ルーキーと上級生の“ブレンド” 王座奪還を狙う仙台大が醸し出す新しい「味」
昨年、2019年以来6年ぶりに全国大会出場を逃した仙台大(新型コロナの影響で全日本大学野球選手権、明治神宮野球大会ともに中止となった2020年を除く)。今年は野手では広島東洋カープに入団した平川蓮ら、投手では米・ペンシルベニア州立大に編入した佐藤幻瑛らが抜けた中、新戦力を加えて次の一歩を踏み出している。
田中稜真が成長示す力投「自分のピッチングを」
4月25、26日に行われた仙台六大学野球春季リーグ戦第3節。仙台大は昨秋連敗を喫した東北学院大に8-1、5-3で連勝した。森本吉謙監督は「チームも変わっているし、意識はさせていない。相手関係なく、自分たちがどうあるかが大切」と話したが、因縁の相手とあって、意識せざるを得ない選手もいた。その一人が2戦目で先発した田中稜真(2年=旭川実)だ。
「昨年勝ち点を落とした相手で、自分も先発して負けたので、『今回は絶対に負けられない』というプレッシャーや嫌な雰囲気は感じていました。ピンチになると、『ここで打たれたらいけない』と変に考えてしまう部分もありました」
昨秋の東北学院大戦は5回途中3失点で降板し負け投手に。今回は相手のスタメン9人中6人が当時と同じメンバーということもあり、試合中に何度も苦い記憶が蘇った。それでも、「初回から最後まで良い意味で緊張できた」と緊張をプラスに変換し、7回まで無失点。再三のピンチを背負いながらも本塁は踏ませず、時折、田中にしては珍しくマウンド上で吠えた。

1年時は直球とスライダーを軸に投球を組み立てたが、2巡目以降に捉えられるケースが多かった。そこで、今オフは新たにスプリットを習得。この日は140キロ台後半の速球を光らせつつ、新球種のスプリットやチェンジアップ、カーブなども駆使して試合を作った。本人は「昨年はただひたすら投げて、バッターではなく自分と勝負してしまっていた。今年は投球の幅が広がり、体力もついたので、余裕を持ってマウンドに立てています」と手応え十分だ。
8回に喫した3失点は今後の課題。「責任は昨年よりも感じていますが、自分のピッチングができれば抑えられるという自信もあります。課題と向き合いながら日々練習して、自分のピッチングをできるようにする。それに尽きます」。昨秋の鬱憤を晴らした右腕は次のフェーズに進もうとしている。
ルーキー野手陣が躍動「打てる気しかしません」
投手陣は田中のほか大城海翔(3年=滋賀学園)、今野一成(3年=古川学園)らすでにリーグ戦を経験しているメンバーが引っ張る一方、野手陣はルーキーの活躍が目立つ。中でも、1番・吉澤咲人(1年=関東学園大付)、2番・井上遥翔(1年=佐野日大)、4番・瀬川亮太郎(1年=鳥取・境)は早くも実力でスタメンを勝ち取り、上位打線に名を連ねている。
開幕から4試合で吉澤は打率.533(15打数8安打)、4打点、井上は打率.385(13打数5安打)、5打点、瀬川は打率.462(13打数6安打)、5打点と申し分ない成績をマーク。東北学院大戦では、試合前に「2人で1点取ろう」と話していた1、2番コンビがその言葉通りに機能した。1戦目の初回、吉澤が安打と盗塁で好機を作ると、続く井上が犠飛を放ってわずか7球で先制。2回は連続適時打で走者をかえし、2戦目の5回も連打で追加点を呼び込んだ。

リーグ2位の打率を誇る吉澤は「体が開かないように打てば自然と良いところに落ちる。今は打てる気しかしません」と顔をほころばせる。さらに、「緊張していても、先輩方が声をかけてくれたり、カバーしてくれたりするので楽に打席に入れています。自分はとにかく塁に出て、足や小技で相手をかき回す。頼れる先輩方がかえしてくれれば、理想的な展開になると思います」と上級生の存在に言及した。
齋藤陽(3年=仙台育英)はルーキーに挟まれるかたちで3番を打つ。ここまで打率.400(15打数6安打)と好調で、東北学院大戦の2戦目では初回にリーグ戦初本塁打を放った。高校時代は「つなぎの4番」に徹して甲子園優勝、準優勝に貢献したが、大学では長打力向上を目指して打撃改造に着手。その成果が表れた一発だった。

そんな齋藤は「1年生はすごく頼もしい。自分に回せば大丈夫だと思ってもらって、少しでも楽に打たせたいです」と話す。ルーキーの台頭により相乗効果が生まれているのは確かだ。
東北福祉大戦へ「同じように積み重ねていく」
「上級生が(1年生が)やりにくくないような、機能しやすい空気を作っているのは良いこと。思い切りの良さのあるルーキーたちと、経験のある上級生たち。うまくブレンドされれば、良い味になるはず」
森本監督は新チームの現状について、そう手応えを口にする。従来の仙台大らしい、ベンチとスタンドが一体となって盛り上がる雰囲気が戻ってきた。その上で、学年関係なく、調子の良い選手を見極めて起用しながら、今年ならではの「味」を抽出している。

一方、東北学院大戦では守備の乱れが散見されたことから、「デフェンス面はもっと詰めないといけない。そこが雑なチームで勝てた試しがないので」と気を引き締めた。次節は最大のライバル・東北福祉大との大一番。指揮官は「相手がどこだから緩むとか、気合いを入れるとかではなく、同じように積み重ねていく」と静かに闘志を燃やした。
(取材・文・写真 川浪康太郎)

