大学野球春季リーグ開幕! 新4年生注目の選手は?

2018年も大学野球のシーズンがやってきました。今年も注目すべき選手が紹介しきれないほどいる大学野球。今回は、昨秋の明治神宮野球大会に出場した大学に絞ってドラフト候補を中心に注目の新4年生をご紹介します。

 

最終学年、チームを引っ張る選手は?

まずは、37年ぶりの日本一に輝いた日本体育大学(首都大学野球連盟)から、主将・松本航投手(明石商)。練習量も多く結果も出す、周りからの信頼も厚い松本投手が新主将となった日体大は、今年も楽しみなチームになりそうです。昨秋リーグ優勝したころから特に、東妻勇輔投手(智辯和歌山)と共にドラフト候補として取り上げられていますが、やはりここでも触れずにはいられません。

神宮大会では2度先発した松本投手、計15回を投げ失点はわずか1。準決勝の対東洋大戦では4安打完封と見事な投球を見せました。
 

松本投手の魅力は何よりも、きれいなフォームから繰り出す伸びのある145km/h前後の直球。最速は150km/hで速さを追い求めていた時期もあるとのことですが、今は急速よりも質を重視しているそうです。バッターに聞くとバットに当たりそうで当たらないという松本投手の球、140km/h台前半でもバッターに速いという印象を持たせるにはどうすればいいかを考えており、キャッチャーのグローブのさらに奥に投げるようイメージしているとのこと。

指が柔らかいことも伸びのあるストレートを投げられる理由のひとつだと話す松本投手、より力強い球を投げられるようプロ野球選手も使っているウェイトボールで指を鍛えているそうです。昨年の夏からは持ち球にツーシームも加わり投球の幅が広がった松本投手、最終学年となる今年は投球をパターン化しないように変化球をうまく混ぜていきたいと話していました。

ゲームメイクに優れており、どんな状況でも淡々と投げ続ける松本投手ですが、ピンチの場面でギアチェンジをするところも見どころのひとつです。

そして、松本投手と共に日体大の二枚看板と言われている東妻勇輔投手(智辯和歌山)。闘志を前面に押し出すタイプの東妻投手は、最速152km/hを誇るパワーピッチャーです。ゴーッという音が聞こえそうなくらい力強い直球は、キャッチャーの真後ろで見ていると思わずのけぞってしまうほどです。とはいえ、リーグ戦では先発することが多いので、きちんと配分を考えながら投げているのを感じます。
 

2ストライクまでは「ファウルが取れるといいかな」という感覚で少しアバウトに投げ、決めるときはしっかりコースを狙って投げ込むとのこと。関西地方出身ということで、阪神の藤川球児投手のような直球を目指しているそうです。

松本投手が“静”とすると東妻投手は“動”。両極端でチームのバランスを保つ二枚看板は、今秋のドラフトで注目のふたりでもあります。

日体大が昨秋日本一になった大きな理由のひとつが、鉄壁の守備です。そして、その守備の要が今年副主将となった船山貴大遊撃手(日大三)。昨年一年ノーエラーだった船山選手、打球に対しての一歩目が速く、守備範囲が広い彼の守備は一見の価値ありです。大学日本一と言っても過言ではないほどの名手である船山選手ですが、バットでも日本一を決めました。
 

先制となる2点本塁打が、そのまま決勝点となり勝利。また、関東五連盟の1位、2位で神宮大会出場の2枠を競った横浜市長杯争奪関東地区大学野球選手権大会では、全3試合で死球を受け得点に絡み、神宮大会の初戦でも2個の死球を受けるという4試合連続マグネット記録を樹立。今年もいろいろな意味で話題に事欠かない選手になりそうな予感です。

準優勝の星槎道都大学(札幌学生野球連盟)からは、福田俊投手(横浜創学館)。大学初完封を神宮大会という大舞台で成し遂げ、ドラフト候補として注目を浴びました。コントロールが良く、最速148km/hの本格派左腕は、神宮大会では全ての試合で先発。北海道勢初の神宮大会決勝進出、そして準優勝に貢献しました。筆者が春のリーグ戦で観た試合ではリリーフ登板をしていましたが、その後先発するようになったようです。170cmと小柄ながらも制球力と多彩な変化球で三振の山を築いていく様子をこの春もぜひ見ていただきたいです。
 

野手では、大西主将外野手(明徳義塾)に注目です。「主将」と書いて「かずまさ」と読むそうです。昨年春のリーグ戦で、スタンドで観戦中の女性2人に注目の選手を聞いたところ、大西選手の名前が出てきました。名門の明徳義塾高校から星槎道都大学に進んだものの、一時期はなかなか試合に出られない時期もあったようで筆者が観た試合でも出場はありませんでした。

しかし秋のリーグ戦にはスタメン出場、2番ライトで神宮大会にも出場し、準決勝では1死満塁から走者一掃の3点適時三塁打を打つなど大活躍。最終学年となった今年はどんな活躍を見せてくれるのか楽しみです。

春秋リーグ戦連覇、神宮大会ベスト4の東洋大学(東都大学野球連盟)にはドラフト候補がたくさんいます。紹介しきれないので、大注目ではあるけど故障で神宮大会メンバー入りとならなかった梅津晃大投手(仙台育英)や上茶谷大河投手(京都学園)はまたの機会にして、まずは甲斐野央投手(東洋大姫路)をご紹介。

スラッとした長身から繰り出す最速154km/hの直球は、球速よりもさらに速く見えて気づいたらキャッチャーミットに収まっている印象。コントロールがアバウトなところはもしかしたら直すべきところなのかもしれませんが、そんな中で突然いいところに決まるとバッターは手が出せないのではないかとも思います。
 

昨秋は5勝と、チームのリーグ優勝に貢献。ドラフト上位候補として注目されているこの春も、リリーフとしての活躍が見られるのではないでしょうか。

野手での注目は、新主将の中川圭太内野手(PL学園)。はたから見ていても高橋昭雄前監督(昨年秋に勇退)が大切に育てている様子がよくわかり、そしてその期待に応えて成長してきた選手です。中川選手も「おまえが打たないと勝てない、と言われていました。1年生のころから3年間、3番4番で打たせていただいて、自分を成長させてくださいました」と高橋前監督について話していました。

1年春からレギュラーだった中川選手が2年生のときにチームが2部から1部に昇格したため、神宮球場で試合が行われるようになり、その秋神宮球場では初めての本塁打を打ちました。細身の体全体をしなやかに動かしてライナー性の本塁打を打つ様子を見て、とても体の使い方が上手な選手だと感じました。
 

しかしその頃は、よく打つけどまだ怖さは感じない選手でした。3年生になった昨年はバッターボックスに立つだけで怖さを感じる選手に成長。正真正銘、チームの中心選手となっていました。中川選手が成長すると、チームも共に成長する、そんな印象がある選手です。

「自分がチームリーダーとしてやっていき、このチームを日本一にしたい」と話す中川選手、今年の大学生野手ではドラフト筆頭候補ですので、リーグ戦での活躍にも注目してください。

 

地方リーグも熱い

次は、いずれも西武の山川穂高内野手、外崎修汰内野手、多和田真三郎投手など、最近プロ野球での活躍も目立つOBを輩出している富士大学(北東北大学野球連盟)の注目選手を紹介。

まずは、鈴木翔天投手(向上)です。高校時代は外野手として活躍していたのに3年生の夏になんとリリーフ登板をしたという鈴木投手は、昨年秋のリーグ戦でリーグ史上初となる完全試合を達成し、ドラフト候補として注目されています。
 

最速149km/hの直球と多彩な変化球で三振を多く奪える本格派左腕、困ったときは直球で勝負できるところも魅力のひとつです。

また、昨秋の神宮大会では出番はありませんでしたが、もうひとりの左腕、佐々木健投手(木造)にもぜひ注目してください。

そして野手では、1年春からリーグ戦で活躍している楠研次郎外野手(東海大相模)が大注目です。神宮大会では3番センターで出場。ダイナミックなフルスイングは見ていてとても気持ちが良く、バットに当たると速い打球が飛んでいきます。足も速く、走攻守全てにおいて魅せるプレーができる選手です。

九州共立大学(福岡六大学野球連盟)からは、島内颯太郎投手(福岡・光陵)。安定感のある投手、というのが主な印象です。
 

日体大の松本投手もそうですが、派手にアピールする要素はないにせよ、コントロール良く丁寧に投げ込む様子は味方にも安心感を与えられるのではないでしょうか。伸びのある直球は、数字よりも速く感じます。ドラフト候補としても注目の選手です。

そして、最後は名城大学(愛知大学野球連盟)の栗林良吏投手(愛知黎明)です。1年春から先発し、昨年春のリーグ戦ではノーヒットノーランを達成、大学日本代表にも選ばれ、順調に階段を上ってきた栗林投手は、ドラフト候補として常に名前が挙がるひとりです。

最速153km/hの直球は魅力的で、大学入学後増やした変化球が直球を生かします。最後の1年もさらに階段を上っていくであろう栗林投手、ぜひリーグ戦で見たいですね。

他にも紹介したい選手はたくさんいますがキリがないので、どんな選手に注目して大学野球を観ればいいのかと迷っているあなたは、まずはここに挙げた選手に注目してみてください。離れた地域のリーグ戦を観る機会はなかなかないと思いますが、各地の春季リーグが終わると全国大会の全日本大学野球選手権大会もありますので、見られなかった選手はそこでチェックです。

さあ、今年も大学野球の選手のみなさんが怪我なく最高のパフォーマンスができるように、大学野球ファンが楽しく観戦できるように、そして新たなファンが増えるように、みんなで球場に行きましょう!

好きな時に好きなだけ神宮球場で野球観戦ができる環境に身を置きたいと思い、OLを辞め北海道から上京。 「三度の飯より野球が大好き」というキャッチフレーズと共にタレント活動をしながら、プロ野球・アマチュア野球を年間200試合以上観戦する生活を経て、気になるリーグや選手を取材し独自の視点で伝えるライターに。 大学野球、社会人野球を中心に、記者が少なく情報を手に入れづらい大会などに自ら赴き、情報を必要とする人に発信することを目標とする。

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