったと思います。選手も大幅に変わり全く新しいチームになった感じです」

「チーム最年長(28歳)なので中心にならないといけない。チーム内でコミュニケーションを取って、目指す道へ真っ直ぐ進めるようにしたいです。プレー面で引っ張りたいので大事な場面で結果を出す。特に長打でチームの雰囲気を変えられるようにしたいです」

林弘佑希(写真左)と道上李生(同右)は、全国の舞台で再びプレーすることを目指す。

2020年には東京ドームでのプレーを経験した2人だけに、チームへの思い入れは誰にも負けない。

「前回出場時は4打席4三振。(東京ドームに)忘れ物をしたと思っているので、まずはバットにボールを当てグラウンドを走り回りたい」(道上)

「都市対抗出場だけを見ていたら見失うものもある。1プレーずつ目の前のことに食らいつくことでチーム力も結果も付いてくると思います」(林)

「野球は何が起こるかわからない。運も大きな要素になりますが、引き寄せるのも自分たち次第です。準備を欠かさず、きっちりとした野球をやることで結果にも繋がるはず」(森氏)

創部2年で都市対抗出場を果たした時の旋風を再び巻き起こすため、ハナマウイは歩みを止めない。

2度目となる都市対抗野球出場と共に、クラブ日本一となり社会人野球日本選手権(京セラドーム)への出場も目指す。

「どうせやるなら両方を目指します。企業チームに一泡吹かせられるように前進あるのみです」と語る森氏の表情は明るい。

大きな決断の末に生まれ変わったハナマウイは、今後へ大きな期待感を抱かせる。数年前にアマチュア球界へ与えた衝撃を上回る予感。新生ハナマウイの活躍が楽しみでならない。

(取材/文/写真・山岡則夫、取材協力/写真・ハナマウイ・ベースボールクラブ)

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