仙台育英元主将の七十七銀行・千葉蓮が地元宮城で再出発 東北地区社会人・大学野球対抗戦で活躍光ったルーキーたち
3月23、24日、宮城県の石巻市民球場で第6回東北地区社会人・大学野球対抗戦が開催された。東北の社会人4チーム(日本製紙石巻、七十七銀行、JR東日本東北、TDK)と大学6チーム(東北福祉大、仙台大、八戸学院大、富士大、東日本国際大、石巻専修大)が参加。計6試合が行われ、社会人が4勝1敗1分と大学生を圧倒した。社会人チームは今春入社予定の新人選手が続々登場。シーズン本格化を前に、それぞれが持ち味を存分に発揮しアピールした。
仙台育英の後輩たちから「良い部分を吸収」
七十七銀行の千葉蓮内野手(22=白鴎大)はバットと足で魅せた。初日の八戸学院大戦は「2番・三塁」でスタメン出場。初回、1死から死球で出塁すると、盗塁と暴投で三塁に進んだ。その後1死一、三塁となり、浅い右飛の間に好走塁で本塁を陥れ、先制点をもぎ取った。さらに5回には2死三塁の好機で貴重な追加点となる適時打をマーク。3ボール1ストライクから、「張っていた」という直球を軽打で中前に飛ばした。
翌日の石巻専修大戦では途中出場ながら第2打席で適時打を放ち、失敗したものの三盗を試みる積極走塁も披露。走塁について本人は「自信はないです」と謙遜するが、「チーム全体で『次の塁を狙っていこう』という意識を持っているので、『牽制アウトになってもいいや』くらいの気持ちで突っ込もう」と果敢なプレーで盛り上げた。
仙台育英出身で、2019年夏、主将としてチームを甲子園8強入りに導いた。仙台育英は一昨年、悲願の東北勢初優勝を成し遂げ、昨年も準優勝に輝いた。千葉は「やっている野球のレベルが高校生の中ではかなり高い。それをしっかり理解してやりきれる選手たちはすごい」と後輩たちを称える一方、「すごいなと見ているだけでは成長できない。後輩の良い部分を吸収しながらプレーしています」と自身の成長にもつなげている。
白鴎大でも主将を務め、昨年の全日本大学野球選手権では準々決勝で本塁打を放つなどして初の4強入りに貢献。同じ主将という役職でも、チームメイトへのアプローチの仕方は大きく変化した。「ベンチに入っていない選手も含め、全員が甲子園に向かっていた」高校野球とは異なり、大学野球は「全国大会を目標にして練習する選手もいれば、就職で有利になるから野球部に入っている選手もいる」のが現状だ。個々の考えを尊重しつつ、メリハリをつけて時には主将としての考えを伝えることでチームを一つにまとめ上げた。
社会人野球では再び、全員が全国大会を目指す環境に身を置く。「先輩方を見習うだけでなく、意識を高く持って練習して、まずは都市対抗に出て活躍したい」。これからは、大学までに培った豊富な経験を地元・宮城で生かしていく。
七十七銀行は千葉以外にも有望な新人野手がそろっており、八戸学院大戦は内野を新人で固めた。中でも松尾翼内野手(22=富士大)、大石高志内野手(22=帝京平成大)の二遊間は好守備を連発。昨年4年ぶりの都市対抗出場を果たした七十七銀行の勢いはますます増しそうだ。
「遅咲き」の慶大出身右腕が東北へ
JR東日本東北は技巧派右腕の谷村然投手(22=慶應義塾大)が東日本国際大戦に2番手で登板し、2回1安打無失点と好救援した。持ち前の打たせて取る投球で強打者の並ぶ打線を翻弄。「大学時代とスタイルを変えずに、イメージ通りに抑えられた」と手応えを口にした。
桐光学園を経て入学した慶大では3年時までリーグ戦登板なし。それでも「先のステージでも野球をやりたい」との思いは貫き、大学ラストイヤーにブレイクを遂げた。春秋ともに8試合に登板し計3勝をマーク。明治神宮大会でも登板し3回無失点と好投した。谷村は「特別何かを変えたわけではなく、いわゆる遅咲きだった。今までコツコツやってきたことを、ようやくプレーとして体現できるようになったのが4年生の頃」と自己分析する。
3月のJABA東京スポニチ大会で先発を任されるなど首脳陣からの期待値は高いが、社会人でも「これから見つかる課題に沿った挑戦をしていく」と自分のペースで進化を続けるつもりだ。身近な目標はエース右腕の竹本祐瑛投手(25=駒澤大)で、「竹本さんをお手本にして、超えられるように頑張りたい」と意気込む。関東の名門で実力を磨いてきた右腕が、東北でもう一花咲かせてみせる。
期待のルーキー早くもアピール合戦
日本製紙石巻は、千葉ロッテマリーンズ・鈴木昭汰投手の弟でもある高卒ルーキー右腕の鈴木楓汰投手(18=横浜)が東北福祉大戦で5回3失点と粘投。初回にいきなり3点本塁打を浴びるも2回以降は修正し、大学生相手に堂々たる投球を披露した。野手では大型遊撃手の今野瑞暉内野手(22=青森大)が富士大戦でドラフト候補左腕・佐藤柳之介投手(4年=東陵)から先制の2点適時打を記録するなどアピール。丹呉響平内野手(22=創価大)は2試合連続で4番に座った。
また打力と守備力を兼ね備える坂口雅哉捕手(22=仙台大)、小林尚真捕手(22=松本大)はいずれも正捕手争いに名乗りを上げる。坂口は富士大戦で雨の中、エース右腕・秋田稜吾投手(24=中部学院大)を5回無失点と好リード。小林は富士大戦では左翼を守り、マスクをかぶった東北福祉大戦では一時勝ち越しの適時二塁打を放つなど強みを発揮した。
TDKは仙台大戦で先発した右腕の阿部優太投手(22=流通経済大)が5回1失点と試合をつくった。野手では太田翔梧内野手(22=日本大)、三浦大内野手(22=神奈川大)の1、2番が初回に先制の好機を演出し、それぞれ複数ポジションを守って攻守で存在感を示した。
実力が拮抗する東北地区の社会人野球。昨年は都市対抗にJR東日本東北と七十七銀行、日本選手権にTDKが出場した。各チーム新戦力を迎え、今年も熱戦が繰り広げられることとなりそうだ。
(取材・文・写真 川浪康太郎)